情報の信頼できる根拠は?:企業の情報リテラシー教育が果たす役割

さぁ、今週も金曜日になりました。
福岡を語る上で、忘れてはならない偉人伝。
前回すっかり飛ばしてしまった、毎週金曜日のお約束です。
福岡・博多が「商人の町」として名を馳せた背景には、優れた商人たちの存在があります。
その中でも、島井宗室(しまい そうしつ)は、時の権力者たちと交渉しながら、商業を発展させるだけでなく文化財を守り抜き、商人の誠実さを体現した偉大な人物です。
その生涯は、激動の安土桃山時代から江戸時代初期にわたり、博多商人の精神とその気概を象徴しています。
博多商人の島井宗室
福岡・博多は、古くから「商人の町」として知られ、歴史に名を刻む商人たちがその発展を支えてきました。
その中で、島井宗室(しまい そうしつ)は、16 世紀の博多の代表的な豪商人であり茶人です。
また「博多三傑」の一人として、激動の時代に商業を通じて歴史を動かした人物として知られています。
その生き方は、本能寺の変から九州征伐、そして朝鮮出兵への反対運動まで、彼の生涯はまさに波乱に満ちた人生だったようです。
博多三傑:島井宗室、神屋宗湛、大賀宗九の軌跡
博多を代表する商人として、島井宗室は神屋宗湛(かみや そうたん)、大賀宗九(おおが そうく)とともに「博多三傑」として名を馳せました。
当時の商人たちは、現代とは比較にならないほどのリスクを抱えながら活動。
島井宗室たちは不屈の精神でその困難を乗り越え、博多商業の基盤を築き上げました。
歴史的瞬間の渦中にいた商人
1582年、本能寺の変という日本史上最大の転機の一つ。
その場には、島井宗室と神屋宗湛の姿もありました。
燃え上がる本能寺から奇跡的に脱出した島井宗室が空海直筆の『千字文』を持ち出したエピソードは、文化と商業を守り抜こうとする彼の執念を物語っています。
時代の権力者たちとの交渉と対峙
島井宗室は織田信長、豊臣秀吉、そして徳川家康といった時代の権力者たちとの関係を築きながらも、時に彼らに反旗を翻す信念を持っていました。
豊臣秀吉の朝鮮出兵に対しては反対の姿勢を示し、その結果として秀吉から蟄居を命じられる場面も。
ですが、商人としての誠実さを決して失わず、地域社会への貢献を続けました。
商人としての哲学と倹約の精神
島井宗室が遺した「17条の遺訓」には、商人としての哲学が凝縮されています。
その中でも、第一条と第二条に掲げられた「誠実さ」や「今をどう生きるか」については、現代の経済活動においても大切にしないとならない指針です。
誠実であることの大切さ
人として誠実に生きることは、当然の心得である。
両親や親族、兄弟、家族だけでなく、親しい友人や仕事仲間、さらには日常の付き合いのある人々に対しても、礼儀を重んじ、謙虚な姿勢で接することが重要だ。
無礼な振る舞いや、乱暴な言葉遣いは慎むべきである。
特に、嘘をつくことは厳に戒めなければならない。
たとえ他人の噂話を耳にしたとしても、それを鵜呑みにして広めるようなことはしてはならない。
また、自分が知っていることでも、それが証拠になるような内容であれば、誰かに問われても話してはいけない。
人のことを批判したり、中傷するような話はたとえ聞かされても、受け流すことが賢明である。
現世を生きることの重要性
現世と来世の区別を正しく理解している者は、非常に少ない。
この世の動物すら、目の前の生きることに精一杯である。
人間も例外ではなく、まずは現世をしっかりと生きることが何より重要である。
来世については、仏祖ですらその真実を知らないと説いている。
まして凡人が知ることなどできない。
50歳までは来世を考えすぎず、現世での評判や信用を大切にすべきである。
人生の儚さを知る
人の命は短く、2歳、3歳、10歳、20歳と、若くして亡くなる者も多い。
40歳、50歳を迎える前に命を落とすことも珍しくはない。
その際に「来世はどうなるのか」と考える余裕などないだろう。
もし幼い子どもが亡くなったとしても、彼らは来世など思いもしない。
だからこそ、人生のうちに悩むべきは今をどう生きるかであり、死後のことに思い悩むのは無用なのだ。
ほかにも「慎むべき娯楽と心のあり方」についても人間関係と選んで人と付き合うことを言及。
人付き合いの心得
40歳までは、人に振る舞うことも、むやみに人の宴席に参加することも避けるべきである。親兄弟や親戚への訪問は、年に1〜2回程度で十分であり、頻繁に訪れる必要はない。
特に、夜通しの語らいや慰め事の集まりには参加すべきではない。
物欲を慎む
他人の持ち物を欲しがることは厳に慎むべきである。
たとえ贈り物を受け取るとしても、親類以外の者からの品はもらわないこと。
自分の持ち物もむやみに人に見せたり貸したりせず、価値あるものは大切に保管すべきである。
交友関係の選び方
商人として良好な関係を築くべきは、誠実で信頼できる者、慎重で堅実な人、謙虚で品格のある者である。
そのような人々とは、深い信頼関係を築くことができる。
しかし、以下のような人物とは関わるべきではない
・争いごとを好む人
・他人を批判しがちな人
・不誠実で信用できない人
・虚栄心が強い人
・大酒飲み
・嘘をつく人
・官職を好む人
・派手な遊びを好む人
・周囲に軽薄な話ばかりする人
こうした人々とは同じ場にいることすら避けるべきである。
また、質素な生活ぶりや倹約の姿勢は、ただ富を追求するのではなく、人としての在り方を大切にした言葉も残しています。
倹約と効率的な生活
生活の中では、火の管理を丁寧に行い、薪を無駄に使わないよう注意すべきである。
家の内外の掃除も怠らず、紙や木の切れ端、竹片などは集めて活用し、薪や篝火、焼き物として使うこと。
紙の端切れも捨てずに再利用し、漉き返して新たな紙として活用する。
こうした小さな工夫が、無駄をなくし、家計を安定させる秘訣である。
買い物は自ら行い、価格を把握する
薪や食材、雑魚、浜の品、材木などを購入する際には、必ず自分で値切って買うこと。
価格の相場を理解し、それを覚えることで、後に他の者に買い物を頼んだ際にも、適正な価格かどうかを判断できるようになる。
これにより、使用人に騙されることを防ぐことができる。
家庭の運営と燃料の管理
家の維持には薪が最も重要である。炭や油も大切だが、薪が基本となる。
飯や汁のためにどれほどの薪を使うかを把握し、その量を下女に渡して適切に調理させること。
また、月ごとの薪の消費量を計算し、無駄を防ぐことが大切である。
薪は生乾きや朽ちたものではなく、しっかり乾燥したものを選び、茅などの燃料も活用すると良い。
酒や味噌の製造と経済管理
酒や味噌を作る場合、米一石に対してどれほどの薪を使えばよいのかを自ら把握し、燃料の消費量を計算すること。
薪や炭の使用量を自分で測り、それを元に適切な管理を行うことで、無駄なく運営できる。
後半のほうは商人としての心得には事業の運用についても残してあり、本当にそうだよなと思うことしきり。
商売と財産の管理
使い残した物は宗怡に預け、少しずつ商売として運用すべきである。
必要なものは適宜購入し、無駄な買い物を避け、商売の資本や質入れに活用する。
酒造りも適度に行い、利益を出すために計画的に運営することが重要である。
高価な品物はむやみに購入せず、安価な品はすぐに売れなくても問題ない。
質を持たない者に安易に貸し付けるべきではなく、親類や知人にでさえ、むやみに貸すことは慎むべきである。
平戸家(松浦家)などから正式な依頼がある場合は、宗怡と相談した上で対応すればよい。
家中の者に対しては貸し付けなど不要である。
ほんの一部掲載。
もっと金言が残されているのですが翻訳しつつの一部掲載。
十七条に至るまで書ききれませんでした。
また、どこかで気が向いたら取り上げようかなぁと考えています。
島井宗室の遺産:未来への学び
島井宗室と「博多三傑」が築いた商人の精神は、福岡市の史跡や遺物にその足跡を感じることができます。
「博多三傑」らの功績は単なる歴史上のお話にとどまらず、現在のビジネスやリーダーシップの在り方にも深い示唆を与えています。
財産を守り、商売を継続する
どんな人でも元手があるうちに商売を続けることが大切である。
油断して欲しい物を買い、贅沢に浪費してしまうと、いずれは財産を使い果たし、後悔しても手遅れになる。
そうなってしまうと、商売を続ける資金もなくなり、最終的には貧困に陥る。
このような状況を理解できない者は、誰も奉公に雇いたがらない。
商売と財産管理は車の両輪のようなものであり、どちらも大切にしなければならない。
倹約に努め、財産をしっかりと管理していくことが最も重要である。
時間を大切にし、無駄を避ける
朝は早く起き、夜は早めに休むことが望ましい。
必要な仕事がないのに灯油を無駄遣いすることは避けるべきだ。
用事がないのに夜遅く出歩いたり、人の家に長居することは無用である。
何かを行うと決めたら、その時点で先延ばしせずに対応すること。
明日に回すなどの習慣は良くない。
時間を守り、即座に行動を起こすことが大切である。
人としての在り方があるからこその生き方がある
現代に生きる私たちへ 島井宗室の物語は、困難をチャンスに変える知恵と勇気を私たちに教えてくれます。
激動の時代に翻弄されながらも、自らの価値を追求し続けた島井宗室の姿は、今を生きる私たちにとっての羅針盤となるはずです。
その精神を継承し、未来を切り拓いていくことこそ、博多商人たちの遺産を真に活かす道ではないでしょうか。
まとめ
島井宗室を中心に神屋宗湛、大賀宗九という「博多三傑」は、商業の発展に尽力しながらも、文化財や地域社会への貢献を忘れませんでした。
「博多三傑」らが示した商人としての誠実さ、倹約、そして戦略的な判断力は、現代にも通じる指針と言えるのではないでしょうか?
島井宗室らの生き方を研究することで、私たちは新たな時代への挑戦と責任ある行動への示唆を得ることができます。
その精神を未来へ繋ぎ、博多商人の気概を後世に伝えている企業も残っていることこそが宝。
そして、今の私たちに失われつつある心の在り方なのかもしれません。



