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安澤武郎

組織変革コンサルタント・マネジメントコーチ

安澤武郎(やすざわたけろう) / 経営コンサルタント

ペネトラ・コンサルティング株式会社

コラム

本年を振り返る(組織経営に関して相談の多かったお題は何か?)

2018年12月5日 公開 / 2020年4月30日更新

テーマ:経営者向け

コラムカテゴリ:ビジネス

本年も最終月となりました。年間の目標達成に向けて最後まで挑戦をすると同時に今年一年を振り返り、来年に繋げていく月だと思います。今年はどのような一年だったでしょうか? 今年の流行語大賞は「そだねー」に決まりましたが、皆さんの一年を一言で表現をするとどのような一年だったでしょうか? そして、来年は何に挑戦したいでしょうか?

 私の周辺では「自律」的に組織運営ができるような挑戦をするお題が多くございました。

 組織の屋台骨を支えるマネジャーは、やる気がないわけでも、怠けているわけではないのだが、タスクが多く、常に時間不足、学習したくとも学ぶ時間がない。じっくり取り組みたいことはあっても取り組む心の余裕もない。皆忙しいために協力し合うこともままならず、一人悩んで時間だけが過ぎていく。目標を達成しても、達成感がない、自己効力感が得られない。などという状況になっていたりしないでしょうか?

 そんな雰囲気は日本のビジネス界、取り分け成長し安定期に入った企業で増えているのかもしれません。日本能率協会が今年10月に実施した「入社半年・2年目 若手社員意識調査」では、「職場内に目指したい上司、目標にしたい人がいない」比率が57%に登っています。成熟市場で生産性の追求による競争は、不安なく挑戦する雰囲気を職場から奪い、ミドルから輝きを奪ってしまったことが原因かもしれません。

 この働く人が輝けるかどうかの鍵は「他律」から「自律」への転換にあります。「自律」とは、「自分のすべきこと=対象」に意識が向いている状態をいい、「他律」とは、自分の評価や報酬など、私欲に関心が向いている状態と定義できます。例えば、会議報告で「自分たちのすべきことを整理し、定めるため」にレポートを活用しているものを「自律」といい、「突っ込まれないよう」に報告の体裁を整えているものは「他律」と言えます。周りの目を気にして、本来すべきこととは違うことをしてしまっていたとしたら、活力は生まれません。

 目標設定をする際にも、自律型の人であれば、「自分のすべきこと」をどこまで実現するかを測るために目標を活用します。KPIの設定を見ればその違いはよく分かります。自分のしたいことやテーマを測るために設定されており、「なぜその指標を見たいのか?」に意図があります。一方、他律的な活動をしている人は、まず目標ありきで意図がありません。どんなに素晴らしい目標設定理論を適用しようと、この前提となる組織の構えが他律であるとうまく機能しません。

 研修に参加する際にも違いが生じます。自律型の人物であれば、自分の仕事に役立てるために参加をする。テーマはどうあれ、その中に一つでも良いのでヒントを探す。研修の間ずっと真面目に受けていなかったとしても、現場の実務で役立つことを持ち帰っているものです。一方、他律的な人物は、「研修を受ける」ことが目的になっているので、「間違わないこと」「恥をかかないこと」が優先し、積極的に疑問を講師にぶつけるということをしません。

 意見や提案の受け止め方にも差が出ます。他律のパラダイムにいる人は、提案を強制的な指示や指摘と受け止めるケースが多く、自己防衛になりがちです。自律的な人は、冷静に提案内容を吟味し、自分のすべきことに役立つかどうかという思考が回ります。そういう姿勢でいると、チームメンバーからの意見も集まりやすいし、建設的なミーティングができます。「部下を自分の思い通りに動かしたい」「部下との議論に勝ちたい」などと、自我(自分の欲)が芽生えると、本来すべきことよりも自分を優先してしまい、自律性を失ってしまいます(判断を誤るケースが多い)。

 経営者であっても株主の要求など、外部の目を気にして、迎合してしまうと企業の自律性が失われます。なんでもオープンにすべきということではないですが、株主をパートナーと捉え、誠実に接することができれば自律性は維持できます。一方、株主を敵と捉え、見せ方に汲々としてしまえば、本来すべきことと辻褄が合わなくなっていき、辻褄を合わせようとすると、社員に無理強いをすることになり不祥事を招きます。

 このように様々な組織課題が生じる原因に「他律」に支配されているという課題があります。「自律型組織」を構築することできてしまえば、多くの問題は自然と解消されていきます。自律的な組織を構築する場合、まずはリーダーが自律することが大前提となります。そして、まず「自律」と「他律」の違いについてチームで共通概念を持つことです。これは、各チーム内で一度話し合ってみるとよいでしょう。各人の理解度に違いはあるでしょうが、無駄な他律の苦しみから脱却するヒントが得られるかと思います。

この記事を書いたプロ

安澤武郎

組織変革コンサルタント・マネジメントコーチ

安澤武郎(ペネトラ・コンサルティング株式会社)

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