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おひとり様シニアの生活費を考える

寺田淳

寺田淳

テーマ:50歳からの人生


【今日のポイント】

 定年退職、雇用延長の期限等で生活面で大きな変化を強いられるシニア世代、
なかでもおひとり様の場合は「その後の生活費」に対してやや楽観的な傾向が
見受けられるようです。

 養うべき家族がいないという身軽さからか、
いざとなれば自分一人くらい何とかなると考えるのでしょうか?

 「その後の生活」以前に、今の生活に関しても、
本当に欠かせない出費と見直すべき出費の分類をしていない、
今後発生が避けられない出費にはどういったものが想定出来るか?

 心身ともに健康なおひとり様ほど、
この点に関しては立ち遅れているようです。

今回はこの点に関してのコラムを紹介したいと思います。

【お金の出入りをチェック】

 
 まずシニア世代にとっての「収入」として考えつくのは
「年金」でしょう。

 既に年金受給が始まった方も多いシニア世代ですが、
念のために書いておきますと、年金は受給額がイコール手取り額ではない。
このことはご存じでしょうか?

 年金からは、社会保険料が差し引かれます、場合によっては税金も発生します。

 ですから年金を生活費の基準に考える場合は、
「受給額」ベースではなく「手取り額」で想定しなくてはいけません。

 次に支出の場合ですが、
意外に増加するのが水道光熱費や通信費の類です。

 仮に、
運よくすぐに再就職を果たし、従来の様に平日昼間は自宅に不在であれば別ですが、
自宅で起業したり、再就職後はリモートワークが常態化となればどうでしょう?

 当然自宅での電気、水道、通信費の使用量は増加します。

 通信費の場合、自宅で過ごす時間が増えたので購読する新聞を2紙に増やした、
今までは会社の新聞が読めたが、退職後はそうもいかずに新たに定期購読を始めた、
といった理由で出費は増加していきます。

 他にも、OBや退職した同期等とのやり取りの為に、新たにパソコンを買った、
ついでにSNSをいろいろ始めたことで、さらに出費が増えるケースもあります。

 仕事や連絡以外にも、
つい興味本位で手を出した余計な有料アプリに嵌ってしまったとなれば、
あっという間に無視出来ない高額請求の発生という事にもなり兼ねません。

 やることがないから、以前からやってみたかったからだけで安易に始める事は、
生活費の見直しは、減額どころか無制限の増額になり兼ねません!

【各種保険の見直し】

 若いころに加入した生命保険の解約、
乗らなくなった自動車の保険の解約などは無駄の見直しとなりますが、
自分の為の保険に関しては、新規契約を検討すべきです。

 例えば医療保険やガン保険は自分の為の保険です。 
さらに自営業の場合、就業不能保険は必須ではないでしょうか?

 おひとり様でも
大半の方は自分の食い扶持を稼ぐために働いていますから、
病気で仕事が出来なくなれば当然収入減や無収入に陥ります。

 TVCMでもやっていますが、
就業不能時の収入保障に備えるのは必須案件ではないでしょうか?

 死亡保険と違って、
がん保険は長引く治療期間に比例して発生する継続的な高額な医療費リスクへの備えとなります。

 備えるべきは「生きている自分自身への保険」だけに絞り込んでもいいでしょう。

 何でもかんでも断捨離、というのではなく、
経年変化に応じた費用負担を分析し、必要なものには相応の出費を覚悟する。

 自分にとって必要な出費には、応分の備えをすることも大切なことです。

【出費の分類と備え】

 さて、想定すべき出費の中には、
「不定期に発生するもの」と「定期的に発生するもの」があります。

 不定期なものには、
前述した医療費関連に加えて、持ち家の場合は
リフォームや修繕費、家電品の修理、買い替え等があります。

 定期的なものとしては、
持ち家であれば固定資産税が、
賃貸住まいであれば家賃に加え、2年毎の更新料などがあります。
他にも共通するものに住民税等があります。

 前者については不意に発生することが多く、
さらに意外に高額になることが多いという特徴があります。

 後者については
「コチラの収入の増減」に左右されることなく、一定額が定期的に発生します。
収入激減だろうが無収入だろうがお構いなしに定期的に発生するものです。

 過去の実績から、
ある程度推定が可能な出費(税金や更新料等)は
予め相当額程度をストックしておかなければいけませんし、
家電品なども平均的な寿命を調べておくことで、
それなりの準備をすることは可能です。(テレビやパソコンの市場売価のチェック等)

 他にも常用するクスリがある場合や、
過去の病歴によっては定期的な検査が必要な場合もあります。

 こういった費用については既に判明しているものですから、
一定額の備えを考慮しておくべきです。
 
 さらに、より大きな決断を迫られるものとして住まいの問題があります。

 断捨離の結果や退職によって、
今の住まいに居住を続けることの是非を考える場合があります。

 今が賃貸住まいであれば、転居を考えてもいいでしょう。
今まで通勤の関係で都心の駅近の賃貸物件で暮らしていたとして、
リタイア後にもそこに暮らし続ける必要があるのかどうか?

 自営業を目指すならもっと適した場所があるのでは? 
再就職の場合でもリモートワークが主体となれば、
通勤時間や距離の問題は今まで程重視しなくてもいいわけです。

 もっと現実的な面では、
収入減が避けられない場合の家賃基準の見直しもあります。
その場合優先すべきは立地場所なのか、部屋数、広さなのか?

 住まいの問題は即断即決出来るものではありません。
十分な情報を入手して慎重に吟味する。
ダメだったからすぐにやり直しがきくという問題ではないのです。

 これまではおひとり様でも現役世代の時は、
比較的容易に賃貸物件を選択可能でした。

 ですが定年後のシニア世代となれば、それがおひとり様となれば、
保証人の問題や孤独死からの死後放置というリスクを恐れて、
今までの様にすんなりと契約成立とはいかないのが実状です。

 最近はこの様な場合に保証人を請け負う会社も増えてきており、
うまく活用出来ればリスク回避も可能と思われますが、
出来る事ならば現役のうちに転居についての考えをまとめておくことをお薦めします。


 おひとりさまに限らず、
定年退職で、または再就職や転職で収入が減少し、
生活費の見直しを迫られるシニア世代は少なくありません。

 ですが、
現状は家庭を持っている場合でも
準備不足や全くの手つかずと言ったケースは意外なほど多く見受けられます。

 配偶者や子供がいてもこの状態ですから、
ましてやおひとり様の場合は自分以外に考え、行動を起こせる存在はいないのです。

 自由気ままな暮らしが出来る反面、全ての責任は自分に課せられる。

 この覚悟を以ておひとりさまシニアは、日々の生活に向き合ってほしいものですね。

 

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寺田淳
専門家

寺田淳(行政書士)

寺田淳行政書士事務所

 起業・独立や転職、再就職を考えるシニア世代に対して、現時点での再就職市場の動向や起業する際の最低限の心構えを始め、私自身が体験した早期退職から資格起業に至るまでの経験やノウハウを紹介します。

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