ニッチな経験を起業に変える専門コンサル導線の正しい作り方
2つ合わせて週20時間なら対象になることがある
――新井さん、今日は「65歳を過ぎて、2つの勤め先で働く場合の雇用保険」について伺います。1つの会社では週20時間に届かなくても、2つ合わせると20時間を超える方がいるそうですね。
新井:いますね。再雇用で週15時間、知人のお店で週6時間、合わせて21時間というような働き方です。この場合、年齢が65歳以上で、条件を満たせば「雇用保険マルチジョブホルダー制度」の対象になり得ます。ひとつの勤め先だけを見て「20時間未満だから関係ない」と決めつけないほうがいいですよ。
――会社が自動で手続きしてくれるものではないのですか?
新井:そこが通常の雇用保険と大きく違います。1つの勤め先で週20時間以上働く場合は会社側の手続きになりますが、マルチジョブホルダー制度は本人がハローワークへ申し出る仕組みです。2つの勤め先を合わせて考える制度なので、本人が労働時間を数えて動く必要があります。
要件は年齢、労働時間、雇用見込みで見る
――対象になるかどうかは、どこを見ればよいのでしょう。
新井:大きく3つです。まず65歳以上で、異なる2つ以上の事業主に雇われていること。次に、それぞれの勤め先の週の所定労働時間が5時間以上20時間未満で、2つを合わせると週20時間以上になること。さらに、それぞれ31日以上雇用が続く見込みがあることです。
――「所定労働時間」というのは、実際に残業した時間ではなく契約上の時間ですね。
新井:そうです。シフトの実績だけで見ると月によってブレますから、雇用契約書や労働条件通知書に書かれた時間を確認します。2つの勤め先の契約内容を並べて、5時間以上20時間未満に入っているか、合計で20時間以上になるかを見る。ここをざっくり記憶で判断すると間違えやすいですね。
申出先は勤め先ではなく住所地のハローワーク
――手続きは、どちらかの会社に頼めばよいのでしょうか。
新井:最初の相談先は、本人の住んでいる場所を管轄するハローワークです。勤め先の所在地ではありません。必要になるのは、雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届と、2つの勤め先それぞれの労働条件が分かる資料です。会社に書いてもらう欄もありますから、いきなり会社へ丸投げせず、まず窓口で自分のケースを確認したほうが話が早いですよ。
――申し出れば、過去にさかのぼって加入できるのですか?
新井:そこも注意点です。資格を得るのは申出をした日からで、さかのぼって加入するものではありません。だから、対象になりそうだと思ったら、雇用契約書やシフト表を手元に置いて早めに確認することです。逆に、どちらかの勤め先を辞めて要件を満たさなくなったときも、本人が届け出ます。始めるときも、外れるときも、自分で動く制度だと考えてください。
失業手当の日数とは別の話として整理する
――雇用保険というと、退職後の失業手当を思い浮かべる方も多いと思います。
新井:そうですね。ただ、今日の話は「いま加入できるか」という入口の確認です。離職したあとに受け取れる給付の話とは分けてください。マルチ高年齢被保険者として資格を得て、その後に離職し、求職の申込みや失業認定などの要件を満たすと、高年齢求職者給付金が一時金で支給される場合があります。被保険者期間が6カ月以上1年未満なら基本手当日額の30日分、1年以上なら50日分という考え方です。
――昨日までの働き方をどう制度に乗せるか、という確認なのですね。
新井:その通りです。起業準備の元手を少しでも増やしたい方ほど、収入の柱を増やすことに意識が向きます。でも、複数の勤め先を持つなら、労働時間、雇用契約、保険の扱いも一緒に見ておきたい。お金が入るかだけでなく、制度上どう扱われるかまで確認しておくと、後で慌てません。
106万円の壁や社会保険とは混ぜない
――65歳前後の制度は、年金や社会保険の話も絡んで混乱しやすいですね。
新井:かなり混ざります。たとえば2026年10月から、パートやアルバイトの厚生年金・健康保険の基準で賃金要件がなくなる話があります。いわゆる106万円の壁に関係する話ですが、これは厚生年金保険と健康保険、つまり社会保険の制度です。マルチジョブホルダー制度は雇用保険の話ですから、同じ紙に書くとしても欄を分けたほうがいいですよ。
――制度名が似ていると、全部まとめて「保険の話」に見えてしまいます。
新井:そうなのです。だから、確認するときは「雇用保険」「健康保険」「厚生年金」と分ける。今日のテーマなら、まず2つの勤め先の所定労働時間を出して、マルチジョブホルダー制度の対象になり得るかをハローワークに聞く。社会保険料や扶養の話は、別の窓口や会社の担当者に確認する。この順番にすると混乱しにくいです。
起業準備の前に、今の働き方を数字で並べる
――最後に、65歳を過ぎて働きながら起業準備をしている方へ、何から始めればよいでしょうか。
新井:まず、2つの勤め先の雇用契約書を並べてください。会社名、契約期間、週の所定労働時間、働く曜日、31日以上続く見込み。この5つを1枚に書き出すだけで、窓口で話しやすくなります。体力や気力を使いながら複数の仕事を続ける年代ですから、思い込みで損をしないことが大事です。
――「自分は週20時間未満だから関係ない」と決める前に、2つ合わせて確認するのですね。
新井:はい。制度に当てはまるかどうかは、最終的にはハローワークで確認する話です。ただ、確認に行く前の整理は自分でできます。起業準備の元手を増やすために働くなら、収入だけでなく、雇用保険に入れる働き方かも一緒に見る。その一手間が、あとで自分を助けることがありますよ。
――今日の話で、確認する順番がかなりはっきりしました。ありがとうございました。
新井:こちらこそ、ありがとうございました。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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