追い風のシニアの転職事情を一歩引いて考える

寺田淳

寺田淳

テーマ:再就職・転職


【はじめに】

 最近の新聞やネット記事ではシニア世代の転職市場に追い風が吹いている
という内容の話題が採り上げられています。

 45歳以上の転職が特に伸びたようでそろそろ定年退職といったゴールを
意識し始める世代からすれば追い風の環境と言えるでしょう。

 ですが、実態はどうなのか? 全員に追い風が吹いているのか?
今回はこの点からの紹介記事となっています。

【転職市場の今】

 総務省の労働力調査によると
45歳以上の年齢層での転職者の伸びが目立っています。
さらに転職後に年収がアップした割合も4割に達しているそうです。

 これまでは
(成功する)転職は35歳が上限と言われてきましたが
ここに来て大きな変化が生じているのです。

 転職者の総数はコロナ前の2019年が約353万人、
ですが2024年は331万人で逆に減っているのです、
この結果を見るに転職市場自体が大幅に拡大している
という事ではなさそうです。

 10年前との比較では
35~44才の中堅層は減少しており45歳以上の層が増加してます。
年代別ではトップを占めるのは未だに25~34才の若手層で約76万人ですが
次第にシニア層が増加傾向にあるとのことでした。

 大手の人材各社のデータにもその傾向は顕著に表れており
40代50代の転職者数、あるいは45~60才の年代の登録者数が
前年比で2ケタの伸びなど大きく伸長していました。
中には70代で転職サイトに登録し、就業に至った例もあったようです。

 当然ながらこの背景にあるのは
平均寿命の伸びによる高齢化であり
40代から今の仕事を退職した60代以降の仕事を見据えて
行動を始めているとのことです。

 ここにはいわゆる就職氷河期世代が概ね50代半ばに達し、
そろそろ定年退職や早期退職勧奨、または役職定年等といった
仕事人生のひとつの節目を意識し始めていることも影響しているようです。

 転職が成功した事例には特徴があるようで
管理職経験者の場合ですと成長期の新興産業の会社に
内部組織の確立の必要から求められた事例や、
東京や今の勤務地に拘らずに求められる企業のある地方への
転職も厭わないといった積極的な姿勢によって叶っているよう。
 
 共に求める仕事にマッチした人材を欲しがるといった企業側の要望に
積極的に応えることが出来たからこその好結果と言えるでしょう。

 さて、冒頭で述べた年収アップの事例は
エン・ジャパンの調査によるもので
50代で転職後に年収アップした割合は
2024年で42%となり、2019年との対比では
10%アップという結果だそうです。

 但し、年収アップの業種の大半は、
やはりIT・インターネット系企業で
逆にメーカーに転職の場合は減収になったケースが多いようです。

【終わりに】

 やはり市場が高齢者、シニア世代の転職を受け入れるようになった今でも
その流れに乗れるのは「スキル」「ノウハウ」「経験値」といった
他にはない差別化が図れることが不可欠ということでした。

 この場でも何回も紹介してきたように
自分では意識していない経験値が他の会社、ほかの業種では得難いものであり、
早急に社内組織に取り込みたいものであるかもしれないのです。

 自分でこんな履歴は紹介に値しないと勝手に決めつけないこと
今持っているノウハウは他の業界でも通用するかどうか、通用する業界はどこか
等は自分で調べる積極性の有無でも明暗は分かれるはずです。

 身近な同年代で転職成功例があれば、
羨むのではなく結果を生み出した理由を推察し、
又は直接聞き出す様な行動をしてこそ自分の価値や強みを客観的に把握出来るのです。

 成功している人には必ず成功を招き入れるだけの根拠があります。
うわべだけの追い風のニュースに自分も便乗できるかもといった
ぬか喜びだけは禁物でお願いします。
 

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寺田淳
専門家

寺田淳(行政書士)

寺田淳行政書士事務所

 起業・独立や転職、再就職を考えるシニア世代に対して、現時点での再就職市場の動向や起業する際の最低限の心構えを始め、私自身が体験した早期退職から資格起業に至るまでの経験やノウハウを紹介します。

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