訪問支援の是非を問う①
様々な地域で「当事者家族会」といったものが催されています。
「家族会」は、解決のためにも非常に有益なものです。
いやそのはずなのです。
「はずなのに」と言うのは、 実は、家族会などに通いつめているのに、わが子の状況の改善は
遅々として 進まずというケースは決して少なくないのです。
なぜだと思いますか?
不思議だと思いませんか?
「家族会」の目的が勘違いされている
家族会のそもそもの目的は何か?
当事者同士が集まり、当事者同士だからこそ分かりあえることを話し合ったり、励ましあい、
労いあい、支えあい、慰めあう。
有益な情報を交換しあったり、先行く人(解決者)がいれば、助言を得るなど、あくまで〈解決〉
に導くための場であるはずです。
ひきこもり解決は、長期戦です。
だからこそ、本人よりも家族(親)の方が先に根を上げてしまわないように、心身を癒し、
エネルギー充電ができる場は必要なのです。
しかし、見極めが大事なことは、wantとneedは違うということです。
参加者が求めている、欲しているものと、必要なものは必ずしも一致しないということです。
これは、ひきこもり者たちの集まりにもあてはまります。
よく見られるのが、お茶を飲みながら自由にお話ししたり、レクレーションを楽しむことで、
ひとときの安らぎを得ようと試みるものです。
ひととき心が癒えるのはいいのですが、癒すのはあくまでもひきこもり問題に真正面から
向かい合っていくためのエネルギー充電のためです。
肝心な充電した後の〈問題への取り組み〉の方が、なおざりになっていることが多いようです。
決心覚悟して行動にうつしてこそ変化が現れる
勉強会などへの参加を「罪滅ぼし」と思って、10年以上費やしている親御さんもおられます。
家族会への参加や講演会を聞きに行ったり、関連図書を読みあさることで、あたかも何かが
変わったような気になってしまうことも少なくありません。
それらが、いわゆるトランキライザー(精神安定剤)となってしまい、「自分は手をこまねいて
何もしていないわけではない」と、自分を納得させてしまうのです。
忘れてならないのは、行動に現してこそ結果が出るということです。
念じただけでは花は開きません。
しかもその行動は、望む結果を出すために必要な行動です。
ひまわりの花を見たかったら、ひまわりの種を蒔くことです。
そこには固い意志、決心、覚悟が必要です。
意志とは、行為・行動に移されるだけの強さをもった欲求です。
本当に「罪滅ぼし」を思うのなら、その行為が行動が、わが子のための罪滅ぼしになること
なのかを吟味し(頭を使い)、手と足を使って動くということをしていかないかぎり、結果は
出ないのです。
学習したことは実践があってこそ、活きてきます。
知識として知っているだけでは、分っているとはなりません。
行動が伴わないかぎり、できるとはなりません。
癒しではなく、「問題解決」の視点
ひきこもり現象は、本人のやる気をただ待つものではありません。
生じている、抱えている問題を解決していくものです。
問題の解決ですから、「何が問題か?」「どういう状態になれば解決なのか?」を誤認
しないようにしなければなりません。
間違った問題の正解を導き出す手間ほど無駄なものはありません。
ボタンの掛け違いは、その後に取り組むことが総崩れとなりかねません。
これまで、不登校は学校に行ってないこと、ひきこもりは外出しない、働かないことを
問題視した対策を行ってきたがために、現状のありさまになってしまっていることを
見れば、そのことがよく分かられると思います。
問題を解決するためにはどうしていくか。
先に述べた「どういう状態になれば解決なのか?」をハッキリ、しっかり定める。
その上で、望む結果を出すためには、今既にある条件(実態や環境)を活用して、必要な
条件をそろえていくのが基本です。
とかくないものねだりで、「あれも足りない、これも足りない」と不満ばかりをもらして
しまいがちですが、現状何が使えるかを考えて、猫の手だろうが使えるものは何でも
使っちゃいましょう。
今ある条件というのは、わが子への働きかけに協力してもらえる人は誰か?
コミュニケーションが取れるのは誰か?
年齢や本人との関係性にもよりますが、きょうだいにも協力してもらうべきです。
なぜなら、将来自分たち自身に関わってくる問題だからです。
実際、近年は親ではなく、きょうだいからのご相談も増えてきました。
親が何とかするだろうと眺めていたが、どんどん長期化するばかりで、親も当然高齢に
なっていっているが、何かしている気配がないと心配になってきたからです。
親が亡くならないまでも、介護が必要になってきた時に、果たして力になるのだろうか?
もとより経済的な支援は期待できませんからね。
親亡き後は、もちろんきょうだいである自分たちに直接かかってくることなのです。
地域にある支援団体や相談窓口も把握しておきましょう。
活用できる今ある条件と、結果が出るために必要な条件を考えていかなければなりません。
そのためにも、わが子やわが家に何が起こっているのか、解決すべき問題の本質は何かを
見定めていく必要があるのです。
これらのことは、当事者だけが集う家族会ではつかむことは出来ないのです。