今なすべきことを振り返ると-
今春の北陸新幹線金沢開業、来春の北海道新幹線新函館北斗開業など、新幹線の新線部分の開業が華々しくニュースになっていますが、一方で「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」が廃止され、「カシオペア」も廃止が取り沙汰されるなど、寝台列車、夜行列車は、JR九州の「ななつ星in九州」を除いて(2015年8月現在)、完全に過去のものにされようとしています。
このたび洋泉社より、この春好評を博した『時刻表読本』につづき、ひとつの時代の終焉を迎えつつある夜行列車に焦点をあてた『夜行列車読本』が刊行されました(8月5日発売、ただいま好評発売中)。
同書では、前述の三大豪華寝台特急の特集をはじめ、多くの印象的で特徴のある夜行列車の在りし日の姿を、技術面と旅情的な面の双方から、くわしく描き出しています。
私は言問学舎ホームページ内「漂情旅日記篇」で、「さらば急行能登」を書いた際、ブルートレインの廃止=夜行列車時代の終焉という事情にも、感銘を持ってふれましたが、今回依頼を受け、『夜行列車読本』に、「夜行列車の旅を輝かせてくれたA寝台」という一文を執筆しました。
1960年代の終りから2000年代にかけて夜行列車の旅を楽しんだ私の年代では、やはり夜行列車の時代=「ブルートレインの時代」でした。実際の乗車体験に基づいて、B寝台の変遷とA寝台の乗り心地、また「寝台列車で眠らなかった」話などを、夜行列車への挽歌として、書いたものです。
さらに上の年代の先達の方々による、ブルートレイン以前の寝台列車や「大垣夜行」など、往時を知る人にとっておそらくなつかしくてたまらないであろう名列車の姿が、十二分に楽しめます。また直接寝台特急等に乗っていない、若い世代の方たちにも、夜行列車、寝台列車の様子をしっかり知っていただくことのできる、必見の一冊です。
旅と鉄道を愛する方々に、ぜひお楽しみいただければと思います。