温泉や湯治で腰痛・ヘルニアに効果的な入浴方法
日本には古くから温泉を利用した湯治という療法があり、各地に湯治場と呼ばれる湯治の宿が存在しています。
そこには行楽目的とは違った温泉の魅力があります。心や体が弱ったなと感じた時、たまりきった日頃のストレスや疲れを癒やしに出かけてみたい場所です。
今回はそんな湯治の歴史に触れ、湯治の効果効能についてお話しします。
長い歴史のある湯治と現代の湯治文化
湯治の歴史は古く、戦乱の世には負傷した兵士が傷を癒やし、江戸時代の農閑期には農民が体の疲れを癒やすなどして、庶民にも普及していったといわれています。
お湯の評判が広がると、どの温泉地にも徐々に湯治客が訪れ人気を集めるようになりました。自由な旅が許されない時代ながら、湯治旅であれば公認されたという背景もあります。
江戸初期の医師、後藤良山は「浴すれば腸内やわらぎ、積気もくつろぎ、食進み出れば治るなり」と説いたそうです。医療技術のない昔、医療に手が届きにくい時代に、湯治は庶民の療養法として浸透し、爆発的に流行しました。
明治、大正、昭和、平成、そして令和へ。時代の変遷とともに医学は進歩していきました。生活様式も様変わりし、今では現代風の湯治文化となって受け継がれています。
医学的・生理学的研究の進んだ現代。化学的根拠の解析によって優れた効能が示された温泉を、国は国民保険温泉と指定しています。
いろいろな作用が得られる湯治の良さ
温泉には大きく分けて3つの作用があると言われています。
【1:浮力・水圧・温度(物理的作用)】
人体の比重はおよそ1.036で、温泉につかることにより体重は約20分の1以下の無重力に近い状態になります。
浮力を受けた状態になると筋肉が緩み、関節に負荷がかからなくなります。筋肉や関節に障害のある人、神経麻痺やリウマチといった運動機能に障害がある人も、楽に体を動かすことが可能で、浮力による機能回復、リハビリテーション効果が期待できます。
また無重力に近い状態が、血栓を溶かす作用を強める働きをもたらします。
水中では全身に水圧がかかり、体表面の血管が圧迫されて血液がたくさん戻っていきます。この時、肺の横隔膜が圧迫されて呼吸数がアップすることにより、心肺機能が向上します。
1℃の体温上昇で、人間の免疫力は500~600%もアップすると言われています。熱いお湯は交感神経を刺激し、神経系や循環器系に良い作用があります。
浮力や水圧、温熱は、凝り固まった体をほぐして筋肉をリラックスさせます。血流がよくなり毛細血管まで血流が十分に行き渡るなど、細胞の新陳代謝を促します。
【2:温泉に含まれる成分(化学的作用)】
温泉のお湯には、さまざまな成分がイオン化した状態で含まれています。二酸化炭素・食塩・石膏・アルミニウム・硫黄・微量の放射能などの含有成分がある温泉に入ると、皮膚を通し、体内にその成分が吸収されます。
【3:転地効果(自律神経の正常化作用)】
自然に囲まれた環境の中で味わう、ゆったりとした非日常体験から生まれる心身の解放感。この心理的作用は大きく、さらに温泉入浴によってリラックス効果が高まり、自律神経の正常な作用が期待できます。
自律神経の乱れから、心や体に支障をきたしている方は多いようです。自律神経を整えることで自己回復力も得られます。
これらの温泉作用を得るために長期間滞在するのが湯治です。なお、泉質の持つ効能と温浴による効果が、どのように作用するかは人それぞれに違いがあります。
湯治の効果効能
効果効能は温泉の泉質によりさまざまです。
温泉に含まれる化学成分や温度、液性(pH)、色、匂い、味、肌触りなどは、それぞれに特徴があり、温泉では成分表示が義務付けられています。
泉質は10種類に分類することができます。医学的に作用し、効果を得られることを効能と言います。泉質別に効果効能を見ていきましょう。
【1:単純温泉】
肌触りが柔らかく刺激が少ないのが特徴です。アルカリ単純温泉は肌がすべすべになります。自律神経不安症・不眠症・うつ状態に効果があります。
【2:塩化物泉】
日本に多い泉質で塩分が主成分で、切り傷・冷え性・鬱状態・皮膚乾燥症に効果があります。
【3:炭酸水素塩泉】
主成分は炭酸水素イオンで、切り傷・抹消循環障害・冷え性・皮膚乾燥症に効果があります。
【4:硫酸塩泉】
主成分は硫酸イオンで、切り傷・抹消循環障害・冷え性・皮膚乾燥症に効果があります。
【5:二酸化炭素泉】
日本には少ない泉質ですが、全身に炭酸の泡が付着するので、泡の湯と呼ばれることもあります。切り傷・抹消循環障害・冷え性・自律神経失調症に効果があります。
【6:含鉄泉】
温泉がわき出して空気に触れると赤褐色になるのが特徴です。飲用すると鉄欠乏症貧血症に効果があります。
【7:酸性泉】
日本各地にある温泉で口にすると酸味があり、殺菌効果もあります。アトピー性皮膚炎・糖尿病・表皮化膿症に効果があります。
【8:含よう素泉】
非火山性の温泉に多く、時間の経過で黄色になります。飲用すると高コレステロール血症に効果があります。
【9:硫黄泉】
日本に多い泉質でタマゴの腐敗臭に似た特有の臭いがあります。アトピー性皮膚炎・慢性湿疹・皮膚化膿症に効果があります。
【10:放射能泉】
ラドンを含み、極微量の放射能が認められますが人体に良い影響を与えることが実証されています。痛風・関節リウマチなどに効果があります。