英検1級道場-受講者と昼食しながら懇談しました

2024/05/15に掲載した記事が、17カ月経過しても毎月コンスタントに読まれています
「文部科学省調査による中高英語力向上の報告」と、それに関する意見9件を記載した記事です
https://mbp-japan.com/chiba/eiken/column/5161070/☚これです
9件は、私と現役・元受講者が書いた意見です
詳しくは、下記をご覧いただきたいのですが、本件に関する興味が英語学習者・指導者の中で高いことが示されています
意見⑨を書いてくださった元受講者が最新状況を踏まえた改訂版を送ってくださったので。皆さんとシェアします
長文ですが、目を見張るような素晴らしい内容です
是非、ご覧ください
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元受講生
現役小学校教員英語主任
今回、レポートする内容は、以下の指摘に関しての私の解釈の続編である。
2024年5月9日、文部科学省から全国の公立中学・高校などを対象にした2023年度「英語教育実施状況調査」の結果が公表されました
報告内容について、多くのメディア(新聞、WEBニュースなど)が採りあげています
◎中高生の英語力の向上が続いている
〇英検3級相当以上の英語力がある中学3年生の割合は50.0%
◎中高生の英語力の向上が続いている 後略
中心は、「◎中高生の英語力の向上が続いている」という点にある。
以前に書いたレポートは以下のリンクから参考にしていただきたい。
リンク
https://mbp-japan.com/chiba/eiken/column/5161070/
上記リンクのレポートをしてから1年以上が経過しているが、この実感はより強くなっている。
実際、英語力向上をより説得させられる場面を多く見てきた。
大きな要因は、「英語を学ぶための取り巻く環境向上」である。
この20年〜30年で大きく変化し、徐々に成果を出してきていると思われる。
つまり「学習環境」の充実化が「中高生の英語力の向上が続いている」の主要因と考えている。
1. 25年間の環境変化要因
正式に文科省が小学校への英語教育を導入したのは、2002年の学習指導要領改定における「総合的な学習」の一部としての外国語教育である。
その直前の2000年、2001年当時、私の勤務校で英語教育を導入する上で、様々な検討を重ねたが、英語教育及びネイティブ教員の導入は大変敷居が高かった。
「知らないアメリカ人が学校にやってくるので、学校が混乱する」
「自分達が英語を話せない」
「私たちは日本語の方が大切」というマインドに関わるレベルから、
「外国人は教員免許を持っていない、よって、日本人教員とのペアでの指導が必要」
「英語の授業時間の捻出」
「身分・待遇」という実務レベルまで多岐に検討は及んでいた。
これらをなんとか乗り越えて、英語教育を導入したものだった。
しかし、この状況は徐々に変化する。
「ネイティブは絶対に必要」
「英語の授業数もしっかり確保する」
「日本人英語教員も含めて指導体制を整える」
と、検討は進むことになる。
これらの進捗スピードは、学校によって違った。
それでも上記の状況は前進へと向かった。
特にネイティブ教員の導入は、自治体、それぞれの学校の努力で進んだ。
実際に、ネイティブ教員の増加・増員、派遣ルートの拡大、学校と直接契約、学校の正規の教職員になる、日本の教員免許を取得するなどのケースを見てきた。
学校に外国人教員がいるというのがごく普通になった。つまり、小学校は英語をも学ぶ場所、という意識を自然に植え付けることができた。
2. 日本人教員の力量アップ
日本人教員のスキルアップも必須であり、徐々に進み、取り組んでいる学校も増えてきている。
中には、あえてネイティブ教員を雇用せず日本人だけで英語教育を運営している学校もある。
何故なら学校という環境においては、英語を教えるだけでなく、生徒の把握、保護者面談、他の教科や行事との調整、各種会議、留学説明会など業務は多岐に渡る。これらは、教員免許保持者や日本人でないとできない業務も現実としてかなりある。
こうした総合的な英語教育の効率性を求めれば、日本人の教員は果たすべき役割は極めて大きい。
そうした多忙な日本人教員でありながら、自身の英語力アップに取り組まなければならない場合も多い。私も微力ながらその1人であり、努力を続けている。
2003年当時、文科省が出した「英語が使える日本人」育成の行動計画で、指導する英語教員は、英検準1級取得を要する(TOEICなら730点)と謳っていた。
当時、この数値に刺激された英語教員も少なくない。
しかし実際取得してみるとまだまだ不足の数値である。
個人的な印象では、英検1級に合格してようやく指導する側の立場になり、英語の先生になれた、という感じがある。
いろいろな単語、構文、表現、例文を伝えられるなど、指導のゆとりと幅として、達していたいレベルである。
海外留学引率の際にもこのレベルの英語力が必要であると感じている。
ただし、英語力と指導力は、しっかり識別して論じるべきではある。
ネイティブは英語力があっても授業力、指導力があるとは言えないケースもある。
「ネイティブ神話」が崩れる場合もよくある。
逆に日本人が、前述の「業務力・総合力」で、結果として指導力が勝ると言えることもある。
3. オンライン教材(オンライン英会話)の成果
私の学校ではオンライン英会話業者と法人契約している。
受講は希望制であるが全校のうちの3割程度が受講している。
自宅で毎日、英会話練習を行うことができる。2021年度に導入して5年目、中にはほぼ毎日受講している子もいる。
自宅に英語学習環境がやってきた、毎日外国人と会話ができる、という状態である。
学習コンテンツ、頻度はそれぞれの家庭のやり方に委ねてる。
それでも5年間定期的に受講してきた子の英語力は確実にアップしている。
学校の授業とこのオンライン英会話だけで5年間学習し、オーストラリア体験留学では見事なスピーチ、コミュニケーションを披露し、現地の方々から大変褒められた子もいる。
家庭内英語環境の充実で海外でも通用した例である。
4. 現地からくるネイティブ学生も増えてきた
私の学校では、年に2回、オーストラリアの学校に体験留学に出かけている。
このツアーの実施そのものが英語環境の提供である。
また、昨今はオーストリアの生徒や学生が私の勤務校を訪問して、子供たちと交流をしてくれる。
これも居ながらにして、英語環境が設定されることになる。
実際の成果として、バディ(訪問した子のお世話係)を希望する子が大変多い。より深いコミュニケーションを求めていることになる。自分からより高濃度の環境を作り出している。
5. 英検受験機会増加
学校内でも英検受験者は、年々増えている。
関連相談、対策アドバイスの機会、結果報告を聞く機会も増える傾向にある。
受験は強制はしていないが、自ら学習の機会を求めている層が広がっている。
日々の英語環境から刺激を受けて、自分で目標を持って取り組んでいるのである。
6 学校外英語研修の機会増加
学校団体の英語研修を受け入れてくれる英会話学校以外の組織も増えてきている。
外国人観光客を対象に日本文化体験を提供している施設でも、日本人学生向けに「英語で学ぶ日本文化」という講座や、通訳案内士が日本人学生を英語でガイドするウオーキングツアーもある。
社会と英語教育の結びつきも英語環境拡大につながっている。
7. AIによる英会話
AIによる英語アプリも充実の方向にある。
ネイティブとの会話との違いは何か?AI教師は疲れずいつまでも生徒の相手になってくれる、勤務時間、謝金などを気にすることがない、途中でやめても失礼にならない、隙間の時間でもできる。
テーマ、トピックが広範囲で、優秀なネイティブであってもカバーできない(時に専門)分野までも扱ってくれる。
トレーニングを受けていないネイティブ教師より指導は断然上手である。
例えば授業で課題を全て終えた子に、アプリを渡しておくと1時間ずっとやっている子もいる。
飽きないだけのコンテンツがある。
また、1時間やり続ける「会話体力」を備えている子を見ることができるようになった。
8. AIと人間教師
AI英語アプリによってネイティブ教員は不要になるか?
十分可能性がある。ネイティブ教員はAIを超えるスキル、人間性などの何かを持っていないといけない。
オンライン英会話も英会話学校もどんどんAI英語教師に取って代わられてしまうことも現実味を帯びてきている。
幸い日本人の英語教師は、前述したように日本人でしかできない、AIにはできない分野を持っているから、そこまで心配しなくていいと考えているが、油断はできない。
このように、総じて言えることは、英語の学びの環境が広がったということである。
連動して、英語力があったということになる。上記環境が絡みあい、連結しあい、相乗効果を発揮しながら英語力向上に貢献している。
9. 今後へ あるべき方向性は?
英語を使った職業に子供達は夢を持ってくれるか?
スポーツ選手、宇宙飛行士、パイロット、医者を目指すという将来の夢を語る子は依然として多くいる。だから英語を勉強する、と言う子もいる。
でも通訳者、英語のガイド、英語教師という、直接的な英語の職業の夢を語ってくれた子には、まだ出会えていない。
彼らの中に、そうした職業のイメージがない、身近ではないのかと思う。
こうした意味での将来イメージを持たせてあげたいものである。
また、海外で活躍する有名アスリートが、インタビューにいつも通訳なしで英語で答えていたなら、英語学習熱は上がるかもしれない。
英語を話すことのイメージ、英語を使っている人のモデルになってくれるだろう。
そうしたモデルがもっと欲しい。しかもあえて探さずに、いつの間にか見られる環境になることだ。
上記アスリートまでいかなくても、学校の先生たちが日常的に英語で会話している、というもの1つのイメージなるかもしれない。
この日常性が増えると、「あえて作る環境」ではなく、「常にある環境」となる。
今後は、これまで努力で作ってきた環境が、日本でも普通にある環境になると、より学習意欲につながるのではないかと思っている。



