「みんなで大家さん」大阪府が許可取消し処分、遅延188億円の返還問題はさらに重大局面へ【前編】

安東隆司

安東隆司

テーマ:あまり報道されないニュース

7%といった高い配当をTVCM等で謳い、多数の個人投資家から巨額の出資を集めた不動産投資商品「みんなで大家さん」。
これまで、配当停止、出資金返還の遅れ、集団訴訟、税金滞納による差し押さえ、さらに成田開発計画の見直し要請など、問題は段階的に深刻化してきました。
そして2026年9月1日、大阪府は「みんなで大家さん」の事業を行う主体である都市綜研インベストファンド株式会社に対し、不動産特定共同事業にかかる許可の取消し及び指示処分を行ったと正式に公表しました。

このたび、不動産特定共同事業法の規定に基づき、以下のとおり許可の取消し及び指示処分を行いましたのでお知らせします。 引用:大阪府 2026年9月1日「不動産特定共同事業者に対する処分について」

これは、これまでの返還問題が、単なる「遅延」や「資金繰り悪化」の話ではなく、事業継続そのものが制度上問われる段階に入ったことを示すものと考えられます。

返還問題から、事業許可そのものが問われる局面へ

今回の大阪府公表資料では、被処分者は都市綜研インベストファンド株式会社、処分年月日は令和8年9月1日、処分内容は不動産特定共同事業にかかる許可の取消し及び指示と明記されています。

ここで重要なのは、今回の処分が「販売会社への注意」ではなく、実際の許可事業者そのものに対する取消し処分である点です。
投資家から見れば、販売段階の説明や広告の問題にとどまらず、事業の制度的な前提そのものに重大な影響が生じたと受け止めるべき局面だといえるでしょう。

もっとも、大阪府の公表文には、許可を取り消された場合であっても、すでに締結した不動産特定共同事業契約に基づく業務が結了していないときは、その業務を結了する目的の範囲内で不動産特定共同事業者とみなされる、との記載もあります。
つまり、形式的には「許可取消し」であっても、直ちにすべてが完全に消滅するというより、未了業務の処理は残りうるということです。
ただし、それでもなお、新たな意味での事業継続の前提が大きく揺らいだことに変わりはありません。

突然の話ではなく、兆候は以前から積み上がっていた

今回の処分は、まったく予兆なく出てきたものではありませんでした。
これまでも筆者は「みんなで大家さん」を巡る問題は、単なる分配金の遅れでは終わらない可能性があると発信し続けてきました。
実際、2025年には、成田空港周辺の開発計画を巡って、成田国際空港会社が賃貸借契約の終了を表明し、その理由として、事業者に残りの造成工事を遂行できる能力があると確認できなかったと報じられています。

また、出資者約1200人が約110億円余の返還を求めて大阪地方裁判所に提訴したことも報じられており、返還問題はすでに司法の場へ移っていました。
さらに、税金滞納による差し押さえや、成田プロジェクト関連口座の残高減少など、資金管理の深刻さをうかがわせる事実も次々に報じられてきました。

こうした流れを振り返れば、今回の許可取消し処分は、突然の出来事というより、積み上がってきた問題に対して、行政が重い処分に踏み切ったとみる方が自然です。

大阪府公表資料が示した、約188億200万円の返金遅れ

今回の大阪府公表資料で、特に重く受け止めるべきなのは、別紙に記載された資料の内容です。
そこでは、満期を迎えても返金が遅れている商品が「償還遅延商品」として列挙されています。
9商品が列挙され、各商品の償還期日、事業参加者数、償還遅延金額が整理されています。

(引用:大阪府 2026年9月1日「不動産特定共同事業者に対する処分について」別紙「処分内容及び処分理由」)

合計欄では、事業参加者数は7,511名、償還遅延金額は18,802,000,000円とされています。
つまり、返金が遅れている金額は約188億200万円にのぼるということです。

返還問題が一部の商品、一部の参加者にとどまらず、かなり広い範囲に及んでいることを、行政資料そのものが示しています。
この一覧を見てもわかる通り、問題は単発の商品事故として片付けられるものではありません。
複数の商品で満期後の返金遅れが発生し、それが多数の事業参加者(出資者)に及んでいることが、公的資料で示されています。

「返せるか」だけでなく、「事業の前提が成り立っていたのか」が問われる

これまで「みんなで大家さん」を巡る報道では、「分配金が止まった」「返金が進まない」といった、いわば結果としての資金面が注目されがちでした。

しかし今回の大阪府処分とその資料を見ると、問われているのは単なる支払いの遅れだけではありません。
そもそも、この事業はどのような前提で成り立ち、どのような管理のもとで継続できると考えられていたのかという、より根本の部分に視線を向ける必要があると感じます。

投資判断に影響した広告媒体の責任はゼロなのか?

もう一つ考えておきたいのは、こうした商品がTVCMなどを通じて広く認知されていた点です。
もちろん、広告を放送した媒体が、個別商品の安全性や返還可能性を保証するわけではありません。

しかし一方で、視聴者・投資家の側に「テレビで放送されているのだから、一定の信頼性があるのではないか」という安心感を与えやすいのも事実でしょう。
だからこそ、広告を出す企業だけでなく、広告を受け入れる媒体側にも、社会的影響の大きさを踏まえた慎重さが求められるのではないかと感じます。

同時に、投資家の側にも、広告されていることと、投資対象として妥当であることは別問題だと見極める金融リテラシーが欠かせません。
高い利回りや分かりやすい宣伝文句に安心するのではなく、資金の使途、換金性、リスク説明等の商品の中身まで確認する姿勢が、これまで以上に重要だと考えます。
投資家にとって重要なのは、利回りの高さだけではありません。

いつ、どのような原資で、どのような資金管理の下で償還や分配が行われるのか。
その説明が十分だったのか。 そして、事業の前提に現実性があったのか。
今回の処分は、そうした根本論点を改めて浮き彫りにしたといえるのではないでしょうか。

返還遅延の問題は、事業継続そのものが問われる段階へ

2026年9月1日の大阪府による公表を経て、「みんなで大家さん」を巡る問題は、単なる返還遅延の段階から、事業許可の取消しという重大なフェーズへ進みました。
公表資料でも、償還遅延商品が9商品、事業参加者数7,511名、償還遅延金額約188億200万円と整理されており、問題の広がりが示されています。

後編では、こうした行政処分の重みを踏まえつつ、差押え等を受けている資産の状況や、投資家保護の観点から見えてくる論点について、さらに整理してみたいと思います。

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安東隆司(投資顧問)

おカネ学株式会社 Reliable Investment Advisors Japan Co.,Ltd(英文名称 略称 RIA JAPAN)

富裕層の資産の管理や運用、承継などを行う。売買手数料0などお客様と利益相反の少ないサービスを追求。また、海外ETFを中心とした資産形成の知識・経験が豊富。テーラーメードの投資助言を大切にしている。

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