叱っていけないの?
私は、限られた時間の中で学習を進めるために、漢字や計算では、「正しく」「早く」できる事がよいと思っています。
子どもたちを見ていると、
1 早く仕上げる事はできるが、正確さに欠ける
2 正確に仕上げる事はできるが、仕上げるまでに時間がかかる
3 程よい時間で、正確に仕上げる
のタイプに分けることができます。
1と2の子どもと3の子どもの違いをよく観察すると、集中力に違いがあることに気づきます。
よく考えてみると、当たり前だと思いました。
「正しく」と「早く」という2つの焦点があります。どちらか1つとなると焦点は1つになります。
複焦点を意識するためには、単焦点よりも集中力を上げないとできません。
単焦点の場合、学習中に目の前の学習以外の話をする姿をよく見かけます。
複焦点の場合、静かに学習している姿をよく見かけます。
1つの事に集中しようとしても集中できないようになっているのが、私たちの「思考」です。
これは、簡単な実験で説明することができます。
例えば、「目の前にある「赤鉛筆」の事だけを1分間考え続ける」
をやってみましょう。
初めは、鉛筆の色、鉛筆の形、鉛筆の長さ、書かれた文字など鉛筆について考えていますが、そのうち、集中力が切れ、鉛筆にまつわる出来事が思い浮かび、その情景に現れる人や物の事に焦点が移り、赤鉛筆の事に集中できなくなります。慌てて「そうそう赤鉛筆の事を考えなくては」と思い、赤鉛筆について改めて考え始める事になります。
このように「思考」は意思を強くしないと1つの事に集中できません。
複焦点の場合は、他の出来事に思いが浮かぶのではなく、「正しく書けているか」の集中力が途切れた時、もう一方の「時間はあるか」が浮かびます。つまり、1つに集中できなくなった時、他の出来事が浮かぶのではなく、もう一方が立ち上がるため、集中力が持続しやすくなると考えることができます。
「もっと静かに勉強しなさい。」と言っても、静かに学習できないのは、この「思考」の性質からすると当然かもしれません。
この事を考えると、井戸端会議が長く続く事の説明ができます。
集中力を発揮することなく、自由に話を展開できるため、「思考」が自由に飛び回る事ができるという事です。
ですから、逆に止める事が難しくなります。そこで、「ごめんなさい。時間がないので、この辺で終わりましょう。」などと、強制的に切る方法を選ぶ事になります。
漢字や計算の学習の場合は、この2つの焦点で進める事ができますが、私たちがしている仕事は、もっと複雑で、焦点がもっと増えると思います。
という事は、強い意思を持ち続けながら集中し続けることになります。
例えば、会議の途中で、話題がずれたり、時間が伸びたりする事があるとすれば、その場が、複焦点を意識せず、集中力が欠けている状態と考える事ができます。
この事から、集中力を高めるためには、複焦点を与える事が鍵になりそうです。
今日から、子どもたちに「静かに勉強しなさい。」を言わないで、複焦点を意識するように声かけをしたいと思います。