起業の商圏は、都心と郊外のどちらに置けばいい?

新井一

新井一

テーマ:起業

住んでいる場所と、お客さんが買う場所は違う

――都心の会社に勤めていて、郊外に住んでいる方が、休日に食材を使った販売を考えています。お客さんを探すなら、会社の近くと自宅の近く、どちらから始めるとよいでしょうか?

新井:私なら、先に商品と売る時間を決めます。昼休みに持ち帰ってもらう商品なのか、休日の夕食に使ってもらう商品なのか。買う場面が違えば、探すべきお客さんも変わります。勤務先が都心だから都心、自宅が郊外だから郊外と決めてしまうと、肝心の「その時間に買う人がいるのか」を見落とします。

――同じ食材でも、いつ、どのように売るかで、場所が変わるのですね。

新井:ええ。たとえば常温で持ち帰れる乾物なら、平日の帰宅前に買ってもらえるかもしれません。一方、冷蔵が必要な惣菜なら、売る場所まで運ぶ時間や、保冷の方法も考えなければなりません。商品を決めないまま「人の多い都心が有利」と考えると、売れても手元に利益が残らないことがあります。

昼間の人出と、休日の暮らしを分けて見る

――人が多い場所を比べるには、何を見ればよいですか?

新井:まず、昼間に人が集まる場所と、夜や休日に人が過ごす場所を分けて見ます。オフィス街の昼休みと住宅地の休日とでは、人数だけでなく、買い物の目的も違います。統計で昼夜間人口を調べるのは参考になりますが、その数字だけで商品が売れるとは言えません。自分が売りたい時間に現地へ行って、近くの店が何を、いくらで売っているのかを見てください。

――都心のほうが昼間人口が多くても、その人たちが休日に惣菜を買いに来るとは限りませんね。

新井:そうです。会社の取引先が都心に多いとしても、その方々が個人として商品を買うかどうかは、別の話です。知り合いの数を、需要と取り違えないようにしたいですね。郊外なら、近所の店や催しを回って、買う人がどんな時間に来ているのかを聞いてみる。ただ、数人の反応だけで売上を予測するのは早いので、何度か時間帯を変えて見てください。

移動に使う時間も、販売の条件に入れる

――両方の場所で少しずつ売って、反応を比べる方法はどうでしょうか?

新井:試すこと自体は、いいと思います。ただ、食材を都心と郊外の両方へ運ぶなら、交通費だけでなく、仕入れ、準備、移動に使う時間も記録してください。会社勤めを続けながら売る人にとって、休日の数時間は貴重です。売上が同じでも、移動に半日かかる場所と、自宅から歩いて行ける場所とでは、続けやすさが違います。

――売れた金額だけを比べると、その違いが見えませんね。

新井:仕入れ代、販売場所の費用、交通費を差し引いて、準備から片付けまで何時間かかったのかも書いておいてください。たとえば、郊外での販売額が都心より小さくても、移動と出店の負担が少なく、同じお客さんにまた会えるなら、次の週末も試しやすいでしょう。反対に、都心で仕事帰りの人から継続して注文が来るなら、それは都心を選ぶ理由になります。数字は大きさだけでなく、自分が続けられる条件と一緒に読みます。

最初の販売場所は、小さく試して決める

――最初の一歩は、何にするとよいですか?

新井:候補の場所を二つに絞って、それぞれで「誰が、いつ、何を買うのか」を一行ずつ書きましょう。そのうえで、週末にその場所を歩き、店主や近所の人に売りたい商品を見せて、反応を聞きます。そこで出た言葉を、会社の知人に聞いた反応とも比べてみてください。相手が実際に買う時間と量まで聞けると、場所を判断しやすくなります。

――創業支援の窓口も、住まいと勤務先で分かれるのでしょうか?

新井:自治体によって、在住者と在勤者の扱いが違います。利用したい制度があるなら、候補の自治体それぞれに、対象者と利用条件を確認してください。ただ、制度が使えるからその街で売る、という順番にはしません。まずお客さんと販売の条件を見て、その場所で使える支援を調べるほうが自然です。

――都心と郊外のどちらが正解かを、最初から決めなくてもいいのですね。

新井:はい。買う人がいる時間、商品を運ぶ負担、試したときに残る利益。この三つを同じ表にして比べれば、住まいや勤め先への思い入れだけで決めずに済みます。まずは一つの場所で小さく試して、実際の買い方を見てから、次の場所を考えても遅くありません。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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新井一
専門家

新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

会社を辞めずに始める起業だけを26年支援してきた起業18フォーラム代表。延べ6万人の相談に応じ、著書13冊は台湾・韓国でも翻訳出版。会社員のまま小さく始める実践手順を伝えています。

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