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コラム

引継ぎを一切しない社員への待遇

2018年8月23日

テーマ:労務

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 退職 手続き退職金制度 導入

今後、複数回に分けて会社と社員とのトラブルなど実際にご相談を頂いた事例を中心にお伝えします。


「退職日まですべて有給休暇の申請をして一切出社せず、引継ぎを行おうとしない
 社員についてこのまま退職を待つしかないのでしょうか。
 引継ぎがされない状態のため、後任者の業務量が増加し残業も膨大になっています。
このままでは後任者の健康状態も心配です。
 引継ぎを一切行わない社員に損害賠償などはできないですよね。」


退職トラブルと言われるものでこういったご相談も年に数回あります。

一般的に考えると退職するにあたり引継ぎは義務だと考えられますので、
退職者は誠実に引継ぎを行う義務があります。

しかし、ご相談のように一切引継ぎがない状態の場合、

『誠実に義務がされていない』

つまり、

『職務専念義務違反』

ということになり、損害賠償も可能です。


ただし、この職務専念義務違反と損害との関係については

会社が立証する必要が出てきます。

例えば、引継ぎが行われなかったことで実際にどのような実害が発生したのかの金額です。

本来業務中に引継ぎを行っていれば発生していないであろう後任者の残業代などが考えられます。





実務上、引継ぎが一切行われない場合は苦しいですね。。。



こういった場合、退職届提出後の一定期間を正常に勤務しなかった場合や後任者への引継がされなかった場合、

『退職金を一部又は全部を支給しない』

等の規定があれば、処分を警告して引継業務を行わせることが可能です。


しかしながら、感情のまま動いてしまうという会社も少なくありません。

判例では、業務を引き継がずに退職した社員に対し、1,200万円の損賠賠償を請求した裁判がありました。

(横浜地裁 平成29年3月30日)。


判決は、退職した社員から「不当な起訴」として、逆に会社が訴えられました。

損害が無いとうことで、逆に会社側が退職社員に慰謝料として100万円を支払う命令が下りました。

退職トラブル・・・

どこの会社でも発生する可能性がありますが、

こういったことが起きないように日頃から

有給取得、業務のマニュアル化など進めていきましょう。

もちろん、就業規則の見直しも忘れずに行って下さいね。

この記事を書いたプロ

北出慎吾

社会保険労務士として企業の成長に寄り添う人事労務のプロ

北出慎吾(北出経営労務事務所)

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