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安澤武郎

組織変革コンサルタント・マネジメントコーチ

安澤武郎(やすざわたけろう) / 経営コンサルタント

ペネトラ・コンサルティング株式会社

コラム

昭和のマネジメントと平成のマネジメントのGAPを埋める(2/2)

2018年4月10日

テーマ:マネジメント

コラムカテゴリ:ビジネス

前回は、「人が能力を発揮できる組織」の条件を紹介しました。
では、「そのような組織を作るために自分に何ができるのか?」ということが今回のテーマです。

■そのような組織を作るために自分に何ができるのか?
組織の中で良い仕事をするためには、まず「自分の役割を知る」ことです。そして、その役割を果たすために必要な「行動を取る」ことです。

 下図「3つの立ち位置」は管理職の役割を表現したものです。「部下が課題を解決し、成果を出せるように導く」のが役割で、そのために「方向性を出す」「見守る」「一緒に考える」「やってみせる」などの行動を使い分けるというコンセプトです。


3つの立ち位置


 「課題の難易度」と「部下の力量」に応じて立ち位置を使い分けようということですが、
「『人』ではなく、『問題』に一緒に向き合う」というスタンスが大事になってきます。

 例えば、「上司にリスク情報を報告せず、顧客の信頼を失ってしまった」という問題が発生したとします。このようなケースでは、「報告をしなかった部下(という人間)」を問題として捉え、責任を追及しがちです。しかし、そのスタンスでは心理的安全性は失われやすくなります。

 ここには、リスク情報を報告してもらえなかった上司側の課題もあるかもしれません。そこで、「我々の問題」として、「部下が上司にリスク情報を報告しなかった」という事象に一緒に目を向けるのです。その原因は「上司と部下の関係性が悪い」ということや、「何がリスクかということについての認識GAPがあった」ということがあるかと思います。もしかしたら、「リスクを隠す組織文化がある」ということが原因かもしれません。
 その原因を解消するために、「我々はどのような行動をとるべきか」と、再発防止策を考えることで、問題を解決していきます。ポイントは、「我々の問題」と捉える点でしょうか。
この「責任の追及」ではなく「原因の追究」をすることはマネジメントの基本ですが、分かっていても高いレベルで実践しようとすると訓練が必要です。今一度皆で実践し、組織内に心理的安全性を増やしていければと思います。

 担当者側にも必要な行動を考えて欲しいと思います。上司が解決したいのは「我々の問題」です。担当者は直接的に成果を出す役割を担っています。成果を出すために挑戦をしていれば、うまくいかないことは必ず生じるし、実力が足りない現実に向き合う場面は必ず生じます。そのような場面で上司が期待するのは、「どうしたら問題を解決できるか」と自分にできることを考える姿勢です。問題が難しい時には「現状肯定(自己正当化)」をしたくなるかもしれませんが、それでは一歩も前に進みません。上司からすると、その姿勢が目について「人を責める」状況を作ってしまいます。

 担当者が求められている役割は「挑戦」です。例えば、アメフトの試合で劣勢に立たされている時、チームの雰囲気は暗くなります。そんな時に、1年生がリーダーシップを発揮することがあります。1年生で体もしっかりできていないのに、相手の大きな選手に向かって体を張って突っ込んでいくことがあります。玉砕するかもしれませんが、そのプレーには周りの選手の気持ちを奮い立たせる力があります。仕事でも同じです。能力の高さによって、できることは変わってきますが、実力がなくったって、チームを勇気付ける仕事はできますし、その持ち場で果たせることは必ずあります。「失敗をすること」が問題ではなく、「挑戦しなくなる」ことが問題です。


■継続的な実践
 「心理的安全性」「自己効力感」というと難しく聞こえるかもしれませんが、「風通しの良い組織」「補い合える組織」「反対も賛成も喋れる」「ベクトルのあった組織」などのことです。一度、(このコラムを読んでいない人に)「人が能力を発揮できる組織の条件とは?」というお題を問いかけてみてください。必ずこのような意見が出てきます。
皆、頭では分かっていること、体感的に気づいていることです。

 しかし、多くの企業では、この「分かっていること」を実現することがなかなかできていません。企業不祥事は、この心理的安全性が失われると起きますし、少数意見が潰されると組織変革などできません。どうしたら「人が能力を発揮できる組織」をちゃんと実現していけるのでしょうか? ここをしっかり考えないといけません。
「分かっている」「やっている」で終わらせてはいけません。
 
 先ほどのグーグルの事例を補足しますと、そのような文化はグーグルには昔からあったようです。それが、この調査によって証明されたことで、社内でより意識されるようになりました。毎年社内アンケートで点検されるようになり、マネジャーになった時のトレーニングでも必ず話に出てくるようです。リーダーには「自分と違う意見にも聞く耳を傾けて尊重できるか」という器の大きさが問われています。

 マネジャーは、定期的に自らの組織を点検し、襟を正し続けるべきことなのだと思います。私は「マネジメントは嘘をつかない」ということをつくづく感じます。どんなに良い考えを持っていようが、できていないことについては、必ず組織のどこかに問題として現れます。組織の姿を見て自らの姿を修正していくことに終わりはないかと思います。ハラスメントが問題になっている組織では、「チームワーク」をテーマに掲げ、昨日よりも今日が良くなるように、今日よりも明日が良くなるように、一歩一歩進んでいただきたいと思います。

この記事を書いたプロ

安澤武郎

組織変革コンサルタント・マネジメントコーチ

安澤武郎(ペネトラ・コンサルティング株式会社)

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