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寺田淳プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

リモートワーク経験者に聞きました

寺田淳

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【今日のポイント】

 今回は、昨年から自宅でのリモートワークを始めた方にお聞きした内容をまとめてみました。
「案外快適だよ」という声もあれば「もうそろそろ限界が近い」といった悲鳴も聞こえてきます。
 さらに、お話を聞いた中から、ほぼ半年以上にわたって週3日以上自宅で仕事に従事している方の声を中心に採り上げてみました。

 長期間自宅で仕事に従事するということでどういった変化、問題が出てきたのでしょうか?

【良かったという点は】

 まず共通していたのは移動時間や移動に関する悩みが解消されたことでした。これまで1時間以上かかった「遠距離通勤」や近距離であってもラッシュのピークの時間帯の「痛勤」を強いられたいう方は押しなべてこの点について高評価としていました。 さらに通勤時間の苦労が無くなることは出社前・仕事前に既に疲労状態だった従来の始業前のバッドコンディションも解消されたとのことでした。

 次に、個人差はあるでしょうが、多くの会社員の場合、「ユニフォーム」とも言える「スーツにネクタイの定番スタイル」から解放されたことや、革靴を履いて出歩かなくていい点が助かるといった声もそれなりに多くありました。

 また、ランチの際につるまなくていい(ランチくらい一人で過ごしたい)、自分の好みのランチを気兼ねなく選択出来るといった、一人の時間を重視する方も、自宅仕事にメリットを感じているようでした。

 仕事面に関しては、自分のペースで仕事が出来ることや、何となく職場の雰囲気に屈して本当はしなくてもいい残業をしていた惰性の残業から解放されたことが挙げられてます。勤務時間内でもせっかくペースに乗ってきたときに上司や同僚、部下からのアプローチで仕事のペースを崩されることが無くなった点を評価する声が目立ちました。(尤も逆の立場では今まではすぐに周囲に話しかけられたものが出来なくなった点に不便を感じるといった声もありましたが、これはお互い様でしょう。)

 概ね仕事への時間配分やペース配分が自由裁量になったことは、仕事の進捗に関して自己責任が占める部分が大きくなるものの、それ以上の評価をする声が目立ちました。

 他にもレアケースでしたが、自分以外職場の全員がゴルフ仲間、麻雀友達と言った趣味繋がりが強く、業務以外の雑談に溶け込めなく、ある種の疎外感を感じていたという方も却って仕事に集中出来るようになったというケースもありました。

【困ったという点は?】

 これに対し、リモートワークで感じた問題点としては以下のようなものが挙がりました。

 特に管理職と入社1,2年目の新人といった職場の対極に位置するメンバーからの声で多かったのが、職場のメンバーとの日常のコミュニケーションの途絶でした。これは私自身も会社員時代に覚えがあることですが、始業前のひとときや午後のコーヒーブレイク、あるいは終業後の雑談といった短い時間の中で同僚や先輩との雑談で思わぬ発見があったり、気付きを得たことは少なくありませんでした。特にまだ社会人としての経験自体が浅い新人クラスにとっては得難い機会だったと思います。これが自宅で一人で業務をこなす場合、全く体験出来ないことから疎外感や閉塞感を感じ始めたとのことでした。

 対極に位置する職場を束ねる側の部課長などの管理職は、逆に部下の状況の把握が一気に難しくなったと言います。これまでは気になる部下がいた場合には仲のいい先輩や同期に始業前にそれとなく尋ねたり、ランチタイムを利用して直接相談に乗ったりと「感じ取った目の前の変化」に即応することが出来たのですが、リモートではそれは出来ません。この点から今の職場は良好な環境なのか?仕事の配分は適当なのか?といった判断が難しくなり、その結果、上司から自分の管理能力を問われるのではと疑心暗鬼になるようです。

 また係長や主任といった中堅どころの社員にも悩みはあり、これまでは他部署の同期入社の中堅どころや先輩にアドバイスを受けたり必要な情報を聞きに他の職場にふらりと出向いたりと、組織を横断したコミュニケーションや人脈の活用で効率的に業務を推進してきたものが出来なくなったことが痛いとのことでした。
 
「チーム一丸」「全社一丸」といった一体感の欠如は、意外にメンタルに大きく影響するようで、管理職から新人迄全クラスにおいて今の自分の仕事がどう貢献しているのか?どういう役割を担っているのかが不明瞭になることで達成感にも影響を生じているというのです。ある意味、不完全燃焼なまま淡々とこなしている日々、という感覚になったのが非常に気になるということでした。


 仕事以外でも悩みはあるようで、ある会社の労働組合の役員からはこのまま恒常的に自宅勤務やリモートワークが続くようだと組合の維持に大きな不安を感じるとのことでした。具体的には、組合活動に必須の職場集会が開催出来ていません。さすがにリモートで職場集会や支部集会を開催というのは非現実的で他に具体的にどういう形で開催出来るかの目途もたっていないとのことでした。個々の組合員の個別相談にも今までのような対応は難しいとのことでした。


 また、ごく一部からの声でしたが、リモートワークイコール自宅内にいる、連絡は容易に可能という点から早朝や夜更け、果ては休日の昼間に「心配性の上司」から仕事の進捗を問われた、追加の業務をいきなり指示された、職場の問題の有無をしつこく問い質されたといった問題行動があったとのことでした。 これでは24時間上司の監視下に置かれたことと大差ありません。これこそ組合問題となる重要案件です。

【個別の事情で格差発生?】

 他にもリモートワークに内在する懸案事項としては以下のものがありました。

1)自宅の環境によって生じる問題
 これまでは会社の職場に全員が集まって仕事をしていましたから、自宅がどういう環境であろうと職場に出向けば全員同じ職場環境が確保されていました。これがリモートワークによって格差が生じています。例えば自宅に自分専用の書斎があるケースならば、個室での仕事が可能でオン/オフを区分けすることも容易です。
 ですが、パソコンを置ける場所が一家団欒の場であるリビングしかなかったら?さらに同居家族がいる場合、2世代同居や乳飲み子が隣で寝ている、介護者がいるような場合ではオン/オフの切り替えは事実上不可能でしょう。就学児童も休校時には自宅内で籠っているわけで仕事の支障になることは避けられないでしょう。
 この新たな職場環境の格差によって仕事の進捗に差が生じたり、結果に影響が出ないとは言い切れません。最終的な人事評価の際、こういった格差はどこまで配慮されるものでしょうか? 新しい評価基準を設ける必要にも迫られるのではないでしょうか?

2)大規模災害によってリモートワークが出来なくなった場合の対応
 天災等によって一部エリアだけが停電やネット環境の破壊となれば、その地区に居住する社員の仕事はどうするのか? 交通網の混乱を生じている中、強行出社することになるのでしょうか? 

3)副業等との兼ね合い
 最近では珍しくもないサラリーマンの副業解禁ですが、本業だけがリモートワークになっても、副業が従来通りであれば結局副業先への通勤からは逃れられません。他にも資格取得を目指して講座を受講をしている場合や、もっと切実なものとしてかかりつけ医が会社近郊で定期的に診察を受けたり投薬治療を受けている場合等は結局日々の通勤を伴う生活はそのままです。

 今までは通勤に加えて副業従事や講座受講、または通院等の「セット通勤」だったものが講座受講だけ、副業に従事の為だけの通勤となれば、却って非効率的な行動になるのではないでしょうか?

【功罪は相半ば?】

 幸か不幸か、今回の調査範囲では今後も明確にリモートワークを定番化すると明言した企業はありませんでした。リモートワークが定着すれば、毎日の出勤は不要になり、そうなれば通勤の為にあえて都心の狭い住居に固執して暮らすことはなくなります。週1,2回の出勤で済むのであれば、郊外に余裕のある住まいを持つことも可能です。という主張もありますが、先に書いたように副業の関係や各種の受講、通院などの別の案件を抱えていれば容易に今の住まいから移動することは出来ません。 
 独身の私には無縁の話ですが、終日家にいる旦那を奥さんがどう取り扱うかも無視できない案件でしょう。居るだけで奥さんが抱える心身への負担増は馬鹿に出来ませんし、旦那自身も相当なストレスを感じながらの仕事で今まで以上に疲弊するようです(全ての家庭がこうだとはいいませんが)

 会社としても業務効率だけで安易に判断を下すことの無いよう、恒常的な導入を目指すのであればより慎重な事前検証が必要となるのではないでしょうか? 

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寺田淳
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寺田淳(行政書士)

寺田淳行政書士事務所

 起業・独立や転職、再就職を考えるシニア世代に対して、現時点での再就職市場の動向や起業する際の最低限の心構えを始め、私自身が体験した早期退職から資格起業に至るまでの経験やノウハウを紹介します。

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