JIT(ジャストインタイム)改革の効果が得られない理由:7つの落とし穴と克服策
多品種小ロット生産における生産管理は、需要変動に追随して工場を効率
良く運転するしくみを構築する必要があります。
本解説ではTOCとIOTによる生産管理方式を提案します
・TOCによるスループット向上と在庫削減
・IOTによる情報制御
1.リードタイム短縮とスループット向上
工場は短納期、需要変動に対応するため短リードタイム生産を実現してい
かなければなりません。それは、直接部門だけにとどまらず、間接部門の
生産性の向上、品質の向上などの取り組みも含みます。
リードタイム短縮を最も重要なアプローチとして位置づけているのは、最終
的には“スループットの向上”を図るためで、スループット向上実現の基本思
想はモノの『停滞排除』と『情報制御』です
2.スループットとは
スループットとは、付加価値とも言い、工場において材料をインプットし、
それを出来るだけ早く、出来るだけ多くの価値ある製品を生み出せるか、
その処理能力を表しています。
3.スループットを向上させるには?
出来るだけ早く、出来るだけ多くの製品を生み出すために、工場全体の
処理能力を高めなければならないが、そのためには以下のような対策を
講ずる必要があります。
①人時生産性の向上(従業員一人当たり一時間当たりの生産量を増やす)
②機械生産性の向上(機械一台当たり一時間あたりの生産量を増やす)
③工程間の停滞(仕掛在庫)を無くし、リードタイムを短縮する
具体的には
人・・・教育訓練の実施・スキル向上、多能工化
設備・機械・・・能力アップ、チョコ停対策、自働化(異常停止)
方法・・・TOC理論に基づくジャストインタイム生産方式採用
7つのムダの削減、異常の早期発見、自工程完結工程確立
などとなります。
しかし、これだけでは、飛躍的な利益アップにはつながりません。
4.TOC理論とは
TOCの基本的な考え方は、生産性を高めて利益を出すことです。
TOCとは「Theory of Constraints」 の略で、日本語に翻訳すると、
「制約条件の理論」で、イスラエル人の物理学者の、エリー・ゴールド
ラット博士が、提唱した経営システム改善の方法論です。
工場の生産性は、制約条件工程の能力以上は絶対に向上しないという原理
がありこの制約条件工程(ボトルネック)を見つけ、それを集中的に改善
管理し、生産性を飛躍的に高めることが狙いです。
TOCでは利益を出すために以下の3つの条件を満たすことが必要
①スループット(付加価値生産性)を増加
②在庫、仕掛りを減らす
③経費(固定費などの社内費用)を減らす
生産現場で考えた場合、制約条件は、能力の一番低い工程や設備です。
しかし、その原因は単なる能力不足だけでなく、以下の4つの制約条件が
あると考えられます。
①物理的制約;純粋に生産能力が不足している(人の能力、機械の能力)
②方針制約;社内の規定・制度や組織構造などマネジメントの仕組み・
企業文化・風土に制約がある
③市場制約;生産量が伸びない原因が需要不足にある
④機会損失;せっかくの受注チャンスが、顧客情報不足、プロモーション
不足などで失われている、または生産性の低さにより受注を
逃している
TOCによる経営革新手法は、このように制約条件の発見・解決を繰り返して
いくことです。
5.多品種小ロット生産工場の生産性向上による利益確保
工場のスループット(付加価値)を高めることにより、そこに余力が生じ
人材を更なる付加価値業務に付けることができます。
付加価値の高い製品・サービスを提供することによって、売り上げが伸び
更に付加価値が増加するという好循環が生まれます。
①製造技術を高めることによって、他社との差別化が可能となる
②顧客情報収集を行うことによって、顧客の要望に応えた製品やサービス
を提供できる
③新たな市場へ進出、新たな顧客獲得が可能となる