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小田原漂情

国語力に定評がある文京区の総合学習塾教師

小田原漂情(おだわらひょうじょう) / 学習塾塾長

有限会社 言問学舎

コラム

今こそ「熟慮」が求められる

2022年8月15日

テーマ:小田原漂情

コラムカテゴリ:スクール・習い事

 今日は77年前に戦争が終わった日(終戦記念日または敗戦記念日)です。言問学舎塾長ブログの記事をそのまま転載させていただきます。


 8月15日。77年前の昭和20(1945)年のこの日、正午から、昭和天皇の玉音(ぎょくおん)放送があったことから、わが国ではこの日が「戦争が終わった日」とされている。対外的には、同年9月2日、東京湾上の米戦艦「ミズーリ」号艦上での降伏調印式が正式な終戦であり、また、16日以降も陸海軍の最前線における一部の(「特攻」を含む)戦闘行為と、大陸や樺太(からふと/サハリン)などで虐殺や略奪、引き揚げに伴う筆舌に尽くしがたい苦労があって、命を奪われ、辛酸を嘗めた日本国民も多かったのだが、国をあげての戦争状態が終わったのがこの8月15日であることは、間違いないだろう。

 77年前のこの日までに命を落としたとされる、民間人を含めたわが国の戦没者の数は、約310万人とされている。今日、令和4(2022)年8月15日に行なわれた「全国戦没者追悼式」で、戦後77年間迎えてきたこの日の「継続性」を感じさせたのは、天皇陛下の「過去を顧み、深い反省の上に立って」というお言葉であった。8月6日の広島、9日の長崎での平和祈念式典では、ある程度踏み込んだ「自分の言葉」で原爆の犠牲者への挨拶を述べた岸田現首相の式辞が注目されたが、「戦争の惨禍を二度と繰り返さない」という表現があっただけで、特にわが国の過去の歴史に言及する姿勢はみられなかった。前々任者の代で意図的に反省という方向の姿勢を出さなくなってから、前任者を含む現自民党(および公明党との連立与党)政権の立ち位置である(現職総理大臣の「反省」等の言葉の使用については、議論のかまびすしい問題であり、長年多様な変遷があり、直接的な言葉がずっと積極的に使われて来ていたのではない。前々任者の時に、「姿勢」も明らかに形としなくなったのである)。

 言うまでもなく、現在の世界は、ロシアのウクライナ侵攻により大きな危機に直面している。つい先日、中国の発射したミサイルがわが国の排他的経済水域(EEZ)内に着弾するという由々しき問題もあった。畢竟(ひっきょう)、国防力強化の論調が強まり、防衛費のGDP比2%への増額や、「核共有」などという考えまでもが公言されるようになっている(後者については、本年8月9日の本稿で言及済み)。

 だが、熟慮が求められるのは今この時であり、また、戦火に斃れた先人たちを偲ぶこの8月の、われわれ今を生きる者たちの放棄すべからざる責務であろう。岸田現首相は、9日の長崎の平和祈念式典における挨拶で、「核兵器使用の惨禍を繰り返してはならないと訴え続けてまいります」、と述べたあと、「長崎を最後の被爆地とし続けなければなりません」、「被爆の実相への理解を促す努力を重ねてまいります」と明言した。しかしその翌日には、「期待に応える有事の内閣」と記者会見で述べている。9日の長崎での挨拶と、10日の記者会見の内容を、実際にはどのように現実化するのであろうか。一見矛盾するように思われるこの対極のことがらを、見事に両立させることができたならば、岸田氏は古今無双の大政治家と後世に認められるに違いない。

 今こそ熟慮を求めたい。首相にも、今日、先人たちへの二心なき思いから参拝をした政治家たちにも。


令和4(2022)年8月15日
小田原漂情

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