コールセンターの応答率を上げるには、何から手を付ければよいのか対策を詳しく解説
コールセンターはユーザーと企業が直接つながることができる組織です。
そのため両者にとってとても大切な組織です。
そんな大切なコールセンターの運営を任されているのは、SV(スーパーバイザー)ではないでしょうか。もちろん、企業内で応対のコンセプトを決定するポジションの方々も重要ですが、意思決定だけではコールセンターは回りませんから。SVの方々が実質的にコールセンターの運営を担っています。
そんな大役を担うSVの方々からよく質問される内容を要約すると大きく2つに整理できます。
限られた時間と人数でコールセンターを回していく必要があり、今対応しなければならない課題が山ほどあります。
時間と人が幾らでも気にせずに使えれば、悩まないけれど、・・・・。
何から手を付ければよいでしょうか??
と云う質問です。
- 業務で大切なのは、効率化??
- 業務で大切なのは、改善??
その質問に回答するとき、目的や目標を伺っています。
あなたなら、どんな目的や目標を実現しようとお考えですか。
コールセンターに求められている業務とは??
既にご存じの方も少なくないと思いますが、経済産業省が製造物責任法に於いて、利用者を含むお客さまと企業の接点となるお客様窓口の設置を義務付けしています。
このお客様窓口に当たる機能が、所謂コンタクトセンターやコールセンターに当たります。
そのため、
コールセンターに求められる業務とは、利用者を含むお客さまとの接点を設置して、お問い合わせ対応サービスを提供する事になります。
ただし、24時間対応を求める記述は無いので、営業日の対応で問題なさそうです。
次に、コールセンターを営業日に開けていれば、コールセンター業務は回るのでしょうか。
営業日にコールセンターを開けてお客さまの問い合わせを受けられるようにしているのは、サービスの提供であって業務ではありません。
サービスを提供するために、人が仕事をしてサービスを提供していきます。
そうです。
サービスを提供するために人が行う仕事を業務と呼びます。
コールセンターを開いて、受付の応対をするためには、
- 応対要員がスタンバイしている必要が有ります。
- 開設時間になったら、受付が開始できるように監視します。
- コール予測に基づく要員配置計画と出勤者数を照らし合わせ、要員の過不足を調整します。
- システムによって、受付が開始されます。
- あふれ呼と設定しているサービスレベルKPIとの差を要員の配置で調整します。
- 応対内容をモニタリングします。
- 起きてしまったクレームの対応をします。
- 出勤希望とデータ集計をしてシフト計画を作成します。
- 予定されているキャンペーン計画に基づき対応計画を進めます。
- 定時に受付終了を確認します。
- 一日の概要をセンター長などに報告し、了解が得られれば終業します。
などの業務が必要になります。
これらの業務の担当者は、多くの場合SVが担当しているようです。
もう気づかれましたか。
冒頭でSVの方から質問される①効率化??や②改善??に取り組んでいる項番が見当たりません。
そうです。
SVの方々は、これらの業務に取り組みながら、同時に①効率化や②改善を考え、遂行しています。
以前、センター長から呼ばれたとき合わせて優秀なオペレーターAさんも同時に呼ばれました。
自分は、コールセンターの所属ではなく、メーカーのシステムエンジニアですから何の相談かと思いながら集まると、
センター長
自分に優秀なオペレーターAさんを指して、そろそろ優秀なオペレーターAさんにSVになってもらいたいけれど、どう思うと意見を求めてきました。
自分
モニタリングやオフサイト(役職や立場などを無くす)ミーティングなどで、取り組み姿勢や実力などを知っているので、センター長の意見に賛成しました。
優秀なオペレーターAさん
SVへの推薦は嬉しいが、先ほどの業務は荷が重くて担当する自信が無いと回答。
自分
無理もないよなー。
センター長
コールセンターの中の業務をすべて一人で担当するわけではないから、やってみないか。
優秀なオペレーターAさん
分かりました。
日頃管理されているKPIなどの見直しを含む効率化と改善に取り組めるのなら、お引き受けします。
となり、センター長も優秀なオペレーターAさんから出た要望を飲むことでSVになってもらいました。
すぐに、センター長の推薦でSVになった優秀なオペレーターAさんと打ち合わせを行います。
Aさんは、オペレーター時代に日々管理されているKPIについて疑問を持っていたようです。
注 : KPIとは、《key performance indicator》の略称
https://dictionary.goo.ne.jp/word/KPI/
コールセンターに於けるKPIは主に、CTI(ACD)システムにログインしている人数や話し中人数、待ち呼時間や人数などの件数や時間を指す場合が多い。センターによっては、目標達成までの経過をKPIにして管理しているところもある。
- KPIって、誰が決めているの??
コールセンターがシステム化された1990年代当時のお客様窓口は、企業内の部署に分散されていて、黒電話で各部署の人たちが応対していました。架けてくる電話番号を相手に通知するサービスの普及に合わせて、受付業務を集約して重複をなくしノウハウの集積を高めて組織内で改善や営業に使う目的でコールセンターをシステム化していきました。
コールセンター開始日、今までフロアで鳴っていた電話の呼び出し音が無くなり、ヘッドホンを使って各オペレーターが一斉に話し始めます。
管理者は、受付時間になったことも気が付かない程静かなオープンだったことを思い出します。
この状態では、管理者は何を指針にして改善や報告をすれば良いのか戸惑いました。
この問題はすぐに解決されます。
CTIシステムから採れるACDのデータで、今も使っているKPIの元データが参考になりました。
ただし、ACDのデータは、件数や時間しか取れないので、応対の中身について情報が取れませんでした。
そのため、モニタリングや後に登場する全通話録音などのシステムです。
ただ、コールセンター全件の内容を、報告する流れにはなりませんでした。
よって、KPIを決めたのは、昔のコールセンター長が講演会などで普及して広まりました。
- KPIだけ管理しても意味あるの??
ACDから採れるデータを観ながら管理する意味はあると思います。
しかし、Aさんが疑問に感じているように、現在のKPIだけの管理では、物足りなさを感じます。
KPIは件数や時間ですから、中身が有っての結果にすぎません。
中身の管理が手薄なことに疑問を感じているようでした。
Aさんが云う中身とは、応対時の聴き方、伝え方、考え方の配分や選択肢の選び方、そしてお客さまに伝わる方法だったのか??の管理だそうです。
Aさんは、さらに。
休憩室で聴く愚痴にも、疑問を抱いていたようです。
愚痴とは、こっちが伝えているのに、相手には全然伝わらないんだ。
と相手を悪者にして、攻撃している愚痴のことです。
Aさんが云うには、相手に伝わなければ、伝え方を変える必要があるのに、・・・・。
理解できない相手が、悪くはないのに。と
更に、聴き方、伝え方、考え方をスクリプトに書き残して、どんな場合でも過去の資産として使えると善いと考えている。と話していました。
- KPIの管理って、効率化なの??改善なの??
そもそも多くのコールセンターで採用されているKPIは、件数や時間ですから、このKPIが管理している内容は分かりません。
ただ、定量的な変化を、測定するためには効果的です。
そこで、効率化とは、無駄、無理、ムラを無くす事で効率化を推進します。
この推進活動を改善と呼んでいます。
だから、この3つの頭文字を使って3Mとも呼んでいますが、改善活動無しでは効率化は推進できません。
しかし、例外もあります。
作業の慣れによるスピードアップは、効率化と解釈してもよいでしょう。
そのため、KPIを管理しているコールセンターの中には、改善をせずに作業の慣れによるスピードアップを毎日KPIから計測し、一喜一憂しているコールセンターも少なくありません。
コールセンターの主役はSV??
この打ち合わせ後すぐにSVになったAさんは、改善計画を立てたいと申し込んできます。
Aさんがまとめた、応対の流れ。
- ACDによって、お客さまに込み合っているガイダンスを聞かせる。
- 多くが同じ趣旨の問い合わせなので、一問一答型の応対をしている。
- 問題が解決すると終了。
- 問題が解決しないとき、トラブルになりオペレーターが辞めるきっかけとなる。
- 時々、相談的な要望に応え問題解決を支援する。
と教えてくれました。
如何ですか。
このコラムを読んでいて、この応対の進み方は特殊だと感じますか。
そして、コールセンター業界でも⑤のような応対を奨励していて、優秀な応対事例を表彰している事も分かりました。
先ほどの応対の流れの中の2. の比率は約88%、4. の比率は約9割のオペレーターが離職すると云う報告もあります。
Aさんは、2. 一問一答型の応対スタイルを少なくして、5. の相談的な要望に応え問題解決の支援の割合を増やせば、仲間の離職を食い止められると提案してきた。
Aさんは、冒頭のコールセンター業務にはなかったオペレーターなどの仲間が辞めていく確率を改善していく事がSVの仕事ではないかと、感じ始めたようです。
コールセンターを切り盛り!! 優先するのは効率化?? 改善?
AさんがSVになるまで、KPIの目標を達成する取り組みが、美しい事、善い事と絶賛されていましたが、Aさんが朝礼でSV就任のあいさつで「SVになった自分の業務は、離職者を減らすこと」と宣言をしてからセンターの雰囲気が変わりました。
今まではKPIを基に作業のスピードアップなどの熟練に頼る効率化がメインでしたが、AさんがSVになってからは改善が取り組みのメインになってきます。
しかし、冒頭にあげたコールセンター業務、イコールSVのお仕事は減りません。
そのため効率化の管理を少なめにして、改善業務をその時間に充てるようにしています。
コールセンターのSVは時間が無い、人も限られている!!どうする??
そもそもSVは、コールセンター運営の要で、必要不可欠な人材です。
SVは、なり手が少なく、激務のためオペレーターと同じような高い離職率と云うコールセンターも珍しくありません。
そのため、改善の一部をシステムで実現できないかを検証する実証実験を行わせていただきました。
実施した実証実験の回数は11回。
一回の実証実験で回答が見つからない場合の『考察』は何時もこんな感じでした。
「○○であることが判明した。」
「しかし、○○については特定に至らず、次回の実証実験で解明する必要がある。」と云う感じです。
実証実験の費用は、お客様企業のご負担でしたが、いろいろな事が判明し、現在のノウハウとなっています。
コールセンターの改善には、業務の見直しが必須ですが、人が行う業務をシステムが代行することで業務改善が進むことも分かりました。
業務改善が進むと、KPIなどの対象の見直しと、適正値の再定義も必要になります。
できるSVは、コールセンター業務に優先順位付けする
更にAさんは、損失管理について検証したいと、申し込んできました。
【損失管理】
- 企業のホームページを検索したけれど、購入に至らなかった損失
- コールセンターにアクセスしたけれど、問題解決に至らなかった損失
多くの場合、これらの損失を機会損失と呼んでいます。
損失は、有ったものがなくなる場合で、分母と分子が明確です。一方、機会損失は有るはずだったものがなくなるため、そもそも分母が特定できません。そのため測定が難しい対象として知られています。
【データ集計及び報告】
機会損失を想定する場合、対象となるプロセスに確率を掛け合わせて算出する方法が有ります。
例えば、
コールセンターで働くオペレーターの離職率はある統計によると約9割と云われています。
更に、コールセンター利用者がオペレーターに「要件を聞き出して貰えなかった」と不満を訴えている割合は88%です。
どうでしょうか。
前述したようにこの数字、似ていませんか。
コールセンターの利用者が「要件を聞き出して貰えなかった」と訴えている背景は、
コールセンターで働くオペレーターの多くは、お客さまの要件を聞き出す応対ではなく、質問に答える一問一答型の応対のスタイルだから。
と、因果関係が繋がります。
コールセンターで働くオペレーターの離職率を改善するために立てた仮説は、
一問一答型の応対スタイルを止めて、お客さまの要件を聞き出し提案していくスタイルに変更すればよい。
となりました。
できるSVは、コールセンターの課題を解決する
コールセンターで働くオペレーターの離職率を改善し定着率向上を目標にした実証実験を始めます。
【取り組む課題】
離職率を改善させるためコールセンターの応対のスタイルを一問一答型から要件を聞き出し提案するスタイルに変更するときの必要条件と十分条件を明確化する。
【対象】
- クレーム対応
- 普通の応対
どちらを対象にすべきか悩んだ結果、両方選択して、期待する結果が出なかったら『考察』で言い訳する事となりました。
【実証実験概要】
- 一問一答型で対応できる応対内容を、一週間分の録音データから抽出し、エクセルに問いと回答を作成し、応対時の録音データを基にエクセルを検索しながら応対が回るのか実験。ほぼほぼ、一問一答型の応対スタイルは、エクセルなどのデータベースに問いと回答を入れ込んでいれば、実際の応対で使えることが分かりました。更に、お客さまからコールセンターが想定しない言い表し方でお客さまが回答を求めてくることも分かり、データベースにあいまいな問いでも回答にたどり着くように網羅性を高めていく必要性を見つけました。そして、一問一答型の応対は、繋がりを持たない話の展開にできるメリットもあるが、同音異義語など文脈の中で意味などを推測する場合は、何を指しているのかの追加確認が必要となった。
- SVになったAさんのリクエストで、録音データの中からお客さまの要望を聞き出し提案している事例を見つけ出し、オペレーターとお客さまの会話のやり取りを、ネットのメッセージを使った会話の展開のようにしてエクセルに描き起こし、スクリプトを作成し再現テストを行った。その結果、メッセージの受け渡しの都度、聴き方、伝え方、考え方には幾つかの選択肢が存在し、改善の余地があることも分かった。更に、同音異義語はメッセージをやり取りが進むと、文脈から条件が絞られ選択を間違えることはなかった。そして、スクリプトを使った応対の履歴データは、ある時点まで遡って、ある結果がなんでそうなったのかを探し当てることも分かった。今までクレームだけ受け取っても改善できないと云っていた業務グループの反応もよく、実務で使えるとの評価を得た。ただし、スクリプトの作成や更新の作業は、量が増えるとその何倍も管理が煩雑になり間違えを取り除くとこが出来なくなる欠点があった。
実証実験に参加したセンター長、副センター長、マネージャ、SV、オペレーター全員から、2のスクリプトの効果を高く評価された。
【考察】
スクリプトをコールセンターの応対で使えるように成れば、お客さまの要望を聞き出し提案することで、問題が解決して満足度が高まり、オペレーターへのクレームが減るのではないかと結論付けられた。
しかし、人力でスクリプトを作成し更新を掛けて、実際の応対には使えないという結論になり、スクリプトを動的に操作するシステム開発が急務となった。
コールセンターの応対を変えるスクリプトを動的に操作できるAIを開発
弊社は、コロナ禍で対外的な活動が制限されているタイミングに、前述の実証実験の『考察』で宿題となっていた、スクリプトを動的に操作するAIを開発しました。
概要は、以下の通りです。
【AI機能】
スクリプト動的操作機能
- 人力では煩雑だったスクリプトをAIに管理させます。
応対シナリオサジェスト機能
- 要件を聞き出し、提案を支援します。
気づきメモ機能
- 気づいた瞬間にスクリプトにメモを貼り付けられます。
リアルタイムモニタ機能
- 応対中リソースの好不調をモニタ表示します。
履歴データ取り出し機能
- 過去の応対を遡り検証するデータを出力できます。
【期待効果】
- 正しく即答できるようになります。
- 顧客満足度の向上が期待できます。
- 要件聞き出し、提案ができるようになります。
- 効率/生産性の向上が期待できます。
- お客さまの満足度の高まりで受けるストレスの軽減が期待できます。
- 離職率改善や定着率向上などが期待できます。
【これらを実施するための弊社の取り組み】
- 推進チーム立ち上げを支援します。
- 会話運びモデル(スクリプト)作成のファシリテーション支援をします。
- スクリプトを動的に操作するAIをクラウドで提供します。
- 会話運びモデル(スクリプト)の更新支援をします。
- 再発防止、未然防止対策の支援をします。
今回のコラムは、ここまでです。
スクリプトについて知りたいとか、動的に操作するところを観たいなど、是非お気軽にご相談ください。
追伸.
コールセンターでお客さまとの応対に臨むオペレーターを支援する当社AI人工知能『コーチングエンジンⓇシステム』の応対支援画面について「機能説明が欲しい」とお問い合わせを頂きhttps://activecs.co.jp/news/768.html
に、公開いたしました。
是非、機能説明もご確認ください。
弊社ホームページでも運営課題の解決方法をご紹介しています。
https://activecs.co.jp/
解決方法を仕入れご活用ください。