思考は現実化する
先日、米金融大手ウェルズ・ファーゴの多数の従業員が
顧客に無断で口座開設やクレジットカード作成をしていたという事件がありました。
この事件の背景には、厳しい営業ノルマがあったということです。
目的を見失って目標を追求してしまった事例です。
東芝やフォルクス・ワーゲンの事例のように、
コンプライアンス違反の事件が目につく時代になりました。
組織の同調圧力だけでなく、株主への説明責任や外部からのプレッシャーもきつくなっています。
株主も企業に不正を働かせて企業価値を下げてしまうことを望んではいないのですが、
結果としてそういう力学が働いてしまっていることに目を向け、
解決の方向性を考えないといけないと思います。
そもそも業績目標を設定するのは何のためでしょうか?
本来は、企業が存在価値を高めていくため、そのスピードを早めるために設定するものです。
目標を達成することが目的ではありません。
あくまでも能力を発揮するため、成長スピードを早めることが目的であって、
目標は道具に過ぎないのです。
市場において資金を集めるためには、
「他の企業以上に成長する(成長しそうに見える)」ことが必要になります。
その信頼を高めるために、「約束した業績目標の達成」を繰り返すことは確かに重要です。
しかし、あくまでも、必要な資金を集めて事業の目的を果たすことが目的であって、
資金を集めて違うことをしていたのでは、誰も幸せになりません。
不正を働くまで追い詰められた社員も不幸ですし、顧客も不幸です。
目論見が外れたときには、事情を説明して理解を得ていくしかありません。
それで信頼が落ちるのは実態が伴っていないからです。
実態を目標に見合う水準にまで近づけることに知恵をしぼることが本来の仕事です。
「目標は必達を前提に向き合っていくことで役に立つものになる」
「必達できなくとも目的に向かってしっかり進んでいれば良しとする」
という考え方をメンバーに体感させ、分からせておくことが大切です。
業績評価をする際に、
「1.仕事の中身もよく、目標を達成した人」
「2.仕事の中身は良いが、成果が足りない人」
「3.仕事の中身は良くないが、成果が出ている人」
「4.仕事の中身も成果も悪い人」
の4つに分類をした場合、
「1」が最もよく、「4」が最も悪い評価になりますが、
貴方の会社では「2」と「3」でどちらを高く評価しているでしょうか?
貴方の会社には、この「2」を「3」より高く評価をする力量があるでしょうか?
評価者が仕事の中身をしっかり公平に評価をできないと実現できないことですが、
会社としてそのような方向性を打ち出しておくことが大切です。
「3」を過大に評価すると、不正が起きたり、逆効果になるケースが多いものです。
安売りで売上目標を達成し、市場の価格帯を破壊しているケースなどは、
価格を維持して販売努力を続けている同僚を欺く行為と言えます。
しかし、人間は弱い面を持っています。
難易度の高い目標を目指す際には、
マネジメント層が目標に対する考え方を啓蒙し、
しっかり目を光らせておくことが必要になります。
稲盛和夫さんがアメリカで工場経営をされた際に、
この考え方を組織に浸透させて成功しています。
アメリカは成果主義というイメージが強いですが、
企業という単位であれば、新たな価値基準を浸透させることも可能なのです。
この目標に対する考え方は、業務の現場でのやり取りを拝見するとよくわかります。(つづく)