ボーナスを起業準備に使う前に決めておきたいお金の線引き
「時間をもらう」の前に見るべきもの
――新井さん、共働きで家事も育児も分担している方から、「自分の起業準備の時間をほしいと言い出しにくい」という相談が増えています。これは甘えなのでしょうか?
新井:甘えではないですよ。むしろ、家庭を真面目に回している人ほどそう感じます。相手も疲れているのが分かるから、自分だけ別の時間を取るのが申し訳なくなる。でも、ここで大事なのは、いきなり「30分ちょうだい」と交渉しないことです。まず、お互いの一日がどう使われているかを見える形にする。家事、育児、通勤、仕事、睡眠をざっくり書き出すだけでも、感情の話から設計の話に変わります。
――「申し訳ない」という気持ちを、数字に置き換えてみるわけですね。
新井:そうです。たとえば家事育児の負担は、本人たちが平等だと思っていても、実際にはどちらかに偏っていることが多い。だから、起業準備の時間をもらう話ではなく、家庭全体の時間配分を見直す話として始めるほうがいいのですよ。
共働きの不安は3つに分けられる
――起業準備をしたい気持ちはあっても、まとまった時間が取れない、反対されそう、続かなそう…… と不安が重なります。
新井:その不安は、ひとまとめにしないほうが扱いやすいです。まず時間の不安。これは作業を小さくすれば動かせます。次に分担の不安。これは話し方と家庭内の役割整理で変えられます。最後に気持ちの不安。これは説得ではなく共有でほどいていく。3つを分けると、今日動かせるものが見えてきます。
――最初に手をつけるなら、どれでしょう?
新井:時間の不安ですね。ただし、「自由時間を増やす」発想だけだと苦しくなります。共働き家庭では、自由時間が急に2時間増えることはほとんどありません。だから、15分でも進む作業に変える。ここが起業準備のコツです。
15分で進むのは「積み上がる商品づくり」
――15分だと、調べ物だけで終わってしまいそうです。
新井:調べ物を毎回ゼロから始めると、確かに終わります(笑) でも、積み上がる作業なら15分でも残ります。たとえば自分の経験を1項目だけ書く。お客様に説明する手順を1ページだけ作る。よく聞かれる質問を3つだけ整理する。こういう作業は、翌日も翌週も残っていきます。
――商品づくりというと、完成品を一気に作るイメージがありました。
新井:そこが誤解されやすいですね。商品は一気に完成させるものではなく、部品を集めて育てるものです。お試しの入口商品、本命の商品、ついでに買ってもらえる小さな商品、月額や継続支援のような積み上がる商品。共働きの方は、最初から時間を消費し続ける仕事だけを選ばないほうがいい。同じ15分なら、あとで何度も働いてくれるものに使う。これだけで進み方は変わります。
パートナーには許可ではなく景色を共有する
――パートナーにどう話すかも難しいですね。「起業準備したい」と言うだけで、家の負担が増えると思われそうです。
新井:いきなり時間を要求すると、相手はそう受け取ります。だから順番は、「何をしたいか」「なぜ今なのか」「家の負担を増やさないためにどう試すか」です。許可を取りに行くのではなく、景色を共有する感覚で話す。最初は15分だけで十分ですよ。
――「毎週何時間ほしい」ではなく、まず小さく試すのですね。
新井:はい。たとえば寝かしつけ後の15分を週3回だけ使い、その間に何を作ったかを見せる。相手にとっても「何に使われている時間か」が分かると不安が減ります。口だけで夢を語るより、1枚の手順書や1つの案内文を見せたほうが早いですよ。
家庭を犠牲にしない起業準備の始め方
――最後に、共働き家庭で起業準備を始めたい方へ、最初の一歩をお願いします。
新井:今夜やるなら、作業時間を確保する前に、まず自分の起業準備を「15分単位」に分解してください。調べる、書く、聞く、試すを小さく分ける。そのうえで、パートナーに「こういうことを少しずつ作ってみたい」と話してみる。家庭を犠牲にする起業では長続きしません。家族の生活を守りながら、残る作業を一つずつ積み上げる。会社員のまま始める起業は、そのくらい現実的でいいのです。
――時間の奪い合いではなく、家庭全体の設計と商品づくりを同時に見直すのですね。ありがとうございました。
新井:こちらこそ、ありがとうございました。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人以上の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
→ 新井一のセミナー日程一覧


