受験英語における教材(参考書・問題集)の選び方
(今回は、井川先生へのインタビューに基づいて、大学受験英語コラムを構成しました。)
英単語と並んで暗記ものとされるのが英熟語です。英熟語は数が多いだけではなく、複数の単語からなり、似たようなものがあるため覚えにくいと敬遠されがちです。
しかし、受験英語で熟語を避けて通ることはできません。熟語の必要性を認識し、効果的な学習法で熟語を自分の武器にしましょう。
熟語とは
英熟語とは2つ以上の英語のまとまりから構成されていて、1つの言葉だけの時とは全く異なった意味になる単語群のことを指しています。英熟語の中には前置詞や副詞が多く登場します。前置詞とはat,on,to,forなどです。副詞とは、up,down,out,offなどです。要は、この前置詞・副詞と動詞の組み合わせが熟語なのです。
この組み合わせは無数にあるので苦手とする人が多いのですが、ネイティブの人は意識することなく使いこなしています。それはなぜでしょう。
数多く存在する前置詞ごと、副詞ごとの組み合わせをひとつひとつ覚えていたら、気が遠くなってしまいます。ネイティブは前置詞や副詞のニュアンスをものにしているので、文脈に合わせて自由自在に使いこなせるという訳です。
熟語学習の必要性
熟語を使うことで、日常会話も変わります。船に乗るということを英語で表現するのに「I embark」とするのか、「I get on a ship」にするのかでは難易度も変わります。熟語を覚えて使いこなせれば、難しい英単語を覚えなくてもよくなるのです。
日常的な会話レベルで必要とされる英単語は数千とされ、日本語よりもはるかに少なくなっています。それは熟語の功績にほかなりません。
そう考えれば、熟語を毛嫌いするのはもったいない気がしてきませんか?
受験という舞台でも、単語そのものを書かせる問題は多くはありませんが、英熟語となるとしばしば見受けられます。4択問題、下線部の和訳、英語長文など思わぬ場所で間接的に英熟語の知識が問われる場面が出てきます。配点の高い長文で、ある英熟語の意味がわからないばかりに考えが止まってしまうかもしれません。そのような事態を避けるためにも、単語同様、熟語も覚えおかなければなりません。
英熟語は、単語そのものと遜色ないほど独自の意味をもつ場合があります。知らない熟語でも感覚やニュアンスで何となく理解できるものもあることにはありますが、覚えていなければ手も足も出ないものが多いのです。
単語自体は中学生でもわかるようなシンプルなもので構成されている。それでも熟語がわからないばっかりに、何を言っているのか理解できない。こんな状況に大学入試で遭遇することを想像してください。
単語自体が難しいもので理解できないのならばあきらめもつきますが、それぞれの単語にはなじみがあるのに解けないとしたら悔しさも倍増です。
それだけに、後回しにされがちな熟語もしっかりと取り組まなければならないのです。
熟語make upも使われる場面によって意味が異なる
英熟語が英語の学習において、重要なものだということはわかってもらえたと思います。ではどうやったら覚えられるのでしょうか。英単語の暗記も苦労するものですが、これが熟語となるとさらに難易度が上がります。英単語はなんとか覚えられても、熟語となるとまるで歯が立たないと嘆く学生が多いのです。
それには理由があります。英熟語は英単語とちがい、複数の単語がセットになり元の意味とは異なる意味を表します。さらに、同じ単語を使っている熟語でも前置詞や副詞が異なれば意味も変わります。数が多くなれば紛らわしい似た熟語も増え、覚えるのに苦労するのも無理はないでしょう。
片っ端から丸暗記しようとしても、英単語以上に覚えたそばから頭から抜けてしまいます。
例えば、「make up」という熟語はご存知でしょうか。化粧、構成という意味の「makeup」と取り違えがちですが、使われる場面によって意味がさまざまに異なる熟語のひとつです。
・何かを作り上げるという意味合いで使う場合。
例)I will make up the plan.
・決心するという意味合いで使う場合。
例)I made up my mind.
・埋め合わせをするという意味合いで使う場合。
例)I will make it up for you.
どれも同じように見えますが、まずはmakeに注目してみましょう。makeは作るという意味をもっていますので、作り上げるということについては無理なく連想できそうです。
副詞のupは飲み干すという意味のdrink upや食べつくすという意味のeat upでも使われます。ここから読み取れるのは、upが最後までやり切るというニュアンスです。
また、化粧のmakeupやmake up forでは、upが足りない部分を補うというニュアンスがイメージできます。upの意味は他にももっとたくさんありますが、足りない部分に向かって上へ進むというようなイメージを自分なりに付加することができれば、熟語として覚える際に手助けとなってくれます。
イメージで覚える勉強法
前述のようにイメージを積極的に活用することで頭に入りやすく、さらに忘れにくくもなります。イメージを利用するのは、単語と前置詞・副詞の組み合わせを混同しないためにも有効な方法です。
覚えるときこそ丸暗記よりはイメージと関連付ける手間がかかりますが、急がば回れ。動詞ごと、前置詞ごと、副詞ごとに、そのニュアンスを思い浮かべて覚えていけば記憶があやふやになることもないでしょう。
そして、いったん言葉ごとのイメージをもつことができれば、似かよった英熟語もどんどん自分のものにしていけるのです。
イメージは自分が納得できるもので構いません。熟語が出てくる例文に出くわしたら、その状況を想像しましょう。動詞とともに前置詞・副詞もイメージできるようになれば、初めて見る英熟語でもある程度見当がつくようになります。実際の試験の場でも役立つはずですので、今からイメージ学習を取り入れて熟語を自分の武器にしてください。