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親の預貯金はあくまでも親のものです!?

寺田淳

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【今日のポイント】

 タイトルだけを見れば、「当たり前のこと」と思われるでしょう。
ですが、案外この当たり前が当たり前でないケースがあるのです。

 実際に、相談者の方との雑談の中で同居中の子どもがどうも勝手に(親名義の)預金を引き出しているようで悩んでいるといった話題が出てくることは珍しいことではないのです。 特に、他に兄弟姉妹がいる場合で相続が絡んできた場合、このような親子間のおカネの問題は時として刑法に該当するケース(=兄弟間の争い)にまで発展することもあるのです!


【れっきとした犯罪行為?!】

 まずは、いきなりですが刑法の条文を紹介します。

刑法第二百三十五条 :「窃盗」
 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 同居している子供が親名義の通帳や印鑑、キャッシュカード等の保管場所を把握しており、親に「内緒で」「勝手に」預貯金を下ろして自分の又は自分の家族の生活の為に消費したという行為は、立派な「窃盗」なのです。

刑法第二百五十二条 :「横領」
 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。

 親も承諾の上で子供が親名義の通帳や印鑑、キャッシュカードを預かっている場合に、親からの依頼での引き出しだけでなく「親の承諾なしに」自分や自分の家族の生活の為に「上乗せして引出し」したような場合は、条文にある通り、「横領」と見做されます。

 子供にどういう言い分があるかどうかは別にして、上記の行為は「典型的な使い込み」のパターンなのです!

 事実、当初は「相続分の先取りか否か」で兄弟間で協議を続けたものの、物別れにおわった結果、横領罪での告訴にまで発展しかけた事例や、使い込みに気付いた親が、当該の子供に絶縁宣言を下したケースもあるのです。 甘く考えていると深刻な事態になるのです。

【扶助との違いは?】

「扶助」については、過去何度かこのコラムで紹介してきました。 「親の承諾を受けて」一定額を親の預貯金から、「子の日常生活の為の生活費として」引き出す、又は送金するものが「生活費の扶助」となります。扶助の範疇であれば贈与でも横領でもなくなります。

 問題になるのは、「日常生活」の解釈とその範囲です。 世間一般の常識を逸脱するような金額と見做されれば、「生前贈与」となりますし、子供が自身で親の口座から引き出していた場合には「横領行為」と見做される場合があるのです。

 では、世間水準の日常生活とはと言われますと、明確な基準はありません。 これまで朝からフルコースの食事をしてきたという場合なら、その基準までの食費であれば、従来通りの食費の扶助となりますので、贈与でも横領でもありません。

 同様に子供が趣味に使う費用や、子の交際費としての出費の場合でも「扶助」と認められる場合もあったようで、どこまでが扶助なのかの明確な線引きは非常に難しいのも事実です。

 最終的にその支出が「親からの扶助」なのか「生前贈与」なのかの判断を下すのは、あくまでも税務署です。真に生活費の扶助であるならば、その事実を裏付ける証拠(使用実績の記録等)をしっかりと確保しておき、問い合わせの際に即答出来るようにしておくことで無用な疑いを持たれもせず、釈明の為に貴重な時間を無駄に浪費する事も避けられるのです。

【親の側の対応】

 子供を窃盗・横領犯にしない為には、親として入出金履歴を常に把握しておくべきで、その為には記録・保管を意識しなくてはいけません。 仮に記帳忘れや、過去の通帳を既に破棄、または紛失していた場合等であっても「取引履歴照会」を金融機関に依頼すれば過去の履歴を確認することが可能です。

 また、親の側の意向で、特定の子供に定期的に金銭援助をする場合、贈与の証拠を残さないように金融機関の店舗窓口には行かずにATMから引き出すことを選ぶケースがあります。 オンラインで送金すれば手間はかかりませんが、履歴が残ってしまいます。このやり方なら「自分の生活の為に引き出した」という言い訳のアリバイになります。 こうしてタンス預金にしておいて、その都度「可愛い」子供に手渡しすれば、生前贈与とはバレない?

 残念ながら、税務署は甘くはないのです。 ご存知の通り、振り込め詐欺の抑止の意味を込めてATMには監視カメラが常時作動しています。仮に税務署がおカネの引き出し(出金履歴)に疑念を持てば、銀行側に要求して過去の撮影画像を調査します。 これで定期的な引き出しの事実を掴まれます。その後は、徹底的なお金の使途についての追及が始まるわけです・・・

 ~親子だから、まあいいか 
 ~同居してくれている子だから、少しは目をつぶるか…

 ~いずれは(相続で)自分のものになる(おカネ)だから
 ~いずれはこの子の財産になるのだから、先渡しだと思えば…

 ~いつも面倒を看ているからこれはささやかな自分へのご褒美だ
 ~いつも面倒を看てくれているのだから、これくらいは目をつぶるか…

 親と子双方が、それぞれで「都合のいい解釈」をするために自分勝手な言い訳を考え、さして罪の意識もなく上記のような行為を続けていますと、ある日突然とんでもない事態を招いてしまうという事だけは、十分理解しておいて下さい。

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寺田淳
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寺田淳(行政書士)

寺田淳行政書士事務所

 起業・独立や転職、再就職を考えるシニア世代に対して、現時点での再就職市場の動向や起業する際の最低限の心構えを始め、私自身が体験した早期退職から資格起業に至るまでの経験やノウハウを紹介します。

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