小説『遠つ世の声』を刊行(電子書籍/Kindle)しました!
一昨年からYouTubeで、「小田原漂情 詩の朗読」の投稿をつづけています。今年は5月から、高村光太郎の「智恵子の半生」に取り組んでおり、当初は夏休み前に全文の朗読、発表を終える心算でしたが、諸々の事情により、このほど全4回のうちの第3回の発表となったものです。智恵子さんの病について、光太郎さんがその実相を推測されている下りですから、YouTubeの「説明」に書いた内容を、そのまま転載させていただきます。
<智恵子は入院生活に至る直前まで、「異常」ではあったが、「異状」ではなかった、と光太郎は述懐する。「異常」とは、その眼に「阿多多羅山の山の上に出てゐる天空」を湛え、「隔絶的に此の世の空気と違つた世界の中に生きてゐた」ことを指す。そして「異状」ではなかったとしながらも、「四六時中張りきつてゐた弦のやうな」智恵子はついに、「極度の緊張に堪へられずして脳細胞が破れ」、「精根つきて倒れたのである」という。1947年(昭和22年)6月の「報告(智恵子に)」にみられる以下の詩句は、こうした智恵子のきびしい緊張を思って書かれたのだと、「智恵子の半生」は教えてくれる。
(前略)すつかり変つたといつても、
それた他力による変革で
(日本の再教育と人はいひます。)
内からの爆発であなたのやうに、
あんないきいきした新しい世界を
命にかけてしんから望んだ
さういふ自力で得たのでないことが
あなたの前では恥しい。
(後略) >
わたくし自身、こうして「智恵子の半生」を朗読することで、これまで以上に『智恵子抄』の各作品に対する理解が深まってゆくことを実感しています。光太郎さんと智恵子さんのことを勉強する方のために、少しでもお役に立てば幸いです。