ひきこもり現象の理解なくして解決は成し得ず

中光雅紀

中光雅紀

テーマ:解決のための視点

当協会の支援法は家族参画型の支援法ですので、先ず親御さんにカウンセリング を受けて
頂き学習して頂くのですが、「なぜ親が勉強しなければならないのですか? 子どもをなんとかしてもらえればそれでいいのですが」という質問を受ける時があります。
正直、絶句です。
早期解決のためには、一にも二にも親御さんの理解です。
引きこもり(不登校)という現象の理解が必要なのです。
なぜわが子が動けなくなっているのかの理解も無しに、どう解決しようと思っておられる のでしょうか? 恐らく、解決するのはわが子のやる気次第と考えておられるのでしょう。
親がどうこうする問題ではないと。 親はただ、わが子に困らされているというのでしょう。
理解ができていなければ、自分たち(親)は、あたかも被害者だと勘違いしてしまいます。

理解をもって親が先に行動を始める

長期化の原因をつくっているのは、実は本人たちではなく、親御さんたちです。
なぜなら、本人たちはもとより動けない状態にあるのですから、解決するためには親御
さんが動くしかないのです。
ですから、黙って様子を伺っているだけでは、長期化してしまうのは当然のことなのです。

また、理解ができていなければ、わが子の現状に翻弄させられてしまい、腹を立てたり、
落ち込んだりで解決のための意欲も減退し、あきらめてしまいかねません。
「何もしていないことはない!」とは言っても、理解がなければはたらきかけが適切で
ない場合がほとんどです。
かえって悪化させてしまっています。
だからこそ、理解することは不可欠なのです。
理解のためには、勉強していかなければなりません。

以前のコラム『事態をいきなり変えるのではなく、姿勢を正す』でも述べましたが、
価値観を変えるためにも「知る」ということが必要なのです。
解決策を見出すためにも、また、ひきこもり(不登校)の解決は長期戦になります。
ですから自身のモチベーションを維持していくためにも、理解を深めていくための学習が
必要なのです。
親が勉強する理由も分からないようであれば、一生のひきこもりにしてしまうのも無理
からぬことです。

間違った問題の正解を求める愚かさ

コラム『事態に対してどう臨むか?』で、「問題」を見誤ると、事態がより深刻化して
しまうと述べましたが、間違った問題の正解を求めることに懸命になることほど、無駄な
ことはありません。
ボタンの掛け違いは、その後の取り組みが総崩れとなってしまいます。

問題行動と思われる不登校やひきこもりは、本人にとっては、自己防衛策であり、一種の
治療法です。「治療的行動化」と申します。
学校や社会の中で過ごすことが、耐えられないほどの苦痛を生じさせるので、自室に
留まることで、自分を守り、その痛みを癒そうとしているわけです。
ですから、学校に行かないだけですぐに病院へ連れていきたがる親御さんもおられますが、
治療法を治療しにいくというのはおかしいですよね。
つまり、大切なことは、何が痛みを与えているのか。どんな痛みを感じているのかを知る
必要があるというとです。

子どもたちは、決して〈困った子〉ではありません。
〈困りごとを抱えている子〉です。
また、問題のある子、問題児ではなく、〈問題のあった環境〉で、傷を受けた子たちです。
その〈問題のあった環境〉と言うのが、安全や安心が守られていない環境で、それは
「逆境」と呼ばれるのです。
自分をそこから守らなければならない、ひきこもり者たちが抱えているその困りごとが
何かを読み取っていくことこそが適切な援助となるのです。

本当の過ちとは?

そのためにも、理解のための学びが必要なのです。
『過ちて改めざる是を過ちという(論語)』という言葉もあります。
本当の過ちは、過ちと知っていながら悔い改めないことであるという意味ですが、過ち
とも気づかなければ、いよいよひき者たちはうかばれません。
『善を見ればただちに学び取り、過失があればただちに改める』
この姿勢が何より求められます。

多くの相談者は、「こう言えば動き出す」「こうすればいう事を聞く」といったように、
あたかも取扱説明書のようなものを期待して来られます。
ですから、「理解していくために学習しましょう」と言いますと、
「えっ?どうすればいいかを教えてもらえたらいいんですけど」とか、
「うちの子に何かしてくれないんですか?」
といった言葉が返ってくることもあります。
これらは、子どもだけを変えてくれたら済むことといった考えがあるからです。
つまりは、学校行くなり、働くなりしさえしてくれたら問題なしということですね。
自分たちが動く、変わるという前提がまったくないわけです。
その考え、姿勢が大問題ということに気づかなければなりません。

「知る」「分かる」「できる」は違う

「理会」という言葉があります。
これは「理解会得」のことです。道理を会得することです。
会得ですから、身に備える、自分のものとするということです。
自分のものとするということは、実際に行動できているということですね。
わが子の状態の意味、それを招いた親としての自分たちの関わり様の不適切さを理解し、
それに適した対応を習得し、実行できる。それが「理会」です。
理会ができるためには、1、2度支援者の話を聞いただけでできるはずもなく、継続的に
学習をしていかなければなりません。
大人になった、親になったからといって発達が完了しているわけではありません。
学びは、学び終えるまで続きます。
もうすっかり学び終えられたという自信がありますか?

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中光雅紀
専門家

中光雅紀(不登校・ひきこもり支援者(家族心理教育コンサルタント))

NPO法人地球家族エコロジー協会

トラウマの視点からひきこもりの原因を見える化していくアプローチを行い、そのもがきのプロセスから人間としての成長を果たし、ひきこもりから脱却。新しい自分に生まれ変わるような変化をサポートしていきます。

中光雅紀プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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