大きく様変わりしたシニア向けビジネス
【始めに】
4年にわたるコロナ禍で
起業・独立関連の相談案件は激減しましたが
ここに来て再就職や転職の相談に関しては
漸く回復の兆しが見えてきました。
ですが、どうも人材を求める企業側と
職を求める人材、特にシニア世代とのアンマッチは
以前より多くなっているような気がします。
今日はこの点についての事例紹介と共に
新たな視点からの仕事探しを考えてみたいと思います。
【復活した対面での営業活動】
コロナ直前の5年前あたりに入社した新社会人は
多くの場合リモートワークや自宅待機などがスタートとなり、
その後も社内勤務は少しづつ始まってもなかなか営業での
「外回り」や対面での商談は復活しなかったとのことでした。
その為、今年の新入社員と入社5年目前後の
(勤続年数だけは)中堅クラスになった先輩営業マンとの間に
営業に関するスキルやノウハウに差がなく、
対面での営業活動を同行して指導出来る直近の社員がいないようです。
さらに急成長中の新興企業においては
「社員教育」を担うはずの総務系の部門も整備が遅れ
過去5年にわたって体系的な研修の開催も不十分なままで、
ここに来てそのツケが問題化しているとも聞きました。
もともと急成長した企業につきものと言える
「社内体制の整備が会社の成長に追い付かない。」
といったケースは少なくないですが、
コロナ禍によってさらに立ち遅れを生じたようです。
老舗企業であろうと、新興企業であろうと、
営業力の強化・拡大はいわば生命線と言えます。
極端な話、現場で先輩の背中を見て倣え、慣れろ
といった現場主導の新人教育が成立しないのが
今までとはニュアンスの違う人材教育の問題となっています。
そうなると企業が目を向けるのは、当然ですが
「過去において営業の最前線での経験が豊富で、
自身のノウハウやスキルを後輩に指導・教育も可能な」
ベテラン営業マンの確保となります。
【過小評価の営業職?】
私のところに仕事探しの相談に来られる方の中には
「営業なら、出来ます。」「営業しか、出来ません。」
という言い方をする方がいます。
私の感覚ではこの言い方は「消去法の結果」
自分が出きるのは営業だけですといった印象を受けます。
どれも自信ないけどその中で営業ならまだ自分でも務まるかも?
こういった印象では採用する側も腰が引けて当然でしょう。
「営業が、出来ます。」「営業なら、自信があります。」
単に言葉のチョイスが違うだけ?と言われそうですが、
こちらの言い回しには「自分の強み」であることを感じ取れます。
営業が出来るということは大きな強みです。
利害の反する得意先を以下に自社に有利な条件で取引を制約させるか?
無競争のはずはなく業界内の競合他社との駆け引きや動向の把握や
得意先の業績動向、さらには業界自体の将来予測等など、
多岐にわたる知識とその応用が常に求められる仕事が営業なのです。
無論今の時代、メールは使いこなせて当たり前、
同時にパソコン、スマホの駆使、データ分析、レポートの作成、
など等、デジタルスキルも取得が当たり前です。
取り扱う商品が異なれば細かい部分では営業の独特のルールや
商慣習はありますが、基礎の基礎はどんな業種でも共通するものがあります。
決して「営業しか、」「営業なら、」で済むような仕事ではないのです。
【求人側の思惑、求職側の思惑】
先にも触れましたが、急成長中の新進企業の場合、
商品力で秀でている場合、卓越した宣伝戦略を打ち出すことが
アドバンテージと言うケースは少なくありません。
これに強力な営業力が加われば
一気に業界トップシェアの獲得も夢ではありません。
ですが世の中はうまく出来ていて、
この3つがバランスよく成立している企業は稀です。
大多数の企業はこの3つのうち何か一つ、
あるいは二つが欠けていることが多いのです。
どの分野でも人材の確保は必須ですが、
商品力があっても、宣伝がうまくても、肝心の営業力が欠けていては
せいぜい善戦止まりでしょう。
営業マンを求人している企業にすれば
特に前項で述べたようにプレーイングマネージャーが出来る
ベテランクラスの補充は喫緊の問題です。
現在40代、50代の世代への関心も高まっていると聞きます。
特に平均年齢が20代後半から30代といった若い会社ほど
この世代との接触機会が無きに等しく、効率的なアプローチに
苦労しているようです。
他にもあろうことか、企業自身が弱腰で
どうせウチのような新興企業には元上場企業出身のベテランなんて
募集しても歯牙にもかけてくれない(はず)
と、最初から戦意喪失といったケースもあるようです。
これに対応するはずのシニア世代の営業経験者は
未だに、いえコロナ禍を経験してからさらに「寄らば大樹」
の思考が再発したようで、業界でも大手、老舗への就職に
血眼になっているのが実状のようです。
加えてこの世代でも未だに「世間体や見栄」は根強く、
さらに加えれば、今迄担当してきた商品、活躍してきた業界に
無駄に固執しがちです。
もうひとつは、前職の職場で役職定年や再雇用で
これまでその部署を仕切ってきた元管理職が今では元部下だった
管理職の下でこき使われるといった体験をしたケースです。
特に「腕に自信アリ」を自認し、周囲からも評価されてきた
実力ある営業経験者に関しては、この傾向が顕著です。
こんな若い会社、たぶん皆自分より年下、
下手をすれば子供と同じくらいの年齢の「上司」に
仕えることになるのでは? 記憶に新しい元管理職の悲哀を
自分も、それも再就職先で味わうなんて御免だ!
こういうネガティブな想像をするのもやむを得ないかもですが、
前職は周囲のメンバー全員が長い付き合いでこれまでの経緯を知ってる
中での上下逆転だからこその悲哀です。
白紙の職場で白紙のメンバーとの関係なのですから
前職での経験と同じことが繰り返されると考えるのは早計でしょう。
こうした結果、
門戸を開く企業と門前で足踏みしているシニア世代といった
アンマッチが生じているのです。
【再考したい寄らば大樹志向】
大前提として、営業職に前向きであり適性を自認している方、
こういう方に対しての私の考え方を述べてきました。
如何でしょうか?
現在既に再就職、転職活動に従事されている方も、
これから数年後には現職を離れることを考えている方も
自分の能力に自信のある方はどちらの選択をするでしょうか?
やはり安泰な老舗企業で、慣れ親しんだ同じ業界で…
といった感覚もよく分かります。
ですが、貴方が選択し、目指している先は
本当に「寄るべき大樹」なのでしょうか?
かくいう私自身がオーディオの世界は永久不滅と考え
オーディオメーカーに定年まで骨を埋める覚悟でしたが
技術革新に加えユーザー層のライフスタイルの変化の前に
どんどん時代の波から弾かれてしまい、最後は上場廃止、
自分も定年前に早期退職で「避難」しました。
こういった経験から、今は安泰の業種であっても
今後も今まで同様に安泰、又は発展が期待出来るものかどうかは
自身の責任として精査すべきでしょう。
またも自身の体験談ですが、
いくら優秀な営業力を有し、宣伝力があり、性能的に優れた商品を
世に出したとしても、社会のニーズやウォンツが削減、縮小していては
どうにもなりません。
あるいは過去の記録的大ヒット商品の呪縛を解くことが出来ずに
発想の転換が行われないまま過去の流れから脱却しない商品やサービスを
抵抗し続けるような会社もその将来は厳しいと言えます。
適者生存の法則は企業にも通じるものです。
貴方が就職を目指しているその会社は
社会に求められているサービスを今も、将来も提供し続けられる
成長軌道に乗っている会社でしょうか?
前例に固執することなく、
世間体や見栄からは脱却して
柔軟な考えと行動を始めることが
令和の仕事探しだと私は考えます。
目の前の話題性や一時の好業績や社会的名声に流されることなく
人生100年の後半戦を託せる存在かどうかに絞って検討して下さい。