デジタル化の未来でも人対人の関係は続く

GW明け、新卒社員の離職が増える時期として知られています。
この傾向について、テレビ西日本の報道番組「記者のチカラ」で特集が組まれ、私も産業カウンセリングの視点から「どうやったら新人の早期離職を防ぐことができるのか?」について、テレビの取材を受けました。
取材では、「新人の離職が増えたのではなく、企業が見過ごしてきた課題が露呈しただけではないか?」という点について伝えました。
単に企業側が見過ごしてきた課題が、今露呈しただけ
GW明けの新人離職が「急に増えたように見える」ているのは、これまで問題視されなかった課題が、企業側にとって無視できなくなったという側面が大きいと考えています。
特に、令和の新人と企業文化のギャップが、この課題を浮き彫りにしています。
1. 「耐えるのが当たり前」が通用しなくなった
取材では、「令和の新人は違和感を感じたらすぐに動く傾向があり、企業の従来型教育とは合わないケースが増えている」と指摘しました。
かつての新人教育では、
「仕事はすぐには楽しくならない」
「まずは3年働いてみろ」
という価値観が主流。
その言葉通り、3年働いて見切りをつけることで3年で離職率が高くなるという傾向。
連日報道される情報から、過労死自殺の報道や慣れない職場で抑うつ状態になるくらいなら「自分の人生を守る」ために、そんな会社は辞めた方が良いという発信が増えています。
そうするとおのずと、「合わない環境に留まるより、早めに転職する」という選択が増えてくるのは当然ではないでしょうか?
2. 研修・教育の仕組みが時代遅れになっている
また、研修・教育の仕組みが時代遅れになっていることに意識を向ける必要があります。
企業の教育システムは、「現場で見て覚える」から「座学→現場で実践」という流れ。
ですが、令和の新人の学習スタイルは大きく変化。
全部が全部とは言わないまでも、明らかにこれまでの仕組みでは定着しづらくなっています。
まずネットで調べてから動く
今の新人は「わからないことを聞く前に、まず自分で検索する」習慣が根付いています。
そのため、従来の「研修で学ぶ→業務で活用→質問しながら覚える」という流れには違和感を覚えがち。
「分からなかったら聞いて」という姿勢が、令和の新人にとっては「自分で調べられるのに、わざわざ聞く意味が分からない」と映る可能性があります。
もしくは、ピリピリした職場で分からないことを聞くことが「怖い!」とも感じがち。
そうなると、家族や友達に相談し、同僚同士では情報交換。
職場の中では、わかっているような素振りになりがちです。
デジタル環境に慣れすぎて、アナログ業務に疑問を持つ
新人は自動化に慣れているため、アナログな作業に対して疑問を持つことが多いです。
例えば、紙ベースのデータ整理や手作業での集計を求められた際に、「なぜこれを手作業でやるのか?」と違和感を覚えます。
企業側が「こういう手順で進めるのが当たり前」と思っていることも、新人にとっては「この作業は本当に必要なのか?」と疑問を抱くポイントになってしまうのです。
視覚的な理解は得意だが、即断即決の言語化は不慣れ
今の新人は、情報を視覚で捉えて素早く判断することに慣れています。
動画やインフォグラフィック、SNSの短い投稿などから効率的に情報を得るため、「即断即決」は得意。
また、自分の気持ちを言うのは文章になりやすく、言語化せずに過ごすことが増えることから、言葉に出して話すことには不慣れな傾向があります。
例えば、今どきの新設設計された自動記録の傾向を考えてください。
まず、相手がわかっていて、時間も勝手に記録されています。
そうなると、「5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうする)」といった伝統的なフレームワークで書き記す必要がない。
今の新人にとっては
「それを細かく書く意味がわからない」
「図やフローで示したほうが早いのでは?」
という認識になりやすいのかもしれません。
現に、産業カウンセリングの時も「なぜ、それをするか意味が分からない。」という声も良く聞こえてきます。
とはいえ、これを読んでいる皆さんも、若かりし頃にご経験があるのではないでしょうか?
…σ( ̄∇ ̄; )
時代は繰り返すもんです。
自分が入社したての頃など、どなたも会社のやり方に疑問を持つ。
そして自分の考えが正しいと主張をし、「自分は変わることなく、相手を変えてやろう!」と思ったことが誰しもあったはず。
そういったことがあったことすら、いつの時代も忘れがちです。
今、企業が考えるべきこと
取材の中で、「早期離職を単なる問題として見るのではなく、企業の体制を見直すチャンスと捉えることが重要」と伝えたかった。
ですが、緊張していることで伝える必要があることが伝わりにくかったかなぁと反省。
また、1分程度の専門家の意見なので、そこまで伝わらないかなぁとも。
自己弁護含めて、後からならいくらでも考えることはできると苦笑いです。
具体的な企業体制の見直しはどうすればいい?
色々書いていくとどうしたら良いのか、新卒対応のことを考えますよね。
これまでの産業カウンセリングの状況で感じていることは下記。
採用時の情報開示のミスマッチを知る
「入社してみたら思っていたのと違った…」というミスマッチを防ぐには現在の新人のヒアリングが大事。
かといって、会社の関係者には、実際に話してはくれません。
それは、素直に話して陰で何と思われているのか不安になり、自分の評価を気にするから。
ここは、産業カウンセリングを活用。
実施者の状況を集計し分析したレポートを受け取り企業改革のヒントにすることがカギです。
産業カウンセラー側では、抑うつ状態が出ている方の認知の縛りを取り、フォローを入れることを合わせて行っていきます。
そのことで、企業は個人情報を知る必要は一切なく、私情や感情に乱されるような心配をする必要もありません。
それこそが、産業カウンセラーの本来の役割ですから。
産業カウンセラーとは何ぞやは下記を参照ください
20世紀初頭から始まった産業カウンセリング
産業カウンセリングと教育測定運動から進化した心理テスト
産業カウンセリング 心の健康から職場の繁栄へ
企業は「変わるチャンス」として離職率を捉える
企業にとって、離職率の変化は単なる「困った問題」ではありません。
「今の採用市場に適応するためのヒント」になり得ます。
取材では、「これまでのやり方でうまくいかなくなったということは、企業がアップデートすべきタイミングが来たということ」と話しました。
特に、互いの考えにおいて、「誤認識と誤伝達が生まれている」こと。
時代変化により、「自分が経験してきたことを相手は経験しなくていい。」ということ。
互いに「これくらい知っているでしょう。」という、思い込みと認知の縛りにより、互いに言葉がさっぱり伝わっていないという現実があるのです。
こういったことに目を向けて、この変化に対応する企業ほど、結果的に長期的な成功につながる可能性が高いのではないでしょうか。
まとめ
テレビ西日本の報道番組「記者のチカラ」で取材を受け、
「GW明けの新人離職が増えたのではなく、企業体制の課題が露呈しただけ」という視点でお話しました。
企業がこれから持続的に成長するためには、
- 採用時の情報開示のミスマッチを知る
- 教育体制を時代に合わせて変える
- 離職を「問題」ではなく「変わるチャンス」として捉える
この視点で今の採用市場に適応することが求められています。
今こそ、「企業の体制を抜本的に見直す時期」なのかもしれません。
放送予定日:5月7日 テレビ西日本「記者のチカラ」
どんな内容になっているのかなぁ。
例え1分間程度の出演としても、嬉しいのは事実です。
そして、伝わりそこなったことを、自分の言葉で発信できることができる時代にもありがたいですね。



