英検1級道場-目下50人をマンツーマンでサポートしています

2001年の9.11事件から20年が経った2021年9月11日、アメリカで大々的に慰霊祭が行われました。(今年は21年目)
その様子を詳細に描写した放送とスクリプトを入手しました。
慰霊祭に参加したのは、バイデン大統領、オバマ元大統領、クリントン元大統領、ブッシュ元大統領。最後にブッシュ元大統領が演説しました。
ブッシュ元大統領の演説を聞きながら思い出したことがあります。
2001年の事件当日、彼は地方都市の幼稚園(?)を訪問中でした。訪問中の模様が中継で流れているとき、スタッフの一人がブッシュ大統領(当時、以下同)にメモを手渡しました。
ブッシュ大統領は一瞬、凍り付いたような表情を見せて中座しました。
事件後しばらくしてから、彼は全米に向けて何が起こったかを伝え、アメリカ国家として何をどうすべきかという方針を示しました。
事件はビン・ラディンを首領とするアルカイダの仕業であり、そのアルカイダをアフガニスタンのタリバン(イスラム過激派)政権が支援しているということが突き止められました。
ブッシュ大統領はタリバン政権に対して、ビン・ラディンを逮捕しアメリカに送還するように要求しました。
タリバン政権がこれを拒否したために、アメリカはアフガニスタン攻撃を決意します。
アメリカ軍の攻撃が始まる直前、ブッシュ大統領が演説をします。
演説の最後に、彼はこう言いました。
America will prevail , God bless Amerika.
私は、2点で気になりました。
一つはprevailという単語の使い方です。
私はprevailを「広く伝播する」という意味で理解していました。
実際には、「勝利する」という意味でも使われるということを知りました。
それから20年間、prevailという単語が「勝利する」という意味で使われている光景に度々出会いました。
確かに、アメリカが勝てば、アメリカの影響力が広く伝わるという意味で、根幹では意味がつながっていると思われます。
もう一つは、God bless America. という表現です。
「アメリカに神の御加護を」という意味ですが、この神がキリスト教の神であることは間違いありません。
ブッシュ大統領は熱心な保守派のキリスト教信者で、マスコミからは「キリスト教原理主義者」と評されるほどです。
一方のタリバンは「イスラム教原理主義者」と言われています。
つまり、この戦争は、「キリスト教原理主義者」と「イスラム教原理主義者」との戦いなのです。「キリスト教の神様」と「イスラム教の神様」が対立しているのです。まるで中世の十字軍を思い出させます。
God bless Americaという言葉を大統領が口にすることには大きな意味があります。
アメリカでは、ブッシュ大統領だけではなく歴代大統領は全員がスピーチの最後にほぼ100%同じ言葉を口にします。
これに対して、マスコミや国民から一切の批判はありません。当然のことなのです。
ところが、「政教分離原則」に厳しい日本では、政治家がこの言葉を口にすることはありません。
首相が同様の言葉を話せば、大きな問題となり、マスコミからの集中砲火の的となります。
日本国憲法には個人の信教の自由が保障されています。
その一方で、政治と宗教は分離されなければならないという原則もあり、日本では徹底的にこれが守られています。
それに比べて、アメリカではむしろ政治と宗教が一体化しています。実際、世界中で見るとそうした国の方が多いように見受けられます。
日本が「政教分離の国」というなら、アメリカは「政教一致の国」と言えなくもありません。
アメリカでは、憲法に、separation of church and state という規定があります。
教会と国家の分離原則です
つまり、アメリカはキリスト教国家ではありますが、特定のキリスト教宗派を支持してはならないということです。
因みに、日本では、憲法で信教の自由が保障されています。政治家一人ひとりがどの宗教を信じていてもかまわないのです。例えば首相が熱心なカトリック教徒であってもよいのです。現実に公明党議員は全員が創価学会員です。だからといって、公明党議員が創価学会に肩入れすることは許されません。
総括的にいえば、「信教の自由」と「政教分離の原則」は分けて考える必要があります。



