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「新しい資本主義」における働き方

安澤武郎

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テーマ:経営者向け

岸田政権になり、「新しい資本主義」というキーワードが聞かれるようになりました。「成長と分配の好循環」というコンセプトはとても良いと思います。このコンセプトを具現化するためには、分配を待つだけでなく、成長し稼ぐ力を高めていく人や企業が増得ていくことが大切でしょう。具体的な行動を変える人が少なければどんな改革も実現しませんので、今回は「新しい資本主義」における働き方について基本的なことを書いてみたいと思います。

人は何のために働くのか?


まず「人は何のために働くのか?」という問いから考えてみましょう。基本的な問いですが、若い人にこの質問をすると、「生活をするため」「給料をもらうため」という回答が返ってくることが多いですし、30代になると「家族を養うため」という回答が増えてきます。さまざまな考えがありますが、その根底には誰しも「幸せな人生を生きたい」という願いがあるのではないでしょうか。働いた結果、幸せにならないと働く意味はないでしょう。この幸せの定義も人それぞれで良いのですが、「人を騙しても金を稼げば幸せだ」などと云う誤った考え方では幸せにはなれません。社会の成り立ちを理解した上で「幸せ」とは何かを明確に理解できていると働くパワーも増していきます。

社会の成り立ちは
「①会社から給料をもらう」
「②顧客にサービスを提供する」
「③顧客から対価をもらう」
がどの順番で発生するかを考えると見えてきます。

発生する順番は、
「②顧客にサービスを提供する」
→「③顧客から対価をもらう」
→「①会社から給料をもらう」です。

顧客が必要とするサービスを提供した結果、感謝されたり、給与が増えたり、自分の仕事へのプライドを持てたりします。この自分が提供できる価値を高めていくことが、社会の中で幸せになる道です。自分を必要としてくれる人がいれば人は幸せでいられます。

これは組織集団の中でも同じです。狩猟民族の時代から、狩りをする人、武器を作る人、料理を作る人、服を作る人など、それぞれの人に役割があってその集団の中で存在価値を発揮することが幸せの道になります。「子供」のうちは「与えてもらう」ことになりますが、成長するにつれて「できること」を増やし、最終的には「与える立場」になることが「大人」の存在価値です。価値を発揮することで、尊敬され、感謝され、堂々と分け前を得ることができます。

社員を幸せにする経営とは


「社員を幸せにする経営」とは、「社員の能力を高め、価値あるサービスを生み出し、企業としての存在価値を高めていく経営」と言えます。
あまりにも当たり前の話なので、頭の中を素通りしてしまいそうな話ですが、原則を見失って失敗しているケースがあまりにも多いと感じます。例えば以下の3つのケースです。

(1)顧客第一主義

顧客が求めるものは何かを考え、価値あるサービス提供を追求することは間違いではありません。それこそ人が幸せになる道なのですが、お客様に奉仕をすることばかりが追求されて、社員の人間性や尊厳が蔑ろにされ、道具的扱いを受けるとおかしくなります。社員のエネルギーは失われ、サービスの水準は落ちますし、顧客の期待にも応えられなくなります。「顧客を幸せにする幸せ」を社員が感じられていない企業は、顧客第一主義を標榜しているだけで、自社利益が優先になっていることも多いです。その姿の隠れ蓑として、顧客第一主義を掲げているだけと言えます。

(2)人を大切にする経営

人を大切にしようという意図は素晴らしことですが、労働時間の削減、福利厚生や待遇面の充実、和気藹々と楽しく仕事をすることばかりが追求され、能力を伸ばすのに役立つ新しい挑戦をしなくなると幸せの道から外れていきます。人の能力が伸びなくなり、サービス価値が落ち、顧客の満足度が落ちていくからです。真に「人を大切にする」ためには、大胆に挑戦する機会を持ち、人が仕事を通じて磨かれていくような取り組みをしていく必要があります。

(3)営利企業

利益を生まない企業は存続できませんし、利益を残して安定した経営をすることは社員を幸せにする上でも大切なことです。そのために必要なことは、やはり能力を伸ばして貢献する力を高めることです。環境の変化に対して新しく貢献できるサービスを生み出していくことです。しかし、コストダウンや効率の追求ばかりになると活力は失われます。規模が拡大するにつれ、機能別組織など役割分担を明確にする取り組みがなされます。ここで、効率化の追求や仕組み化の重要性が唱えられ、貢献することよりも効率化が優先されるようになると、活力は失われていきます。効率化では飯は食えません。より大切なことは、顧客の期待を上回るサービスを追求するということです。


好循環

顧客への貢献により業績が向上し、得た利益は貢献した人に還元され、意欲を高めてさらなる貢献を追求する。この循環を回すことで組織のエネルギーは高まっていきます。これが「成長と分配の好循環」の縮図です。顧客だけ、利益だけ、社員だけという偏った考え方にならないように「顧客への貢献が社員の幸せに結びつくメカニズム・社会の成り立ち」を社員の共通認識にすることがスタートです。人を幸せにする力を高めた人が幸せになれるのです。

おまけ

参考までに、2021年10月26日に開催された「第1回 新しい資本主義実現会議」の中で示された「成長と分配の好循環のイメージ」図を添付します。本コラムの内容を参考に読み解いてみると、自分の取り組むべきことも見えてくるかと思います。


成長と分配の好循環イメージ

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安澤武郎
専門家

安澤武郎(経営コンサルタント)

株式会社熱中する組織

どのような組織にも「常識の壁」「アクションの壁」「スキルの壁」「仕事のやり方の壁」「コミュニケーションの壁」「情熱の壁」があり、能力を活かしきれていません。その壁を取り除き、組織を生まれ変わらせます。

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