新規開拓した販路が続かない企業が見落としている、商談の「お断りの声」の価値

奥田邦博

奥田邦博

テーマ:売上

「新しい販路は、一時的には増えるんです。でも続かないんですよ」
法人のお客様を相手にされている経営者の方から、新規販路開拓のご相談をいただくときによく出てくるのがこの言葉です。

展示会にも出たし、テレアポも外注した。
新しいリストも買った。
手は打っているのに、半年も経つと景色が元に戻っている。
そして翌期もまた同じ会議で同じ議論をしている…。

このとき多くの会社が、「もっと動け」「もっと件数を」という方向に舵を切ります。気持ちは痛いほど分かります。私自身、営業の現場で同じことをやってきましたから。

ただ、35年間営業の最前線に立ち、商談の音声に向き合ってきて思うのは、ここで増やすべきは件数ではない、ということです。

「売れない」は症状であって、原因ではありません
私は営業の課題を医療の工程になぞらえて診ています。診察、検査、診断、治療、予防の五つです。
胃が痛いときに、痛み止めだけを重ねても痛みの元は残ります。商売の悩みも、よく似ていると思うのです。

「営業が弱い」「営業が売ってこない」というご相談は本当に多いのですが、私の見立てでは、その多くは症状です。
原因は営業の外側、つまり商品・価格・組織・経営のどこかにあることが少なくありません。

ところが現場では、症状にだけ手当てが繰り返されます。トークスクリプトを作り直す、ツールを入れる、人を採る。どれも間違いではありませんが、原因がそのままならしばらくすると同じ症状が戻ってきます。

私が支援の形を変えたのも、ここに理由があります。
創業から12年、100社以上の企業の営業現場に伴走してきて、最前線で成果が出ても、支援が終われば同じ課題が繰り返される会社をいくつも見てきました。

一時的に売るのではなく、選ばれ、買ってもらえる状態を作らなければ根本は変わらないと痛感したのです。

販路が広がらない会社に共通する「順番」
新規販路開拓のご相談で私が最初に確認することは決まっておりまして、それは「どう売るか」ではなく、「その市場(顧客)は、いま何を望んでいるのか」です。

多くの計画は、どう売るかから始まります。
リストを揃え、トークを整え、行動量の目標を置く。順番としては自然に見えます。

ただ、市場が望んでいることの分析が浅いまま組んだ計画は、実行の段階で苦しくなります。現場は動いているのに数字が伴わない。すると今度は「営業の実行力の問題だ」という話になっていく。私は、この誤診がいちばんもったいないと思っています。

私がこの順番にこだわるのには、原体験があります。

信用金庫に在籍していた二十代の頃、融資先の製造業の経営者に、返済の原資となる売上を作るために新規開拓を提案したことがありました。そのとき返ってきたのが、「そんなに言うなら代わりにお前がやれよ!」という一言です。

外から言うのは簡単でも、現場に立てば話は別だ。

あの一言で腹が決まり、今の仕事につながっています。

だからこそ、机上で立てた計画には慎重でありたいのです。

断りの言葉ほど、正確な調査結果はありません
では、「市場(顧客)が望んでいること」はどこで手に入るのか?私は、受注できた案件よりも受注に至らなかった案件の中にあると考えています。

営業会議の議事録を拝見すると、失注理由の欄にはだいたい同じ言葉が並んでいます。「価格が合わなかった」「タイミングが悪かった」「他社に決まった」。業界も商材も違うのに、この三つでほぼ全部です。

もしこれが本当なら、打ち手は値下げしかなくなってしまいます。ところが実際の商談音声を聴くと、まったく別の景色が見えてきます。

商談の最中、お客様は気を使ってくださいます。「いいですね」「検討します」。そこには社交の言葉が混ざる。しかし、断ると決めた後のお客様は違います。もう買わないのですから取り繕う必要がないのです。

「正直、御社が何屋さんなのか、最後まで掴みきれませんでした」「提案は良かったんです。ただ、社内で説明できる自信がなくて」「実は最初の見積もりの出し方で、少し引っかかっていました」。いずれも、実際の音声に残っていた断りの言葉です。

価格でも、タイミングでもありません。こうした一言を集めて言葉のまま残し、次の一手に変える工程を、私は「営功社の声資産化」と呼んでいます。


営功社の声資産化とは、獲得できた会話と獲得できなかった会話を分析し、営業と経営に使える材料へ変換する工程のことです。

ただここまでの話なら、「声を集めるならアンケートでとればいいのでは」という見方もあると思います。しかし私はアンケートを診ません。利害の懸かった商談の反応だけを診ます。答えても損をしない場所で出た言葉と、取引が懸かった場で出た言葉とでは、精度がまったく違うからです。

「一般論」ではなく「御社ならでは」を設計する
集めた声は、そのまま受け取りません。声の温度、その奥にある感情、そして商談のどの段階で足が止まったのか。この三つの軸で分けていくと、原因が営業にあるのか、商品か、価格か、それとももっと奥にあるのかが見えてきます。

そのうえでお渡しするのが見立書です。見立書とは、何が起きていたかという事実、なぜ獲れなかったかという分析と見立て、次に何をするかという処方。この三章で構成した、営功社の診断書のことです。

ここで大切にしているのは、一般論に落とさないことです。「業界的にはこうです」で終わる話の中に、その会社ならではの答えはありません。私が探しているのは、御社にしかない芯のほうです。

日本の商談には、もうひとつ厄介な事情があります。
断りの言葉と、本音との距離が遠いのです。「検討します」「タイミングが…」。本音は建前の内側に、丁寧に包まれています。私はこれを包み紙理論と呼んでいます。包み紙理論とは、購買心理そのものは国や地域が変わっても大きく変わらず、心理を包む言葉の厚みだけが違っている、という私の見立てのことです。

包みは破るのではなく、時間をかけて解かせていただきます。そして出てきた芯を、どの市場で・誰に・何を・どう提供するのかというセールスブランドマップに整理し、売り込まなくても選ばれる状態を目指します。

明日から始められる、三つの確認
大がかりな仕組みを入れる前に、今日からできることがあります。私が経営者の方にお願いしているのは、次の三つです。

一つ目は、失注報告の欄から「価格・タイミング・他社」という選択式をやめること。お客様が言った言葉を、そのまま書いてもらってください。

二つ目は、断られた案件の報告を、責める場ではなく「よく持ち帰った」と労う場にすること。断られた場は、痛いものです。その痛さを個人の根性に預けている限り、声は集まってきません。

三つ目は、集まった断りの言葉を、月に一度、経営者ご自身が読むことです。この三つ目がいちばん効きます。断りの言葉の束は、市場から見た自社の姿をどんな調査よりも正直に教えてくれるからです。

もう一つ、初回商談の録音を一本だけ聴いてみてください。営業とお客様のどちらが長く喋っているか。お客様の言葉の数は、後半で増えているか減っているか。この見方については、コラム「アポは取れるのに、受注に至らない。その間で何が起きているのか?」(https://mbp-japan.com/tokyo/salesbranding/column/5231089/)でも詳しく書きました。

まずは、一本の録音と一件の声から
そして、その最初の一歩そのものを担うのが、営功社の1.5商談です。営功社の1.5商談とは、アポイント獲得と本番商談の間に踏み込み、日程調整で終わらせずに、相手の本質的な課題と温度感まで掴んでくる工程のことです。

新規販路開拓は、行き先を増やす作業ではなく、選ばれる理由を増やす作業だと私は考えています。御社が市場(顧客)にどう映っているのか。その調査・分析・評価・対策を、私と一緒に始めてみませんか?

東京都杉並区の株式会社営功社では、営業ブランディング設計士の奥田邦博が、営功社メソッド(1.5商談・声資産化・売上直結ブランディング)で伴走しています。まずはお気軽にご相談ください。https://eiko-sya.co.jp/

まとめ
売上の悩みの多くは症状であり、原因は市場(顧客)との間に生まれたズレの中にあります。そのズレは、断られた一件の声から見え始めるものだと、私は考えています。

・新規販路は増えても、拡大が続かないと感じている経営者の方
・営業体制と営業社員の力を、根本から強化したい経営者の方
・失注の理由が「価格・タイミング・他社」で止まっている企業の方

ご相談は公式サイトから承っております。
https://eiko-sya.co.jp/

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奥田邦博
専門家

奥田邦博(営業ブランディング設計士)

株式会社営功社

アポ獲得×商談同席支援がセットの「1.5商談」、断られた理由を資産にする「声資産化」、市場(顧客)視点で選ばれる理由を設計する「売上直結ブランディング」。3商品で営業体制と能力強化を実現します。

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