「起業準備、いつ始めればいいですか?」44歳・会社員の問いに正直に答えます
やればやるほど不安が増える人の共通点
――新井さん、今日は「起業の不安」についてお聞きしたいのですが、起業準備を始めて半年経つけど、やればやるほど不安が増えていく…… という相談、多いのでしょうか?
新井:本当に多いですよ。先日も「夜寝つけない日が週に4日あって、これって普通ですか?」と相談を受けました。みんな自分だけが特別だと思っているのですが、まったくそんなことはありません。
――データで見ても、起業前の不安は普遍的ですか?
新井:日本政策金融公庫の2025年新規開業実態調査によると、創業時に最も大きな不安として「売上の見通し」を挙げた人は42.1%、次いで「資金繰り」31.8%、「健康管理」18.4%、「家族の理解」17.9%。起業準備層のおよそ半数が、同じ場所で立ち止まっているわけです。だから、不安があること自体は問題ではないですよ。
問題は「不安があること」ではなく「漠然のまま抱えること」
――では、何が問題なのでしょうか?
新井:不安は具体になった瞬間に、エネルギーを失うのですよ。「家族に迷惑がかからないか」という漠然とした不安は、「月の生活費が5万円減ったら何が起きるか」という数字に置き換わると、対応策がパッと思い浮かぶ。
――確かに、数字になると考えやすくなりますね。
新井:でも、多くの方が漠然のまま抱え続けてしまう。なぜか。不安を分解する具体的な手順を知らないだけなのですよ。怖い、不安だ、と感じる気持ちが悪いわけではなく、それを具体に変える型がないだけ。型さえあれば、不安エネルギーは半減します。
不安を分解する4つの問い
――その「型」を教えてもらえますか?
新井:はい、4つの問いを順番に紙に書き出すだけです。
――シンプルですね。
新井:まずSTEP1、不安の正体を1文で言語化する。「売上が立たない不安」「家族の理解が得られない不安」など。次にSTEP2、その不安が現実化する確率を数字で書く。10%なのか30%なのか50%なのか。3つ目はSTEP3、現実化したときの影響額を数字で書く。月収マイナス何万円が何ヶ月続くか。最後のSTEP4は、影響を半分に減らす対応策を1つだけ書く。
――数字を入れることで、対策が見えやすくなりますね。
新井:ええ。漠然と「怖い」と思っているうちは何も動かせない。でも「20%の確率で月10万円が半年減る」と書いてみると、「じゃあ生活防衛資金を半年分積もう」「固定費を月1万円下げよう」と、対応策が連鎖的に出てきます。
Nさんの分解事例:4問でぐるぐるが止まった
――実際にこの方法で楽になった方はいらっしゃいますか?
新井:48歳・経理10年勤務のNさんという方がいました。ご家族は夫と高校生のお子さん2人、月収47万円の会社員です。寝つけない日が週に4日続いていました。
――かなりつらい状態ですね。
新井:一緒に4問を埋めてみたら、不安の正体は「家計が崩れる漠然とした怖さ」でした。冷静に確率を見積もると約20%、影響額は月収マイナス10万円が半年続くケース。ここまで具体になると、対応策がスッと見えてくる。会社員雇用を続ける、生活防衛資金を6ヶ月分積む、家計の固定費を月1万円下げる――この3つを並列で進める計画になりました。
――数字に落とすと、ご主人にも説明しやすそうですね。
新井:そう。計画を紙にしてご主人と共有したら、「これなら一緒にやれる」と返ってきたそうです。その夜から寝つきが戻ったとおっしゃっていました(笑) Nさんはその後、13ヶ月目に経理代行のモニター3件・月4万円、18ヶ月目には法人2社の月次決算サポートで月12万円。退職金も家計貯蓄も削らず、会社員のまま土日中心で続いています。
書き出しは「平日の夜10分」でいい
――不安を抱えながらでも前に進める設計、ということですね。
新井:拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』にも書きましたが、不安を消そうとするより、不安と一緒に動ける形をつくる。これが現実的ですよ。ゼロにはできなくても、漠然から具体に変わった瞬間に、ぐるぐるは止まります。
――書き出しのコツはありますか?
新井:平日の夜10分でいい、週1回見直すだけでいい。これが続けられる形です。完璧にやろうとすると、かえって続かない。今夜試せるのは、不安を1つだけ紙に書いて、確率と影響額の数字を横に置いてみることです。それだけで、ぐるぐるの強さは変わってきますよ。
――家族にも数字で共有すると合意形成が早い、というのは大きな気付きでした。
新井:そうですね。会社員雇用が続いている期間は、最大の保険として活用してほしい。雇用がある安心感の上で、不安と付き合いながら少しずつ前に進む。これが起業18フォーラムでお伝えしている現実解です。
――今日はとても具体的なお話、ありがとうございました!
新井:こちらこそ、ありがとうございました。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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