職場の悩みを言葉にするコツとは? 〜産業カウンセラーが教える、言葉にできる自分になる方法〜

シリーズVol.19をお届けします。
今回のテーマは…。
決断を語った人に、どう寄り添うかです。
決断を聞いた後にどう関わればいいのか
「辞めることにしました」
「もう、限界なんです」
そんな言葉を、突然耳にすることがあります。
本人が語るまでに、どれだけの葛藤や迷いがあったのか。
その背景をすべて知ることはできなくても、
語った瞬間の空気の変化には、誰もが気づきます。
そのとき、支援者として、上司として、同僚として——
どう関わればいいのか。
何を言えばいいのか。
そもそも、何か言うべきなのか。
聞いてしまったら最後、悶々として悩み始めます。
語った人の中では、すでに何かが動き始めています。
その“動き”にどう寄り添うか。
今回は、語ったあとの時間に焦点を当てながら、
産業カウンセラーとしての関わり方を考えてみたいと思います。
語った瞬間に起きている“内的な動き”
語るという行為は、本人にとって大きな決断の一部。
それまで頭の中で繰り返していた思考が、
ようやく言葉になった瞬間、
本人の中ではすでに何かが動き始めています。
- 自分の選択を現実として受け止める覚悟
- 他者に伝えることで責任を引き受ける意志
- 言葉にしたことで、次のステップへの準備が始まる
この“語った瞬間”は、支援者にとっても重要なタイミング。
とはいえ、焦って何かを言う必要はありません。
むしろ、語ったあとに訪れる“余韻”の時間こそ大事。
丁寧に関わっていきたいところです。
語ったあとに残る“静かな余韻”とは
語ったあと、すぐに動き出す方もいれば、
沈黙する方、涙を流す方、少し笑う方もいます。
どれも、その人らしい“動き出し”のかたちです。
支援者としてできることは——
- 決断を評価しないこと
- その人の言葉の背景にある思いや葛藤を聴くこと
- 「語ってくれてありがとう」と静かに受け止めること
語ったこと自体が、すでに大きな一歩。
その関わりの中で、本人の中に気付きが生まれます。
そして、次第に行動する力が育まれていきくのです。
現場で使える関わりのヒント
沈黙を怖がらないこと
語ったあとに沈黙が訪れたら、それは“考えている証”です。
無理に言葉を埋めようとしないことが大切。
「決断=完了」ではないと理解すること
語ったからといって、すぐに行動に移るわけではありません。
その人のペースを尊重する姿勢が求められます。
ユーモアで場をゆるめること
「まずは深呼吸でもしますか」
「その決断、3日後に変わっても大丈夫ですよ」
そんな言葉をかけてみるのも効果的。
本人の緊張感が少しゆるめられるだけで、思考が動き出すこともあります。
まとめ:語ることは変化の始まり
決断を語った人に、どう寄り添うか。
それは、語った瞬間の“動き”を見逃さず、
語ったあとの“余韻”に丁寧に関わること。
語ったあとに残る静かな時間には、
その人の覚悟と、これからの歩みに向けた準備が含まれています。
産業カウンセラーとして、私はその余韻の中に立ち会いながら、
本人が自分の力で次の一歩を踏み出すための、
“気づき”につながる関わりを探し続けています。
そして語ったあとに少し笑えるくらいの “間” さえも、
大切な関り行動の一つだとお伝えしたいところです。
次回は…。
Vol.20 語ったあとに訪れる“迷い直し”
——決断は一度きりじゃない
産業カウンセラーとしての視点で書いていきます。



