博多にまつわる「濡れ衣」の語源と歴史

博多の街並みで気がつくこと沢山

皆さんは、博多区千代3丁目の交差点近くに、大きな石碑と仏像が並ぶ場所をご存知ですか？
国道3号線と三笠川に挟まれた歩道沿い。
当たり前のようにある石碑と仏像。

多くの人が普段気づかずに通り過ぎているかもしれません。
私は、ここは交通量が多いところで、車での通過点なこともあり、全く関心が有りませんでした。
ですが、「濡れ衣」の語源が博多にあることを物語る歴史が隠されています。

「濡れ衣」とは、「無実の罪を着せる」という意味で使われます。
ですが、その由来は聖武天皇の時代（735～749年）に遡ります。
『筑前國続風土記』には次のような話が記されています。

物語の始まり

筑前に赴任していた国司、佐野近世には美しい娘がいました。
近世の後妻（娘の継母）は、娘に嫉妬。

娘に嫌がらせを繰り返し、そのことが次第にエスカレート。
娘がいなければと追い出す計画を立てます。

ある日、継母は漁師に金品を渡し、「娘に釣り衣を盗まれた」と訴えさせます。
近世は娘の部屋を覗き込み、濡れた釣り衣を掛けて眠る娘の姿を見て逆上。
怒りにまかせて娘を斬ってしまったのです。

その後、娘は近世の夢の中に現れ、無実を訴える歌を詠みました。
これによって近世が知ったのは2つのこと。
「娘が無実であったこと」
「継母が無実の罪を着せたこと」
深い後悔の念に駆られた近世は妻と離縁。
その後、出家しこの塚を建てたそうです。

博多七堂と濡衣塚の由来

娘を弔うために建立されたお堂は「博多七堂」と呼ばれています。
「普賢堂」「辻の堂」「石堂」「奥の堂」「萱堂」「脇堂」「瓦堂」という7つの堂。
現在もその名残りが地名などに残っていますね。

「濡衣塚」で一番大きな石碑には象形文字が彫られています。
これは「康永三年銘梵字板碑」と呼ばれます。
読めない・・・。
( ˘•ω•˘ ).。oஇ

この板碑にはインドで使用されるサンスクリット語を表記する梵字が刻まれているそうです。
いまでもご供養が続いており、現在までに受け継がれています。

三笠川と石堂川の歴史

ちなみに、三笠川はかつて「比恵川」と呼ばれていたそうです。
現在の博多駅北あたりからキャナルシティ付近で那珂川と合流。
地元では「石堂川」とも呼ばれ、これは「博多七堂」の名残りとも。

日常的に使っている言葉「濡れ衣」の背景には、このような悲しい歴史があったようです。

とはいえ、私達は、関心をどれだけ持っているのか。
後世まで受け継がれるものの中で過ごしている。
けれど、無関心であればあるほど、眼の前にあっても、見えているのに見えない。
それが人間なのです。

健康のついでに自分の住む地域散策をはじめてみませんか？
歴史の中に埋もれた物語を掘り起こしができるといいかもしれませんね。