「自動巻き時計」は「何もしなくても動く時計」ではありません
「アンティーク」という定義は通常100年以上昔の道具などを指す場合に用います。
ところが、腕時計は20世紀に入ってから発展してきたものですので、本来は「アンティーク」という言葉で表現するのはおかしいのですが、「古時計」と呼ぶのは抵抗があるので、40年~50年前の時計を「アンティークウォッチ」と呼ぶことが多いようです。そのアンティーク時計、あるいはそれに准じた古い時計を修理に出されたとき、技能士が必ずといっていいほどお伝えする言葉が「精度保証が出来ない」という言葉です
精度保証が出来ないとは
手巻きあるいは自動巻きの機械式時計は、古くなったり、固まってしまった潤滑油をキレイにする分解掃除がメンテナンスとなります。歯車の軸を受ける部分{軸}受け)に現在残っている古い油を洗い流します。当然 洗う前と後では軸上けの穴の状態は汚れた状態からキレイな状態に変わります。
そのために洗う後と前では 歯車の回転に伴う横揺れの量に変化が出てしまうことがあります。この横揺れの量については洗ってみないとどの程度の量になるか予測ができません。古い年代の時計の場合 代用部品も無い為、仮に予想以上に劣化が進んでいた場合も、洗うことによってさらに進み、遅れの量が増えることもあり得ます
それでも 分解掃除をしたほうが良い理由とは
正確さが改善されないのであれば、分解掃除をする意味がないのでは?と思われるかもしれませんが、古い油を洗い流して新しい油に変えることで不必要な摩擦を避け、今後の部品の損傷を最小限にとどめるために分解掃除は必要になります。仮に精度が落ちたとしても・・デス!!
クラッシックカーと似ています
クラシックカーに置き換えて想像すると分かりやすいのではないでしょうか?
メンテナンスは必要です。スピードは出ません。エンストすることも考えられます。絶えず 手をかけてやらなければならない場合もあります。どこまで メンテナンスをするか。精度や巻き上げ(しっかりぜんまいを巻いてどれくらい動きつづけてくれるか)を
どれくらいまで期待できるか。やってみなければ結果が出ないことが沢山あります。
何十年と時を刻んできた時計はオーナー様が愛着をもって丁寧にご使用になり、職人が心を込めてメンテナンスをする。
アンティークウォッチのメンテナンスはオーナー様と職人の信頼関係の上に成り立っています。
弊社で受付させていただいたアンティーク時計については下記をご参照ください
優雅なキャリッジクロック(馬車の時計)