「まだ大丈夫」は、私も言っている!?
先日参加した介護事業者の異業種交流会で、こんな声が上がりました。
「年金で入れる施設が欲しい」
介護の現場を知っている方だからこそ、施設入所にかかる費用と、年金収入との間にある難しさを感じているのだと思います。
ただ、私はその言葉を聞いて、もう一つ考えたことがあります。
「年金で入れる」といっても、人によって年金額は違うということです。
月5万円程度の方もいれば、20万円を超える方もいます。
同じ施設であっても、年金だけで費用を賄える方もいれば、預貯金を取り崩さなければならない方もいるでしょう。
大切なのは、「年金で入れる施設があるか」だけではなく、「自分の場合はどうなのか」を知ることだと思います。
預貯金が1,000万円あれば安心?
例えば、預貯金が1,000万円あるとします。
まとまった金額ですから、何となく安心できるかもしれません。
では、施設入所後の毎月の支出が20万円だったら、どうでしょう。
年金収入が月5万円なら、毎月15万円を預貯金から取り崩すことになります。
年間180万円。
1,000万円の預貯金は、単純計算で約5年7か月でなくなります。
一方、年金収入が月20万円あれば、毎月の支出を年金で賄える計算になります。
同じ1,000万円の預貯金でも、収入と支出によって状況は大きく違うのです。
もちろん、実際には入居時の費用や医療費などもかかります。
だからこそ、今ある預貯金の額だけではなく、毎月の収入と支出を把握し、そのお金がいつまで持つのかを考えることが大切なのです。
お金の寿命と、自分の寿命
では、5年7か月後も元気に暮らしていたら?
預貯金が尽きても、人生は続きます。
その先の暮らしをどうするのか。
そう考えると、不安になるかもしれません。
でも、数字を知らずに「何となく大丈夫」と思っていることも、決して安心とはいえないのではないでしょうか。
預貯金がいつまで持つのか。
これを「資金寿命」といいます。
買えることと、払い続けられることは違う
これは施設入所に限った話ではありません。
例えば、車の購入。
購入代金を用意できたとしても、その後には保険料、税金、車検、燃料代、修理代などがかかります。
住宅購入も同じです。
「今の家賃と住宅ローンの返済額が同じだから大丈夫」
そう考えていても、持ち家には固定資産税や修繕費などが必要になります。
さらに、住宅の修繕費がかさむ時期に、子どもの教育費が重なるかもしれません。
今、欲しい。
今なら買える。
その気持ちだけでなく、将来も無理なく払い続けられるのか。
そこまで考えておきたいものです。
数字を知ることは、選択肢を持つこと
漠然とした不安は、数字にしてみることで整理できることがあります。
反対に、何となく大丈夫だと思っていたことが、数字にしてみると厳しいとわかる場合もあります。
でも、それは決して悪いことではありません。
早く気づけば、準備する時間ができます。
施設入所を考えていた方が、もう少し自宅で暮らす方法を探してみようと思うかもしれません。
今のうちから施設の費用を調べておこうと思う方もいるでしょう。
毎月の支出を見直してみようと思う方もいるかもしれません。
反対に、十分な準備ができているとわかり、安心して施設入所を決められる方もいるでしょう。
もちろん、費用だけでなく、健康状態や介護の必要性、安全に暮らせる環境かどうかも大切です。
どれが正解ということではありません。
大切なのは、何となく大丈夫、何となく不安、で終わらせないこと。
実家の片付けや生前整理も、物を整理することだけが目的ではありません。
親御さんがこれからどこで、どのように暮らしていくのか。
その先の暮らしを考えることにもつながっています。
自分のこれからを、自分で考え、納得して選ぶために。
まずは、お金の見える化から始めてみませんか。


