町工場でもできる品質改善!身の丈に応じた最上の品質管理とは

濱田金男

濱田金男

テーマ:中小製造業の生き残り策

大手の会社から受注を獲得し信頼を得るためには、今までは熟練者のスキルに
頼っていた部分が大きいと思います。しかし、多品種の製品を短納期で納めて
いくには、熟練者だけでは手が回らないことも発生します。
また、いつまでも熟練者に頼っていては、若手も育っていきません。


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■ 町工場にとっても重要な品質管理
製造業で生きていく上で、品質管理は事業の心臓部であると言っても過言では
ないでしょう。それは大企業でも、町工場でも、全く変わりません。
「あそこに頼んだら不良品だらけだ」というような評判が立てば、製造業と
して継続することはできないのです。

町工場は大企業と違い、資金も設備も限られており、働く人が少ない。
そうした少ない人数で品質管理を徹底するということは、予想以上に大変な
ことです。

品質管理専門の人員を置ければ良いですが、そのような余裕はないのが多く
の町工場の実情です。 一方、不良品が出た場合の損失の影響は、小さな企業
であればあるほど大きくなります。1分1秒が貴重な工場にとって、不良品
を作るということは、それだけ無駄を生じることになり、町工場にとっては
品質管理の良し悪しは、死活問題です。

■最低限必要な品質管理体制とは?
顧客は、自社に比べ大手のメーカーが多く、いずれも高い品質を求めています。
受注時には、顧客からの厳しい品質管理の監査をパスする必要があります。

町工場には、検査部門を特別におく余裕はないので、作業員が検査員となり
例えば交代で検査を行って、作業員Aが9時、11時、13時、15時と2時間ごと
に検査します。作業員Bは、10時、14時、16時に検査を行います。それぞれの
作業員が、お互いの検査を確認しあい、品質向上へと努めます。 こうした品質
管理は、工程の進捗管理にもつながります。

細かい作業ですが、こうしたチェックを組み込むことで、不良品を作り続けて
無駄にする時間を1秒でも減らしたいという狙いがあります。これは機械を
自動運転させるのではなく、一つ一つを手作業で加工している方法に適した
検査法で、町工場はそれぞれの体力や環境に応じて、試行錯誤していくことが
大事だと思います。

■身の丈に応じた最上の品質管理
町工場は、身の丈に応じた最上の品質管理を目指すべきだと思います。
業種や企業規模に応じて、例えばITを導入した管理体制を整える必要もあれば
それができない企業でも、諦めずにできる範囲での工夫を重ねていく必要が
あると思います。

町工場にとって大事なことは、小さな努力の積み重ねを、持続的に行っていく
ことではないでしょうか。日々少しでも改善しようとする意志と、変化する
社会の価値観や顧客の要望にきちんと向き合うことです。町工場といえども
品質管理にゴールはありません。

事例研究1 最近工程内で多発する作業ミス 
Q.私は製造工程の監督者をしています。工程内の人数は全体で100名程で、半導体 
 や電子部品の工程になります。
 私たちが最近悩んでいる工程内の悩みは、作業不具合が多発している事です。今月
 になりすでに15件程発生している状態です。

 大まかな作業不具合の要因は作業者の不注意などが挙げられますが、昨日も部資材
 のビニールを破り勢い余って箱を製品の上に落下させてしまったり、作業途中で
 離席し戻った際に作業が終わったと思い込み製品を破損させてしまったりと、人の
 要因での作業不具合が多い状態です。

 環境を改善する活動をして対策はしているのですが、後を絶たない状態となって
 います。
 人の意識を改善する為にはどのような方法が効果的なのか教えて欲しいです。

A.作業ミスに関する悩みはどの工場でも頭痛の種ですね。
 人的ミスそのものは、完全にゼロにすることはできませんが、状況から察すると
 もっと少なくできるのではないかと考えられます。直接の原因は、人的なミスで
 も、その背景には管理上の問題が潜んでいます。例えば「箱を製品の上に落下させ
 た」「離席復帰後の作業ミス」なども管理要因が必ずあるというように捉えます。
 
 ビニールを破り勢い余って……とありますが、では、なぜビニールは破れたのでし
 ょうか?
 そしてなぜ製品の上に落下したのでしょうか?
  ・作業者はルール通り作業を行わなかった、ルールが無かった
  ・ビニール袋の構造・強度に問題があった
  ・製品置き場と部資材置き場(開梱場所)の配置の問題
 など、現場、現物、作業者をよく観察すると、ミスが起きやすい原因、製品が破損
 する原因が見えてくると思います。そこには必ず、ヒヤリとする状況が発生してい
 るのだと思います。
 その状況を取り除いておかないとまた同じミスが発生する可能性があります。
 
  戻った際に作業が終わったと思い込み……これもよく発生する問題です。
  ・作業中断カード運用ルールが無かった、ルールはあるが守らなかった
  ・工程上、頻繁に作業が中断する要因がある
  ・作業モレ発生でも製品が壊れないようにする対策が打たれていない
 など、これも現場、現物、作業者をよく観察すると、ミスが起きやすい原因、製品
 が破損する原因が見えてくると思います。
 
 作業ミスを起こさないよう、作業者を意識づけ、教育することは重要ですが、ミス
 が多発するのは、上記のような管理の問題があり、それが解決されていない可能性
 が高いと考えられます。

 作業ミス=作業者の意識の問題だけでなく、作業ミス=管理の問題として管理監督
 層は考え、改善を図って行くことが求められているのだと思います。

事例研究2 決めたことを守らせるには
Q.**の板金工場です。
 中小企業にありがちな、現場現物主義で品質管理のしくみが人材を含めてとても
 貧弱です。
 このところ、不具合を頻発してしまっております。
 人の入れ替わりが激しくリピート品でも4M変動管理がうまくいかずまた、以前
 決めたルール等も伝承されていません。 
 決めたことをどう守りどう守らせるかのポイントがありましたらご教授いただきた
 くお願い申し上げます。

A.人の入れ替わりが激しいと言うことはパートさんが多いのでしょうか?
 また、何人ぐらいで平均年齢はお幾つぐらいでしょうか?不具合は、人的ミスの繰
 り返しですね。
  一応、数十人規模、平均50代ぐらい、機械と手作業による板金加工という想定で
 幾つかの案を提案致します。
 
1.コミュニケーション
 毎朝の朝礼・・・4,5人のグループごとに、前日の結果、今日の予定、注意事項
 など
 不良発生時のミーティング・・・現場に関係者を集め、現場・現物を見ながら再発 
 防止策を考える
 熟練工は、自分のやり方が一番いいと思っています。一人で判断し行動するので周
 りとの連携がうまく取れない場合が多いです。 

 人数が多いと、本音の話ができない建前の朝礼になってしまうので、人数は少ない
 方が良い。
 部長は後で、どんな話題が出たか?ヒヤリングする。 
 「一日のうちで一度は発言し、意思表示することと。他人の言うことを聞くチャン
 スを作る」
 
2.ヒヤリハットの発見、申告
 ミスしそうになった、ミスをしてしまい修正したなど不良の前兆が日常の作業の中
 に隠れています。それを放置すると、いずれ不良となって現れます。そこで、前兆
 を見逃さず、改善につなげます。
  ①5S改善:整理整頓、製品置き場、不良品置き場、機械の清掃・注油点検を
   毎日徹底
  ②職場巡回:ミスの起きそうな作業、やり難そうにしている作業を管理監督層
   の現場巡回で見つける(スキルが必要)
  ③ヒヤリハットの申告:特に新人は朝礼で、作業のやり難さ、曖昧なところを
   申告させる
 
3.教育訓練
 比較的若手の中堅、リーダークラスを徹底的に教育し、責任を持たせる、結果が良
 ければ昇給させる
  ①新人教育(OJT)
  ②不良の対策
  ③治具の考案などミスを減らすための改善を自発的に行う

4.検査
 不良流出を抑えるため、重要製品、新しい製品は外観、寸法を検査員の目で確認す
 る。検査員は訓練してプロとして育てる(選別作業工程としての検査は行わない)
 
5.ルールづくり
 中小企業では、文書による規定類を作ることは大きな負担であり、例え作成しても
 誰も見ないものになってしまいます。簡単で見やすいフローを作って現場に掲示す
 る、スローガン的な短い言葉のルールを掲示するなどの工夫をします。
  例:「それは、ルール(図面)通りか?今一度見直そう!」
    「ヒヤリ30件が、不良流出1件につながる」

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濱田金男
専門家

濱田金男(企業経営コンサルタント)

合同会社高崎ものづくり技術研究所

大手電機メーカーで設計、製造、品質管理に長く携わり、中国工場立ち上げ、韓国での生産ライン効率化など海外支援実績も多数。新しい時代を見据えた工場改革、付加価値向上と人材育成で、ものづくりの現場をサポート

濱田金男プロは上毛新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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