日本に住んでいる外国人の葬儀とお墓の許可手続き、メルマガ第235回、2025.6.18発行

折本徹

折本徹

テーマ:過去のメルマガ、85号から

日本に住んでいる外国人の葬儀とお墓の許可の手続き
第235回
2025.6.18発行
<2002年(平成14年)10月創刊>

 梅雨入りしたと思ったら、梅雨の中休みに入ったとのことで、暑い日々が続いています。
外出するときは水分補給を欠かさず、室内にいるときは涼しくして、
熱中症になりませぬよう気を付けてお過ごしください。

今年も、時期に関係なく(古くても)、新聞・雑誌・書籍に掲載された、
外国人にまつわる内容で、興味深い記事を紹介・簡単なコメントや、
このメルマガは、平成14年(2002年)の10月から発行しているので、
過去と現在は、どのように違ってきているのか、の視点で書きたい、
とも考えています。

 
外国人が増えてきますと、亡くなった後のこと、お墓の手当の必要になりそうです。
(亡くなった外国人を、本国に移送することもあります)

日本に永住を希望する外国人や帰化した外国人は、日本で亡くなる可能性が高いです。
当然ながら、葬儀の方法や埋葬方法も必ずしも日本式ではないようです。
(帰化して日本国籍になった外国人は、国籍が変わっただけで、死生観や宗教観はそのまま、はあり得ると思います。)

葬儀の方法については、亡くなった人が信仰する宗教によって執り行うと思います。
仏教では、輪廻転生を信じ、葬儀は次の生への旅立ち、
キリスト教では、死を「神のもとに召される瞬間」とし、葬儀は天国への旅立ち、
ヒンドゥー教では、葬儀は魂の開放の象徴、
とのことです。

埋葬方法ですが、火葬や土葬が一般的に知られていますが、
飯山陽さんの著作の「イスラム移民」(扶桑社新書)に詳しく書かれているように、
イスラム教徒の埋葬方法とお墓が、問題になりつつあります。
日本経済新聞にも報じられていましたが、イスラムでは火葬ではなく土葬とのことで、
信者用墓地の建設を計画しても、反対するケースが相次いでいるようです。

大分県別府市の場合は、墓地建設をしようとして取得した土地が水源地の近くだったので、
土葬をした場合の水質汚染を心配しての反対とのことです。

日本の場合、以前は土葬もありましたが、今は火葬が定着しているので、
地域の住民は、
土葬だと水質や土壌の汚染の不安になってしまいますし、
近隣の土地を買われているという不安や何か漠然とした不安があるかもしれません。

多文化共生の流れがあるとしても、
長年住んでいる地域の人達を不安にさせたり、心配している人が多い場合は、
「多文化共生なのだから我慢して欲しい」
として推し進めることは難しいのでしょうね。

しかし、土葬については、イスラム教の国だけではなく、キリスト教の国もあるようです。
ですので、現在も必要ですし、今後、土葬をしている国の出身の外国人の数が増えていくほど、日本に定着すればするほど必要になってきます。

既に、日本の地方自治体が運営する霊園で、土葬の受け入れもしていることもあるようですが、このような霊園を増やしていくことになるのでしょうね。


墓地の建設ですが、外国人だけで進めるとなると、けっこう大変なようです。
その流れをご紹介します。
宗教法人が墓地を運営することを前提とします。

「港区みなと保健所」の手引きによると
・申請者は保健所と事前相談をするところから開始
・墓地計画を近隣の人達に知らせるための標識の設置
・近隣の人達向けの説明会、事前協議の実施
という事前周知を行ってから、申請します。
細かく進行手順が決められていて、申請者は報告を求められています。

墓地経営の許可の申請書類の作成も大変そうです。
・墓地等経営許可申請書
・見取図
(墓地等の周囲300m以内にある道路、河川、海及び住宅などの位置
並びにこれらから墓地などまでの距離を示したもの)
・施設の設計図及び造成等に関する計画書
(墳墓、ごみ集積設備、給水設備、便所、管理事務所、駐車場、緑地など
に関するもの)
・理由書
(現時点での墓地の供給状況、具体的な必要数、墓地等経営の理由など)
・墓地等の敷地に係る土地登記事項証明書、不動産登記法による地図等
・墓地等の設置に係る資金計画書及び管理運営計画書
(宗教法人規則で規定されている所定の手続きにより承認された資金計画書。
経営年度ごとに墓地等の経営に係る資金の総額が記載。
収入と支出の状況を対比して記載。
管理運営計画についても、法人の意思決定の中で、
経営・管理及び責任体制が明確になっていること)
・宗教法人規則(法12条で定める)
・宗教法人規則に基づく動画い許可申請に関する意思決定を示す書類
・宗教法人の登記事項証明書
・財産目録及び収支計算書(法12条第1項に基づく)
・その地財務状況を確認できる書類(預貯金残高証明書など)
・過去に宗教活動の一環として信者用の墓地等の経営を行った実績
 があれば、その書類
です。

そして、
許可要件として法人格や活動実績、
墓地に関する基準要件を満たす必要があります。
(設置要件、境界、通路、排水、ごみ集積設備、給水設備、
管理事務所、駐車場、緑地など。
土地の所有、河川や海や住宅や学校等から墓地までの必要な距離、
境界は障壁や低木の垣根を設ける、
通路は堅固な材料で築造され幅員が1m以上、
適切な排水路を設け適切に排水するなどの基準があります)

尚、墓地面積が大きい場合、都道府県の条例による許可も必要となることもあります。

上記は、みなと保健所の手引きから抜き出して記載しています。
詳細については、管轄している保健所に問い合わせてください。


宗教法人を前提としていますが、宗教団体が宗教法人の認証を受けるには?です。
青森県庁のウェブサイトの引用です。
わかりやすく説明していますので記載します。

「宗教法人法」により文部科学大臣又は知事から、規則の認証を受けた上で、
法務局に設立の登記をすることが必要です。

県では、規則の認証にあっては、
事前に宗教団体の概要を説明する書類、
当該年度の予算書及び過去3年間程度の決算書の写し等
を提出していただき、
日を改めて宗教団体の代表者等からの相談に応じることになります。

宗教団体は、次の3つを主たる目的とし、礼拝施設を備えていることを必要とします。
○宗教の教義をひろめること
○儀式行事を行うこと
○信者を教化育成すること

宗教団体が宗教法人となるには、さらに主に次の要件を満たす必要があります。
○宗教団体に専任の聖職者がいること
○信者が相当多数いること
○財産目録、収支計算書、議事録、信者名簿等が適正に作成されるなど、
 法人となるにふさわしい団体運営能力が備わっていること
○境内地及び境内建物が分離独立した当該団体自身のものであること

 法人設立の事前相談により宗教団体が法人設立の要件等を備えていれば、
宗教団体の内部手続(設立会議、規則の作成、信者等に対する公告等)が完了後、
規則認証申請の手続を行っていただくことになります。

青森県庁 交通・地域社会部 地域生活文化課 消費生活・公益法人グループ


私は、一連の手続きに関わったことはありませんが、
外国人が宗教団体を立ち上げ、宗教法人となり、墓地を経営するとなると
大変な申請だな、と感じます。

「財政的な事情で今後は土葬を受け入れる」という宗教法人もあると思います。
外国人誘致に貢献するか、はわかりませんが、
地方自治体が運営する霊園で土葬用を設けるのがベターなのでしょうね。

当サイトで、関連が少しあるコラム「外国人宗教家」
https://mbp-japan.com/tokyo/orimoto/column/?jid=1304380

最後まで読んていただきどうもありがとうございました。

このメルマガも、平成14年(2002年)の10月から発行していて、
何気に、24年目に入りましたので、今後も引き続きよろしくお願いします。

過去のメルマガが読めます(85号から)
https://mbp-japan.com/tokyo/orimoto/column/?jid=1300156

このメルマガは、まぐまぐを利用して発行しています。
解除は 
http://www.mag2.com/m/0000097197.htm
よりできます。

VISA・在留資格研究会
行政書士 折本徹事務所
https://mbp-japan.com/tokyo/orimoto/column

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

折本徹
専門家

折本徹(行政書士)

折本 徹 行政書士事務所

日本に住んでいるフィリピン人コミュニティを開拓し、相談を受ける事からスタートしました。その後、中国人、ネパール人、ベトナム人などの外国人、取扱う分野を拡げ、経験を積み、20年以上になります。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

入国管理局の在留資格申請手続きをサポートする行政書士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の申請代行
  5. 折本徹
  6. コラム一覧
  7. 日本に住んでいる外国人の葬儀とお墓の許可手続き、メルマガ第235回、2025.6.18発行

折本徹プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼