眼鏡店の通販・ネット販売ができない理由
多くの眼鏡専門店では、フレームとレンズの価格を別々に設定しており、
その方に合わせてレンズを選び、提案しています。
では、レンズを選ぶとき、何を基準にすればいいのでしょうか?
今回は、眼鏡店がどのようにレンズを選定しているのか、
そして、お客様自身がレンズを選ぶときの基準について書いてみたいと思います。
セット料金のメリット・デメリット
お客様の中には、「フレームとレンズを最初からセットにしておいてほしい」
という方もおられます。
実際、量販店などでは、フレームとレンズをセットにして、
価格を分かりやすく表示しているお店もあります。
この方法には、もちろんメリットがあります。
お客様にとっては、最初から支払う金額が分かりやすく、
予算も立てやすいということです。
また、お店側からしても、ある程度レンズの種類を絞ることで、
販売や教育がしやすくなるという面はあると思います。
ただし、その一方で、レンズの選択肢が限られることで、
その方に合わせたレンズを細かく選びにくくなるというデメリットもあります。
例えば、同じメーカーの単焦点レンズでも、数千円のものから数万円するものまであります。
素材、設計、コーティングなど、それぞれに違いがあります。
乱視が強い方であれば、
乱視による見え方への影響を考慮したレンズ設計が必要になる場合があります。
一方で、乱視がそれほど強くない方の場合は、そこまで高い設計が必要ないこともあります。
もし自分がフレームとレンズをセット料金にするのであれば、
販売価格を抑えるために、あまりハイグレードなレンズを標準にはしないと思います。
そうすると、標準的なレンズで十分な方には問題なくても、
より高いレンズ性能が必要な方にとっては、不満につながる可能性があります。
そのため、レンズを細かく選定する眼鏡専門店では、
フレームとレンズを分けて価格設定しているところが多いのではないかと思います。
眼鏡専門店は何を基準にレンズを選定している?
正直なところ、高性能なレンズを選べば、
レンズそのものの性能面で不満が起こる可能性は低くなります。
しかし、だからといって、
誰にでも一番高いレンズをおすすめすれば良いというわけではありません。
お客様によって、必要としている性能も違えば、予算も違います。
そのため、眼鏡専門店、特に眼鏡作製技能士は、
その方にとって「どこまでのレンズ性能が必要なのか」を考えながら、
レンズを選定していきます。
もちろん、その基準は眼鏡作製技能士によって多少違います。
自分の場合は、度数やPD(瞳孔間距離)などの測定情報を基準にしながら、
仕事や趣味、使用する距離、現在のメガネの状態などを考慮して提案することが多いです。
素材・設計・コーティングに分けて、大まかに考えると、
素材
⇒ レンズの厚みや重量などに関係するため、
度数やPD、フレームの大きさ・形状などを考慮して検討
設計
⇒ ユレや歪み、見え方の快適性などに関係するため、
度数や乱視の強さ、使用目的などを考慮して検討
コーティング
⇒ キズや反射、付加機能などに関係するため、
使用環境やメガネの扱い方などを考慮して検討
というように、それぞれに選ぶ理由があります。
さらに、ヘルプ加工(スライス加工)、プリズム、単焦点、遠近レンズ、
機能性カラー、通常のカラー、ブルーライトカットなど、選択肢はさまざまです。
これらを測定結果やヒアリング、現在使用しているメガネなどを参考にしながら、
眼鏡作製技能士がこれまでの経験や知識をもとに判断していきます。
つまり、「このレンズが一番高性能だから」という理由だけで選んでいるわけではありません。
「この方には、これくらいの性能が必要だろう」
というところを考えて提案しています。
お客様がレンズを選ぶ基準
では、お客様自身がレンズを選ぶ場合は、何を基準にすればいいのでしょうか?
もちろん、高価なハイグレードレンズには、それだけの性能や付加価値があります。
ただ、実際には、お客様それぞれに予算があります。
また、現在使用しているメガネもあります。
そのため、自分としては、現在使用しているメガネを一つの基準にするのが良いと思います。
例えば、「今のメガネで特に不満はない」
のであれば、現在のレンズと同等程度の性能を基準にして、
そこから必要な部分だけグレードアップするという考え方もできます。
逆に、
「今のメガネはレンズが厚い」
「夕方になると目が疲れる」
「遠近レンズでユレが気になる」
「キズが付きやすくて困っている」
などの不満があるのであれば、その不満を解消するために、
素材・設計・コーティングなどを見直していきます。
そのうえで、
「予算はどれくらいなのか」
「どこまでの厚さなら許容できるのか」
「どこまでの見え方を求めるのか」
「どんな環境でメガネを使うのか」
などを考えていく。
そうすると、レンズ選びが少し分かりやすくなると思います。
個人的には、「一番高いレンズを選ぶ」よりも、
「今のメガネの何が不満なのかを考えて、その不満を解消するために必要な性能を選ぶ」
という考え方のほうが、レンズ選びでは大切ではないかなと思います。
まとめ
実際のところ、あらかじめフレームとレンズをセットにして、
一括表示にしたほうが、店側にもお客様側にもメリットはあります。
お客様にとっては価格が分かりやすく、予算も立てやすい。
お店側にとっても、販売するレンズをある程度絞ることができます。
ただ、その一方で、レンズの選択肢が限られることで、
その方に必要なレンズ性能を細かく選べない可能性もあります。
レンズを選定するということは、店側にとっても、
少なくとも自社で取り扱っているレンズについて、多くの知識や経験が必要になります。
また、お客様にとっては、フレームとレンズを合わせた価格がすぐには分からず、
「予算と自分の希望を伝えて、眼鏡店から提案されたレンズを検討する」
という手間も増えます。
もしメガネを単純に「商品」として考えるのであれば、
セット料金のほうが分かりやすく、購入もしやすいと思います。
一方で、メガネを「見え方やQOL(生活の質)を支える道具」として考えるのであれば、
フレームとレンズを分けて、その人に合わせて選ぶという考え方も大切だと
自分は考えています。
そして、レンズを選ぶときに、「このレンズがおすすめです」と言われたら、
「なぜ自分には、このレンズがおすすめなのですか?」
と聞いてみてもいいと思います。
その理由が、度数や使用目的、現在のメガネの不満、フレームとの相性、予算など、
自分自身に関係する内容であれば、レンズ選びの判断材料になります。
眼鏡作製技能士としては、ただ「高いレンズをおすすめする」のではなく、
「なぜ、このレンズを選ぶのか」を説明できることも大切だと思っています。
次回は、「メガネの測定値は、毎回同じになる?」について書いてみたいと思います。


