社長の力量が足りないと社員は育たないのか? (3/3)
組織マネジメントにおいて、「動機づけ」が必要な場面は多々あります。意欲の高い社員はすぐに行動に移しますし、困難な課題にぶつかっても諦めずに知恵を絞ります。言われたことだけではなく、新しい工夫を試し、プラスアルファの挑戦をします。そんな社員で溢れる企業にしたいと誰もが思いますが、経験に頼っていては実現もままならないでしょう。
「動機づけの基礎理論」を学ぶことで、「人が行動をとる理由を理解する助けとなり、個人や集団の行動パターンを予測することや、必要な行動を促すこと」ができるようになります。また、「自分自身の動機を理解し、自己管理能力を高めること」のマネジメントを担う人にとっては必須のスキルです。
本シリーズでは、9つの動機づけ理論を紹介します。ご自身の仕事において、うまくできていること、できていないことを点検し、改善に結びつけて頂ければ幸いです。
前回は「動機づけ衛生理論」でしたが、今回は「マクレランドの欲求理論」です。マクレランドは、人の基本欲求を「達成欲求、権力欲求、親和欲求」の3つだと主張しました。
二分法(=二項対立。質と量、絶対と相対のように二つの概念に分けたもの)で語られるよりも、3つに分けて示された方が、深みも出ますし、現実社会をより正確に表しているように感じますね。
多くのマネジメントスタイルを診断するツールでは、マネジャーの志向性として、「業績や結果への関心」と「人への関心」に2分するものが多く、権力欲は達成欲と一緒に分類されていたりします。しかし、マクレランドはこれを分けています。
「達成欲求」を持つ人は、「成功による報酬よりも自身がそれを成し遂げたい」という欲求から努力をし、前回よりも効率よくやりたいという欲望を持ちます。これらの人には、「解きがいのある問題」が好物です。
「権力欲求」とは、他人にインパクトを与え、影響力を行使したい、周りをコントロールしたいという欲求です。責任感を与えられることを好み、競争が激しく、地位や身分を重視する状況を好みます。
ちなみに「親和欲求」は、他者と良好な関係を築きたい欲求です。この3つの欲求は誰もが少しずつもっているでしょうが、その強さが違います。
そして、これらの調査の結果、いくつかの示唆が得られています。
(1)達成欲求の強さで職務の業績もかなり予測できる
(2)達成欲求の強い人は自営業や大企業の中の自治的な単位組織のマネジメント、販売部門の職などの企業的な活動で成功している
(3)達成欲求が強い人が必ずしも優秀なマネジャーになるとは限らない(特に大企業では違う)
(4)最も優秀なマネジャーとは、権力欲求が高く、親和欲求が低い
(5)達成意欲は高められる
50年前の調査ですが、今でも通じる部分がありそうです。(4)などはその時代だからそうだっただけではないか?とも感じられますが、現代でも結果を出すために、多少の非情さが必要な場面はあります。(尤もここでいう「優秀なマネジャー」の定義が曖昧ですが)全体の成功のために、目の前の一人に辛い思いをしてもらわないといけない場面、人間関係を損なうリスクがあるかもしれないけど、問題に一緒に向き合わないといけない場面、身近にあるのではないでしょうか?
いずれにせよ(5)はありがたい示唆ですね。これもどんな実験で確かめられたのかを確認しないといけませんが、「達成が人を成長させ、さらに達成意欲を高める」という事例は身近にもたくさんあります。科学的にも達成するとドーパミンが分泌され、癖になることは証明されていますし、達成意欲を高める方法は様々ありそうです。
次回は、来週月曜日の配信です。「目標設定理論」をご紹介いたします。楽しみにしてください。
動機づけ理論のまとめ資料は以下のリンクからダウンロードできます。
動機づけの基礎理論