サービス名は、いつ決めればいい? 最初の受注前に考えておきたいこと

新井一

新井一

テーマ:起業

名前より先に、誰に何を売るかを決める

――起業の準備をしている方が、サービスの名前を決められずにいます。名前が決まらないと、販売の準備も始められないのでしょうか?

新井:名前を先に完成させる必要はありません。まだ誰に何を提供するのかを試している段階なら、サービスの説明を短い文章で書くところから始めましょう。たとえば「忙しい人の家事を助けます」だけでは、買う人は何を頼めるのか分かりません。どんな人の、どの作業を、どこまで手伝うのか。そこが決まれば、名前に使う言葉も考えやすくなります。

――よい名前が浮かべば、売るものもはっきりしてきそうですが。

新井:響きのよい言葉から考えると、名前だけが先に決まって、実際の仕事を説明しにくくなることがあります。「時短」や「サポート」と付けても、何に時間を使わなくてよくなるのか、誰が助かるのかは伝わりません。先に、お客様から頼まれる作業を一文で言えるようにしましょう。名前は、その説明を短く伝えるために使うものです。

最初の受注までは、仮の呼び名でよい

――名前を決めるのは、最初の告知より前でなければいけませんか?

新井:告知や人への説明には呼び名が要りますが、最初から正式な名前に固定しなくて大丈夫です。何をするサービスなのかが分かる仮の呼び名を使って、興味を持った人が何を期待しているのかを聞いてみてください。最初の質問に答えるなら、最初の受注が決まる頃に、実際に頼まれる内容に合う名前へ決めれば十分です。一つの候補を磨くために、販売を何か月も待つ必要はありません。

――仮の名前だと、お客様に頼りなく見えませんか?

新井:お客様に「仮です」と断る必要はありません。短い呼び名と一緒に、提供する仕事をきちんと説明してください。たとえば、表計算の集計表を作る仕事なら、見た人が「集計を頼めるのだな」と分かる説明が必要です。かっこいい名前だけで仕事の内容が隠れてしまうほうが、お客様には選びにくいでしょう。受注後に名前を変えるとしても、すでに案内した人に何のサービスか伝わるようにしておきます。

名前に入れる言葉を選ぶ

――誰向けかが決まったら、どう言葉を絞ればよいですか?

新井:まず、買う人が困っている作業と、頼んだあとに何ができるようになるのかを書いてみましょう。小学生の子どもがいる家庭向けなら、家事全般なのか、平日の夕食の準備なのかで、名前に使う言葉が変わります。「誰が、何を頼めるのか」を一文で書いて、その中から相手が普段使っている言葉を選びます。拙著『起業神100則』では、名前を最小単位の差別化として扱いました。難しい言葉より、仕事の違いが伝わる言葉のほうが役に立ちます。

――自分の名前や屋号を、そのままサービス名にしてもよいですか?

新井:個人名や屋号で覚えてもらう方法もあります。ただ、初めて見る人には、その名前だけでは何を頼めるのか分かりません。名乗るときに、実際に引き受ける仕事も一緒に伝えてください。流行りの言葉や横文字を使いたくなったときも、対象のお客様がその言葉を見て仕事内容を想像できるかどうか、声に出して確かめたいですね。

――候補がいくつか出たら、友人にどれが好きかを聞いてもよいですか?

新井:聞いてもいいですが、好みの投票だけでは選べません。そのサービスを頼みそうな人に候補を見せて、それぞれ何をする仕事だと思ったかを尋ねましょう。想定した仕事が伝わらない候補なら、語感がよくても採用を急がないことです。短くて覚えやすいかどうかは、仕事の内容が伝わる候補の中で比べてみてください。

受注した仕事と、名前が合っているか

――最初の受注が決まったら、何を基準に正式な名前を選べばよいでしょうか?

新井:そのお客様が何を頼んで、何にお金を払うのかを見ます。準備中に考えていた仕事と実際の依頼が違うなら、最初の候補に無理に合わせないでください。たとえば広い家事代行を考えていても、頼まれたのが夕食の献立と買い物の相談なら、どこまでをサービスにするのかを先に決めます。頼まれたことのうち、続けて引き受けたい仕事が決まれば、名前も選びやすくなります。

――では、今は名前を決められない方は、何を書いてみるとよいですか?

新井:「誰が、何に困っていて、自分は何をするのか」を一文にしてください。その文を誰かに読んでもらって、何を頼めると思ったかを聞きます。予想と違う依頼を思い浮かべた人がいたら、その仕事も引き受けたいかどうかを考えてみる。最初の依頼で説明が通じたら、そのとき使った言葉からサービス名を選びましょう。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

会社を辞めずに始める起業だけを26年支援してきた起業18フォーラム代表。延べ6万人の相談に応じ、著書13冊は台湾・韓国でも翻訳出版。会社員のまま小さく始める実践手順を伝えています。

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