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小田原漂情

国語力に定評がある文京区の総合学習塾教師

小田原漂情(おだわらひょうじょう) / 学習塾塾長

有限会社 言問学舎

コラム

『たまきはる海のいのちを‐三陸の鉄路よ永遠に』を出版しました!

2021年3月1日

テーマ:小田原漂情

コラムカテゴリ:スクール・習い事

 2011年、平成23年3月14日の言問学舎塾長ブログに「Vol.37 瞑目」として書いた記事の結びに、次の一文を記してあります。

 「やがて、昔日の報恩のために為すべきことは見出されよう。」

 日付からおわかりいただけると思いますが、「昔日の報恩」とは、若いころ大きな旅の慰めと恩恵を受けた三陸の地が東日本大震災で深甚な被害を受けたことに対し、その恩に報いることであり、そのために何ごとかを為さなければならぬという率直な思いを、つづったものです。

 あの日から、まもなく十年のときが訪れます。先に引用した文章を書いた当時は、なりわいとして当然のことではありますが何日も塾を空にすることはできず、また原発事故の影響をおそれて都内の人の動きもぴたりと止まってしまったため、新入塾生を迎える春の時期に多大な影響が塾の経営に及んだこともあり、何をすることもかなわないというのが実情でありました。それ以上に、かつて経験したことのない惨状を前にして、「何かをしなければ」という思いこそ募るものの、現実として動けることは何もない、そんな忸怩たる思いと焦りとを、ブログにも記してもいたのです。しかし、震災発生後3日目に記した「為すべきこと」とは、もっと前の段階として、私は物書きとしての自分のつとめを、この震災と向き合って果たさなければならぬという、ある種の自覚だったと思われます。

 私は大学3年の時、奥松島と通称される、現東松島市の宮戸島を訪れて、はじめて三陸の地を踏みました。そして大学卒業後、親友が宮城県気仙沼の高校の教員として同地に赴任したため、たびたび遊びに行って、三陸の土地に親しんだのです。今にして思えば、癒えることのない青春の胸の痛みを、大いに癒やしてもらっていたように感じられます。その三陸の地が、あのような惨禍に見舞われたことに対して、私は書くことで、その恩に報いなければと思ったのです。いや、思ったというよりは、そのような衝動に突き上げられていたというべきでしょうか。

 しかし、被災した場所をまったく目にしないままで、空想、夢想のように、作品を書くことはできませんでした。2012年の9月に、三陸ではありませんが福島県いわきに足を運ぶことができ、そこで旧友に海岸の被災跡を案内してもらって、震災の被害の一端を、目におさめることができたのです。

 それから、半年に一度のWeb同人誌『Web頌(オード)』の発表時期にあわせ、計6回、2年半にわたって、小説「たまきはる海のいのちを‐三陸の鉄路よ永遠に」を書いたことが、第一の、「為すべきこと」の実行でありました。

 小説「たまきはる海のいのちを‐三陸の鉄路よ永遠に」は、東日本大震災で犠牲になられた方々への追悼と、津波の被害によって一部区間の鉄道事業継続ができなくなったために寸断された「三陸縦貫鉄道」の顕彰を、志しています。だからWeb同人誌で発表しただけでなく、「紙の本」として出版することが、その次の目標であり、「為すべきこと」でした。しかし既存の出版社からそれを刊行してもらうことを、実現することはできませんでした。

 かねてお伝えしている通り、言問学舎では一昨年の春から、自社で国語教材の出版を開始しました。出版事業の立ち上げに当たっては、当然『たまきはる海のいのちを‐三陸の鉄路よ永遠に』の刊行も、視野に置いておりました。そしてこのほど、三陸の鉄道の貴重かつ希少な写真のご提供をいただくなど、多くの方の大変ありがたいご協力をいだいた上で、『たまきはる海のいのちを‐三陸の鉄路よ永遠に』を言問学舎から、出版する運びとなったのです。奇しくも東日本大震災の発生から満十年のときを迎えるこの3月の出来(しゅったい)となりました。「為すべきこと」のひとつを、これで成し終えることになると思いますので(もちろん、これですべてが終わりではないのですが)、ここにご報告させていただきたいと思います。あわせて、本書の出版が亡くなられた方々の鎮魂のつとめを果たすよう、願わずにはいられません。

※『たまきはる海のいのちを‐三陸の鉄路よ永遠に』は、2021年3月1日17時より、言問学舎にて販売を開始します。全国の書店(一部)に配本されますし、各地のどこの書店からも注文可能です。またアマゾンなどのネット書店でも、ご購入いただけます。総ページ272ページ、本体1600円+税、税込1760円。


たまきはる海のいのちを‐三陸の鉄路よ永遠に

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