【連載②】相続税ゼロ円計画は本当に安全?

石田大祐

石田大祐

テーマ:相続対策術

■ 落とし穴②:他の相続人から“争族”が起きるリスク
相続税をゼロに抑えるために、**「配偶者にすべて相続させる」**という選択を取る方は多いです。
しかしこの方針は、他の相続人の“感情”を無視した結果、大きな争い(=争族)を招く可能性があるのです。

◆ 典型的なケース:「遺産は全部、母に」と言われた長男の怒り
【事例】
千葉県内のあるご家庭では、父が亡くなった際、遺産はすべて母に相続させるという内容の遺言書がありました。
その金額は、自宅不動産と預貯金を合わせて約6,500万円。

母は85歳で持病もあり、長男夫婦が10年以上にわたり献身的に介護してきたにもかかわらず、
**「感謝の言葉もなく、財産は全て母に…」**という結果に。

長男は不満を抱き、
「相続税はゼロでも、俺たちには何も残らないのか」
「兄弟の中でも一番尽くしてきたのに不公平だ」
と感情を爆発させ、最終的には他の兄弟と激しい争いに発展してしまいました。

◆ “節税”のつもりが、家族関係を壊す皮肉な現実
このように、「税金はかからなかったから成功」と思っていた相続が、
・兄弟間の不信感
・母親に対する反発
・親族関係の断絶
という代償を払うことも少なくありません。

特に注意が必要なのは、
・遺言書の中身を事前に誰にも伝えていなかった
・財産分けの根拠を子供に説明していなかった
・日頃の家族関係がドライだった
こういった「準備不足」の場合、トラブルはほぼ確実に起きるといっても過言ではありません。

◆ 「法定相続分がゼロ」でも、心の中はゼロにならない
相続税の計算上、「法定相続人の一部が財産を相続しない」ことは、法律上は問題ありません。
しかし、「気持ちの整理」ができていないまま相続を終えようとすると、必ず火種が残ります。

とくに兄弟姉妹間では、
・遺留分の請求
・遺言無効の主張
・弁護士を通じた内容証明
など、法的な対立に発展することも少なくありません。
この時点で、相続税ゼロどころか弁護士費用・調停費用などで大きなコストが発生する結果になるのです。

◆ では、どうすれば良かったのか?
相続税の軽減は重要ですが、「感情の納得」こそが円満相続の土台です。
そのために必要なのが、
① 家族全員が納得できる分割シナリオの設計
② 相続発生前からの「家族会議」
③ 財産の見える化と、遺言書の“事前共有”
④ 特定の相続人へ感謝や配慮を伝える文書(付言事項)
です。

◎ 一言アドバイス
「税金対策」と「争族対策」は、似て非なるもの。
どちらか一方だけでは、本当の意味で“家族の幸せ”を守ることはできません。

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石田大祐
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石田大祐(不動産コンサルタント)

マリブ不動産コンシェルジュ

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