会社員の“メンタルがやられる前兆”10選|5,000人の相談で分かった『静かに壊れていくプロセス』
目次
シリーズVol.14をお届けします。
今回のテーマは…。
「言葉にしなくてもわかる」はほんとうか?
——期待とすれ違いが生まれる関係性の話です。
非言語がつなぐ安心感と言葉が足りなかったことによるすれ違い。
言わなくても伝わってほしい
私の気持ちを察してよ
という勝手な期待と身勝手な正当化による揺らぎに触れます。
今回は、“わかってほしいけど、わかってもらえない気がする”という関係性のもどかしさに、産業カウンセリングの現場から書いてみます。
沈黙の期待とすれ違いの境界線
言わなくても、察してもらえるはず。
「言わなくても伝わる」と信じたい気持ちが見え隠れ。
ですが、それは身勝手な行動の一つでもあります。
ちょっと言語化してみましょうか。
言わなくても、見ればわかると思った
察してもらえて当然だと思っていた
自分なら気づけるから、相手もそうしてくれるはずだと期待した
ですが、その期待は、すれ違いを生み出すもの。
言葉にしなかったことで、誤解が生まれた。
言葉を控えたことで、気持ちが届かなかった。
産業カウンセリングの場でも、
「伝えなかったこと」と「伝わらなかったこと」
の関係性に悩む声に触れます。
言わないことと、言わなくていいことは違う。
その境界を見極める視点が、関係性の深まりには必要ですよ。
「言わなくてもわかる」は、関係への信頼と不安が交錯する場所
「言わなくてもわかる」は誰が決めたのでしょうか?
そう、相手をないがしろにして、自分が身勝手にそう思い込んでいるだけです。
特に親しい相手ほど、「言わなくても伝わるはず」と思い込んでしまうことが多々。
それは、安心の証でもあり、同時に甘えや依存も含んでいます。
- 自分が無言でも、相手が察して動いてくれる
- 気持ちを言葉にする前に、共感してくれる
- 配慮のない一言に、理由も聞かずに受け止めてくれる
こうした期待があるからこそ、言葉を交わさないまま過ごしてしまう関係が生まれがち。
それは相手を信頼しているようで、
「言葉で確認する」プロセスを自己都合で省略。
そのことで関係性に亀裂が入る危うさを招くことも避けられないのです。
言わなかったことで、感情のズレが生まれる瞬間
相談の場では、こんな話に出会うことがあります。
頑張ってるの、見ればわかるはずでしょ
何度も同じことしてるから、わかって当然
気づいてくれるだろうと思ってたのに気づかない
傷ついてるって、言わなくても伝わると思ったのに
その人が語っているのは、
“伝えなかったけれど、気づいてほしかった”
という自己矛盾そのもの。
言葉にしないことで守られていたはずの関係が、
逆に、言葉の不足によって距離を生む場面もある。
とはいえ、中には言葉を選ばなかったのは、
不安の中で“言わない”ことを選ばざるを得なかったこともあるかもしれません。
言葉を置くことへのためらい
言ってしまったら、壊れるかもしれない
言葉にしたら、傷つけてしまうかもしれない
そんな気持ちから、あえて沈黙を選ぶことがあります。
産業カウンセリングでは、そうした“言うか、言わないか”の迷いに寄り添う場面が多くあります。
- 相手の反応が怖くて、言えなかった
- 空気を壊したくなくて、あいまいにした
- 関係が深いからこそ、言葉でズレたくなかった
言葉を置けなかった背景には、
関係性を守りたいという祈りにも似た ”お願い” 感情が隠れています。
だからこそ、“言わなくても伝わる”という希望には、
不安と願いが混じり合った複雑な色があるのです。
スピリチュアルにはまっても変わらない現実
ちょっと話がそれます。
実は、このすれ違い反応に対して不思議な運命の分かれ道ができます。
それは、うまくいくように霊感商法に走る方、
ジンクスやルーティンの験担ぎ(ゲン担ぎ)に振り回される方
占いにはまる方などなど。
自分は沈黙したままで相手が理解してくれるように期待。
本人には何も伝えずに、別のところで「上手くいきますように」と願って祈るばかり。
自分が課題を感じている相手に対して、何の行動も起こしてもいない。
そんな条項で解決ができるはずもなく。。。
ですが、圧倒的に多くて。
なんと戦っていて、何のスイッチが入っているのやら。。。
ここにも認知の縛りを解く必要が出てくるのです。
「言わなくても伝わる」を期待するときほど言葉への迷いがある
本当に言わなくていいのか。
それとも、言えなかっただけなのか。
そして、言ったあとに起こることが怖かったのか。
「言わなくても伝わる」には、関係性への信頼と、表現へのためらいが隠れています。
そのことへ理解を深めることで、伝えるための準備が少しずつ整っていくのかもしれません。
言葉にすることだけが誠実ではない。
けれど、言葉にしなかったことが完璧に届くわけでもない。
この揺らぎを受け止められる場にこそ、
安心して言えること・言わずにいても守られること
その両方が育まれていくのではないでしょうか。
次回の予告…
Vol.15|声にならない違和感を見逃さない。
——微細なサインに寄り添う支援のあり方へ
表現されなかったけれど、存在していた違和感。
言葉にならなかったけれど、滲んでいた疲れ。
そんな“静かなサイン”にどう気づくか、支援する人としての感覚を深めていきます。




