【第1回】なぜ相続人は相続放棄をするのか?賃貸住宅に残される大きな問題

全花連の花輪隆俊です。
入居者さんの名前が、家賃の一覧に並んでいる。
けれど、その一つひとつの名前の向こうには、毎日の暮らしがあります。
今日は、小さな賃貸住宅の大家さんと、その建物を担当する管理会社の物語です。
ある日の午後、管理会社の佐伯さんに、大家の田村さんから電話が入りました。
「いつもなら声をかけると返事をくれる方が、今日は出てこないんです。電話にも出なくて」
田村さんは、共用部分の照明を確認しに来ていました。
一人暮らしの入居者さんに、設備のことで声をかけたところ、返事がなかったのです。
佐伯さんが状況を尋ねていると、電話の向こうで、田村さんの声が変わりました。
「待ってください。今、中から……『助けて』って、聞こえました」
佐伯さんは、すぐに伝えました。
「この電話を切って、119番へ。住所と部屋番号、今聞こえたことを、そのまま伝えてください。私も向かいます」
田村さんは通報し、指令員の問いに答えました。
佐伯さんは現地へ向かい、到着した救急隊などの対応に協力しました。二人だけで無理に室内へ入ることはしませんでした。
室内の入居者さんは、救急隊によって病院へ搬送されました。
対応がひと区切りした後、田村さんは建物の外で、手に持った電話を見つめていました。
「外出しているだけかもしれないと思ったんです。大げさだったら、悪いかなって」
佐伯さんは、すぐには返事をしませんでした。
自分も、電話を受けたときには、どんな状況なのか分かりませんでした。
「私も怖かったです」
それを聞いた田村さんは、小さくうなずきました。
二人とも、何か特別な力を持っていたわけではありません。
異変を確かめ、助けを求める声を聞き、救急へつないだ。その一つひとつを、何とか進めたのでした。
後日、入居者さんと連絡が取れました。
話の終わりに、その方が尋ねました。
「また、あの部屋へ帰れますか」
田村さんは、窓の下で立ち話をしたことや、廊下で交わしていた挨拶を思い出しました。
「帰ってきてください。お待ちしています」
電話を終えた田村さんが、佐伯さんに言いました。
「あの方にとっては、うちへ帰る、ということなんですね」
大家にとっては、貸している一室。
管理会社にとっては、担当する物件の一室。
けれど、そこに住む方にとっては、帰りたい家でした。
私は、この言葉を大切にしたいと思います。
その後、二人は、今回の対応を振り返りました。
緊急時の連絡先、建物の住所や部屋番号を伝える準備、異変に気付いたときの社内の対応。本人の意向や必要な配慮も確かめながら、見直すことを整理しました。
そして、今回とは別の備えとして、入居者さんに万一のことがあった後のお部屋の対応についても話し合いました。
「そのときになって、誰が何をするのか、初めて調べる状態にはしたくないですね」
佐伯さんが確認を始めたのが、全花連安心サービスでした。
ここは、はっきりお伝えしたいところです。
全花連安心サービスは、異変を検知したり、救急車を手配したりする見守り・救命サービスではありません。今回の物語の救急対応を、安心サービスの効果として紹介するものでもありません。
全花連安心サービスは、「死後事務委任契約」を活用し、亡くなった後のお部屋に関する事務を、生前の契約で任せておく仕組みです。
契約に沿って、解約手続きの支援、室内清掃・特殊清掃、残された家財の処分、原状回復としての完全消臭、鍵の返却までを支援します。
大家さん・管理会社さん・入居者さんの三者とも、導入費・維持費は0円です。
ただし、実際の作業費や保険料まで、無条件ですべて無料になるという意味ではありません。家財保険への加入を前提に、契約や保険・保証の補償範囲、限度額、支払条件などの確認が必要です。導入には、大家さん・管理会社さん側で全花連と紹介代理店契約を結ぶなどの手続きがあります。
日々の暮らしを支えること。異変を救急につなぐこと。万一の後の対応を準備すること。
それぞれの役割を確かめ、必要な支えをつないでいくことが大切だと考えています。
対応を振り返った日の帰り、田村さんは、入居者さんの部屋の前で足を止めました。
いつもの挨拶が、また交わせる日を待っていました。
「おかえりなさい」
その言葉を言えるように。
そして、万一のときにも、ご本人とご家族を大切に扱えるように。
大家さんや管理会社さんが、すべてを抱え込まずに備えられる仕組みを、全花連は丁寧にお伝えしてまいります。
全花連 花輪隆俊
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