趣味の手芸を副業にしても、好きなまま続けるにはどうすればいい?

新井一

新井一

テーマ:起業

売るために作る時間と、楽しむために作る時間を分ける

――長く続けてきた手芸を、いずれ仕事にしたいという方がいます。ただ、注文を受けるうちに、手芸そのものが嫌いになってしまうのではと心配しています。始める前に、何を決めておけばよいでしょうか?

新井:まず、売るために作る時間と、自分が楽しむために作る時間を分けてください。注文が入ると、納期や相手の希望に合わせる作業が増えます。好きなものを自由に作る時間まで全部注文に回してしまうと、もともと楽しかった手芸が、仕事だけになってしまいます。本業や家のことがあるなら、一週間のうち無理なく使える時間も、先に見ておきましょう。

――時間を決めるだけで、続けられるのでしょうか?

新井:時間だけでは足りません。何を作るのか、誰からの注文を受けるのか、材料費や発送にいくらかかるのかも決めます。たとえば、作り慣れた作品だけを販売して、特注は当面受けないことにすれば、制作時間を読みやすいですよね。ただ、相手の希望を聞くほど楽しいという人もいます。ですから、一律に特注を避けるのではなく、自分が続けたい作り方に合う条件を選びます。

最初の注文は、増やしすぎない

――売り始めたら、できるだけ多くの人に知らせたほうがよいですか?

新井:作れる数より多く注文を集めてしまうと、好きな作品でも納期に追われます。まず一つの作品について、材料を買う時間、制作、写真、梱包、発送まで含めて、何時間かかるのかを見てください。その時間を、本業のある週に確保できるかどうか。それが、受けられる数を決めます。初めから大勢に告知するより、最初は注文を受ける人数を絞るほうが、約束した日に届けやすいでしょう。

――完成品を売るのと、注文を受けてから作るのとでは、違いがありますか?

新井:違います。完成品なら、手元にある数と発送できる日を知らせられます。注文を受けてから作る場合は、材料をそろえる日数と制作時間を見込んで、渡せる日を伝えなければなりません。最初は、作り慣れた完成品だけを並べてみる方法もあります。相手の希望に合わせて作ることが楽しいなら、受注制作を選んでもかまいません。その場合も、何件までなら楽しく作れるのかを、自分で決めておいてください。

――知り合いだけに売っていると、仕事として試せたことにならない気もします。

新井:知り合いでも、代金を払って作品を受け取り、使ってみてどうだったかを話してくれるなら、売る仕事を試せています。ただ、好意だけで買ってくれたのか、作品そのものが欲しかったのかは、聞いてみたいですね。「よかった」で終わらせず、どこに置いて使うのか、次も同じ値段で買いたいかを聞く。そうすれば、知らない人へ売り始める前にも、作品の説明や価格を考える手がかりになります。

材料費と手間は、分けて見る

――趣味で買っていた材料を使うなら、価格は安くしてもよいのでしょうか?

新井:材料をすでに持っていても、次の作品を作るときには、また買うことになります。まず、糸や布などの材料費と、梱包や送料を数えてください。そのうえで、制作にかかる時間を無視して、安く売り続けられるかどうかを考えます。趣味として材料費を少し補えれば満足なのか、収入になる仕事に育てたいのか。それによって、決める価格も違ってきます。始める前に、目的を自分で決めておきたいですね。

――売上を全部、材料代に使うと決める方法もありますか?

新井:あります。ただ、それを誰にでも当てはめる必要はありません。材料費を補うところから試す人もいれば、制作時間への対価まで含めて価格を決めたい人もいます。大事なのは、入ってきたお金と出ていくお金を別々に見て、「売れたから続けられる」と早合点しないことです。注文ごとに材料費と手間を書き残しておけば、次の注文を受けるかどうかも判断できます。

仕事を増やす前に、続け方を見直す

――注文が来たあとは、何を目安に続け方を考えればよいですか?

新井:売上だけでなく、約束した日に作れたか、自由に作る時間が残ったかも見てください。注文の対応や発送が負担なら、受注日を月に数日だけ設ける方法もあります。作品を作る時間より、連絡や包装の時間のほうが長くなっていないかも、見ておきたいですね。販売することで楽しみが消えてしまったなら、注文の数や受け方を変えてかまいません。

――副業として始める前の一歩は、何でしょうか?

新井:次の一週間で、手芸に使える時間を書き出して、そのうち何時間を自分のために残したいかを決めてみてください。残った時間で作って届けられる作品を、一つ選ぶ。好きな手芸をすべて商品にする必要はありません。自分が楽しむ時間を守ったまま、売る仕事を小さく試しましょう。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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専門家

新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

会社を辞めずに始める起業だけを26年支援してきた起業18フォーラム代表。延べ6万人の相談に応じ、著書13冊は台湾・韓国でも翻訳出版。会社員のまま小さく始める実践手順を伝えています。

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