シニア起業・独立で抑えておきたいポイントとは?
【はじめに】
今や第二の仕事に関する相談は40代前半から。
これが普通の状態になってきたのです。
10年前には全く想像もしなかった事態です。
これと同じく、
60代以上で再雇用や定年延長、関連会社への転籍等ではなく
新たに起業・独立を目指す方も確実に増加しています。
もはや起業・独立は年齢・性別不問となってきたようです。
ですが、第二の仕事に関しては個々の事情もあるのでしょうが、
いろいろな考えが見受けられます。
今日は第二の仕事で何を望むのかを考えてみたいと思います。
【第二の仕事の選択】
多くの場合、第二の仕事も今後の生活の糧となる収入が基準、
収入面でも安定性や現役時とそん色ないレベルを望むでしょう。
この場合の最優先の選択は同業他社や他の業種での再就職です。
さらに欲を言えばそれなりの肩書もあればより満足するというものでしょう。
ですが60代以上となればこの選択肢には最難関の但し書きが付きまといます。
ここでは再就職関連は除外し、起業関連の選択に絞り込みたいと思います。
起業・独立と言っても中身はそれぞれ異なるものが想定出来ます。
・現役時同様の収入確保を目指す「正業」として起業を目指す。
・別の仕事を持っておりその合間に従事できる範囲での起業=副業を目指す。
・複数の仕事を並行しつつ起業し、「複業」の形で起業・独立を目指す。
・年金との兼ね合いでそれなりの収入でいいものの、長期安定を目指す。
会社の承認があれば、の条件付きですが
全て在職中からでも検討を始める事は可能ですし、
さらに本業に支障がなければ、副業や複業でのスタートであれば、
在職中でも稼働させることが出来ます。
よく推奨されるのが「週末起業」からのスタートです。
「慣らし運転」から始める事でこのビジネスが今のニーズに適応し、
軌道に乗るかどうかをテストすることで、即実行での大やけどを防ぐ。
という考えです。
何回も書いてきましたが、
本業に就いているうちですと安定した収入があり、
仮に週末起業や副業的なスタートで芳しくない場合でも挽回の余地があります。
また、当初始めた仕事がうまく軌道に乗っていく中で
思わぬ方向に業務が発展していったり、新たな展開に繋がる等で
結果として本業に匹敵する仕事になったというケースも少なくありません。
次項ではやや特異な例ですが、
これに該当する過去のの事例について紹介したいと思います。
【ニッチな市場での成功例】
ここで紹介するのは、まだ誰もビジネスとして注目しないときに、
いわば「無競争」のタイミングでビジネスを始めたことで成功した事例です。
1)リバイバルブームをビジネスチャンスに
最近は多方面で昭和レトロのアイテムやグッズが注目されています。
このケースは昭和世代には懐かしいおもちゃ(チョロQや筋肉マン消しゴム)
をデッドストック化になっていた地方都市の卸問屋から大量に仕入れ、
都会のマニア層向けに販売することをビジネスとしたものです。
これら趣味の世界では定価などは無きに等しく、
特に限定品や人気の品には信じられない価格で売買が成立するのです。
今ならヤフオクを始めとするネットオークションやフリマ等で
直接の売買が可能ですからこの方式は成立しないでしょう。
携帯もなく、ネット環境も存在しない時代だから成功したのです。
2)新登場の娯楽の将来性を確信してチャンスを掴む
これも昭和の時代の話です。
「インベーダーゲーム」のレンタル展開をブーム直前に始めた事例です。
これも昭和レトロのゲームとしてまた話題になっていますが、
当初は喫茶店の一角にゲーム台が数台設置された程度でした。
これがあっという間に大人気となったのです。
この時ゲームを楽しむよりもビジネスとして捉え、
いち早くレンタル契約をメーカー(代理店?)と結んで、
行きつけの喫茶店に頼み込んで、2台のゲーム機を設置しました。
最終時には複数の店舗に10数台を展開して「荒稼ぎ」したそうです。
当然ながら、開始当初はそれなりの初期費用がかかったようです。
ですがその全額を1か月以内に回収したほどの大盛況だったのです。
彼の仕事は最初は週1回の代金回収で店を訪問するだけでしたが
最後は1日に2,3回回収に出向かなく出はいけない程の「ハードワーク?」
だったそうです…
【成功要因とその後】
前者の場合は当人が昭和レトログッズの収集癖があった為、
人気の動向やマニア間での「市場売価」にも詳しかったのです。
後者の場合も、当の本人が大のゲーム好きで人気商品の動きに敏感でした。
だからこそ、他人の意見やただのうわべからの動向で判断せずに
自分自身の納得のいく検討の結果として成功の可能性を確信したのです。
ちなみにグッズビジネスの方は当時は入社3年目の新人会社員、
後者の方はまだ大学在学中でした。
現在進行形の趣味だったことが、いわゆる二足の草鞋を苦にしなかった。
好きなことだから仕入れの為の遠隔地への日帰り強行軍も苦にならず、
ゲームマニアだったから需要予測をリアルタイムで感じ取れたのでしょう。
ですがさらに凄かったのが、その引き際の見事さでした。
共にその後急速に拡大した競合との間で、売買価格の改定や
ゲーム代のダンピング等を行わず「勝ち逃げ」を達成したわけです。
ここまでの確信を持って始めたサイドビジネスでなくても
予想以上の成功を収めると、どうしても未練が生じます。
あるいは、またピークが来ると勝手な妄想に囚われて時機を失するのです。
儲けを吐き出すだけならまだましで、最後は借金だけが残った!
こんな悲喜劇を迎えるケースの方が多いのではないでしょうか?
さらに前者の方はその後のインターネットの普及に注目し、
新たにネットビジネスの将来性を確信し、ネットショップの運営を始めたのです。
今では脱サラしてこちらのネットビジネスを本業としているようです。
週末起業の流れから、新たなビジネスの芽をつかみ取った訳です。
先行者利益を享受できているうちに新たなビジネスへの転換を図る。
そこまでの視点と覚悟があれば、挑戦しがいのある第二の仕事ではあるでしょう。
【柔軟性のある起業理念】
さて、上記のようなレアケースは別にして、
多くの場合は本業の位置付けで開業するのが一般的です。
「このサービスを普及させることで社会に貢献したい」
「この仕事で地域の発展に貢献したい」
又は
「この分野の先行者として成功したい」
「新しい文化の創造に貢献したい」
等の明確な基準や理念を構築してスタートを切っていることと思います。
さらには「この仕事を終の仕事にしたい」「生涯現役の仕事にする」
といった考えであるはずです。
ですが10年後も当初の読み通りに仕事が推移しているという話は
意外に少ないというのが、私の経験した範囲内で感じています。
簡単に紹介しますと
~起業・独立後に仕事上で繋がった相手から異業種への参入を誘われ、
今ではそちらの方が本業として安定した業績を挙げている。
~士業の資格を取得し本業を開始したものの、ホームページでの
紹介記事の内容が人気を呼び、最終的には書籍出版から評論家に転身した。
~暇つぶしで始めた週末だけ開催した趣味の手芸教室が予想以上の反響で
有料会員制で新たにビジネス展開を図り、今では都内3か所で教室展開中。
など等、口をそろえて
「そんな気は全くなかったのですが」と答えてくれました。
上記の事例は、10年どころか全て起業後3年以内に起きた事例です。
社会情勢の変化に加えて、
自分では想像しなかったニーズとの出会いが当たり前になった今、
10年後も同じ仕事に就いているかどうかは不透明な時代です。
今のコロナ禍を例に出すまでもなく、
過去にはなかった状況がある日突然に発出した場合、
一気に仕事の需要や将来性が揺らぐことは既に証明されています。
起業当時はニーズにあふれていた分野が
5年後10年後も同じ活況を維持しているかは誰にも分かりません。
物販で言えば、
我々の若い世代には「クルマ=自家用車」は必須アイテムであり、
それに伴ってタイヤやカーオーディオ等も必須アイテムとして盛況でした。
それが今では無免許でも全く問題ない時代になりました。
飲食関係ではコロナ禍の影響からの外食の減少で大手チェーン店でも
好立地にも係わらず閉店や統合が止まりません。
私も属する士業の世界は、今やAI普及で消えてしまう職種の代表とも。
副業や小遣い稼ぎレベルでの起業や第二の仕事選びであれば、
今のトレンドや好況な業界への参入でも一定の成果は期待出来るでしょう。
ですが終の仕事にする、シニア世代からの起業・独立を目指すのであれば、
今の仕事と、今後求められる仕事を常に意識する必要があります。
当初の起業理念に固執するべきか、柔軟な対応で修正を厭わないか?
特にシニア起業の場合は許された時間的余裕は限られてきます。
仮に60歳で起業・独立を目指すのであれば、
少なくとも10年後もメシの食える仕事として成り立つかを考えるのは必須です。