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新型コロナウイルス感染拡大にともなう休業などの会社の対応について(解説)

桐生英美

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テーマ:労務管理

新型コロナウイルス感染症については、オミクロン株の流行により、感染者数がこれまでにない勢いで増加しています。

政府の対応にも期待したいところですが、私たち国民一人ひとりの感染予防によって拡大が収めていきたいです。とはいっても、このまま感染が拡大していった場合には、中小企業においても社員の複数が感染者や濃厚接触者になることも想定されます。

そのような場合、どのように対応すればよいのか要点を解説します。

【社員に感染が確認されたら】

1.感染の確認

現在、新型コロナへの感染が疑われる場合(医師が必要と判断した場合に限ります)にはPCR検査は病院でも公費で受けることができます。体調不良の場合には、センターなどを通さず、病院に直接電話をし、診断の上PCR検査を受ける事もできます。

ただし、単に不安だから、といった理由でPCR検査を受ける場合には自費での検査となります。

2.感染が確認された場合の休業の取扱い

体調不良で感染が疑われた場合の欠勤や、感染が確認された(発症した)事による欠勤については、通常の病気での休みと同じように、有給休暇や、健康保険の傷病手当金を利用して休むことになります。なお、雇用調整助成金を利用している場合、感染者に対しては適用できませんので注意が必要です。

もちろん、会社としてコロナ感染に対する特別休暇制度を設けることもできます。

また、コロナに感染し保健所の指導で出社できない期間でも、体調が回復し本人が希望するのであれば、在宅勤務を行うことも可能です。この場合は当然、通常の勤務と同じように賃金が発生します。

【社員が濃厚接触者になったら】

1. 濃厚接触者の定義と認定

濃厚接触者の定義は現在次のように定められています。

(1)患者と同居、あるいは長時間の接触(車内・航空機など)があった人

(2)適切な感染防護なしに患者を診察、看護もしくは介護した人

(3)患者の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い人

(4)その他、手で触れることの出来る距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策(マスクなど)なしで15分以上接触があった人

この定義に該当し濃厚接触者となる方は、感染者の同居人、あるいは飲食をともにした方がほとんどになるでしょう。

会社で席を並べて座っていても、換気を行い、双方マスクを常に付けていたのであれば、通常、濃厚接触者には当たらない事になります。

これまで、濃厚接触者については、保健所から濃厚接触者に連絡をしていました。しかし、オミクロン株の急激な感染増大に伴い、保健所の業務が逼迫したため、感染者自身から濃厚接触者に連絡を入れるという取扱いに変わっている自治体も出てきています。

社内に感染者が出た場合、保健所からの連絡が無いからと安心せず、感染者自身に濃厚接触者の有無を確認する必要も出てくるかもしれません。

2. 濃厚接触者の休業の取扱い

濃厚接触者については、保健所からの指示により、出社を控えるより要請されます。

この休業期間は、感染者と最後に接触が合った翌日から10日間(デルタ株と確認された場合14日)とされています。家族が感染した場合には、家族の療養が終了した日の翌日から10日間となりますので、同居を続ける限り20日以上休業が続く事もあります。

濃厚接触者の休業については保健所の指示により行うものですので、会社としての責は無く、法律上賃金を支払う義務は生じません。

とはいえ、本人の生活を考えると、何らかの補償を考える必要も出てくるでしょう。

対策としては、次の方法が考えられます。

(1)原則通り欠勤控除を行い、本人の希望があれば、給与の前借り等を認める
(2)本人の希望により、有給休暇の使用を認める
(3)会社都合休業と同じように休業手当を支給する
(4)特別休暇を認め、有給休暇とは別に有給での休みとする

いずれの方法も法的には問題はありません。
つまり、会社の方針と財務状況に応じて選択する事になります。

雇用調整助成金を受給している場合には、休業手当を支給すれば濃厚接触者も助成金の対象となります。
上記の(3)の適用を検討すると良いでしょう。
(雇用調整助成金Q&A 04-04参照)

ただし、雇用調整助成金の受給には、売上要件や、社員全員の所定労働日数に対する、実際に休業した日数の割合が1/40以上でなければならないという休業規模要件等の各種要件もあります。

したがって、濃厚接触者が出たからといって、新たに雇用調整助成金を受給しようとしても、必ずしも受給できるわけではなく注意が必要です。

【濃厚接触者では無いが、感染が疑われる場合】

社員が濃厚接触者の濃厚接触者である場合や、濃厚接触者の定義には当てはまらないが、感染者と一定以上の接触があった場合など、濃厚接触者以外で感染が疑われる場合についても考える必要があります。

あまり神経質になってもいけませんが、社内で不安が広がり対応が必要な場合などには、対象者に会社の費用でPCR検査や抗原検査を受けさせるのも良いでしょう。

また、感染が疑われる対象者に休業を命じた場合には、会社都合での休業となりますので、平均賃金の60%以上の休業手当を支給するか、特別休暇を付与する必要があります。

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桐生英美
専門家

桐生英美(社会保険労務士)

日本経営サポート株式会社

民間企業での人事と採用経験25年、社労士登録20年。採用面接は2000人。中小企業が悩む採用問題、人事問題を、自らの実務経験と社労士の資格を活かして円満に解決するサポートをいたします。

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