53.【超・実践編】リピート率10%の崖っぷち美容室を救った、LINEを使った「おもてなしの設計図」

森和吉

森和吉

はじめに、こんにちは。株式会社吉和の森の森和吉です。

前回(第52回)は、問い合わせ急増によりパンクした町工場が、社長の商談を「動画マニュアル」にすることで現場をスタッフへ権限移譲し、未来の戦略のための「時間の余白」を生み出した仕組み化の舞台裏をお話ししました。

さて今回は、ガラリと趣向を変えて、一般のお客様を相手にする「BtoCのリアル店舗」の実践事例をお届けします。

舞台は、激戦区に出店したものの、新規クーポン目当てのお客様ばかりでリピート率がわずか10%と低迷し、毎月の広告費の支払いで赤字寸前だった「ある個人の美容室」です。この崖っぷちのサロンが、第24回第38回でお話しした「デジタルとアナログを掛け合わせたおもてなし」を実践し、どうやって地域No.1のリピート率(75%超)の繁盛店へと生まれ変わったのか。その生々しいプロセスを公開します。

間違いだらけの対策:技術の安売りとDMの送りつけ


私が相談を受けた際、オーナー兼トップスタイリストの男性は、「やっぱり価格が高いんですかね……。もっと割引クーポンを出さないとダメでしょうか」と悩まれていました。さらに、リピートを増やすために、お店のこだわりを詰め込んだ分厚いダイレクトメール(DM)を全員に郵送していたのです。

しかし、これは2つの意味で間違っていました。
1つは、価格を下げれば下げるほど、次も安い店を探す「クーポンハンター」ばかりが集まり、経営が苦しくなること(価格競争からの脱却:第40回)。もう1つは、お客様にとって「全員に同じ内容で送られてくる売り込みのDM」は、ただのゴミ箱行きになってしまうということです。

お客様がお店から離れてしまう本当の理由は、「技術が悪いから」でも「高いから」でもありません。ただ単に、「お店のことを忘れてしまっているから」なのです。

ステップ1:「LINE公式アカウント」を動くカルテにする


そこで私たちが最初に取り組んだのは、前々回(第51回)の町工場の事例と同様、まずは「受け皿の整備(第49回)」です。新規のお客様が来られた際、従来の紙のアンケートではなく、「LINE公式アカウント」への登録を徹底的にお願いしました。

ただし、ただ登録してもらうだけではありません。ここからが「おもてなしの設計図(第24回)」の実践です。

施術が終わったその日の夜、オーナーはお客様のLINEにメッセージを送りました。そこには、定型の「ご来店ありがとうございました」という文章ではなく、「今日カットした髪は、2週間ほど経つとボリュームが出てくるので、ドライヤーを後ろから当ててみてくださいね」という、そのお客様「たった1人のためだけのアドバイス」が書かれていたのです。

さらに、施術中の会話から得たお客様の髪の悩みや好みをLINEのメモ機能(カルテ)に蓄積し、お客様ごとの「個別のおもてなし」を徹底しました。

ステップ2:お客様の「忘れるタイミング」を先回りする


人間は忘れる生き物です。美容室に行ってから1ヶ月も経つと、どんなに満足していてもお店の存在が頭から薄れてしまいます。

そこで、来店からちょうど40日目が経ったタイミングで、自動(または手動)でLINEを送る仕組みを作りました。メッセージの内容は売り込みではなく、「前回のカラーから40日が経ちました。そろそろ根元が気になり始める頃ではないですか? 来週のご予約枠を少しだけ確保してあります」という、お客様の不便を先回りして助ける「アクティブサポート(第22回)」の視点です。

お客様からすれば、自分の髪の状態を完璧に把握してくれている「専属のスタイリスト」から、絶妙なタイミングで声をかけられた感覚になります。「あ、ちょうど行こうと思ってた!」と、他店に浮気することなく、次々の予約が埋まるようになりました。

ステップ3:紹介者に「花束」を贈るアナログの仕掛け


リピート率が50%を超え始めた頃、第47回でお話しした「最強の口コミ戦略」を発動させました。

LINEの中に「お友達紹介カード」の機能を組み込み、ボタン一つでお友達にサロンの紹介を転送できるようにしたのです。そして、実際に紹介で新規のお客様が来てくださった際、紹介してくれた既存のお客様の次回来店時に、とびきりのサプライズを用意しました。

単なる「数百円の割引」ではなく、オーナーが手書きした感謝の手紙と、お客様が好きな香りのヘアオイルを「花束」を贈るような丁寧さでプレゼントしたのです。

この「大切にされた体験」がお客様の心を震わせ、お店の熱狂的なファン(エヴァンジェリスト)へと進化させました。その後、広告費を1円もかけなくても、紹介だけで予約が取れないサロンへと化けたのです。

今回の実践ポイント


この美容室がV字回復できた理由は、特別な裏ワザを使ったからではありません。

  1. LINEを使って、お客様「個人」にフォーカスした接点を作る(第38回
  2. お客様が忘れるタイミングを先回りして声をかける(第22回
  3. 紹介してくれたファンに、徹底的なアナログの感謝を伝える(第24回第47回


デジタルを使ってお客様との距離を縮め、生まれた時間と利益で、人間味あふれるアナログな「人肌感」を爆発させる。リアル店舗のデジタルマーケティングの理想の形が、ここにあります。

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