払った税金のうち経費にできるものは?租税公課の線引き

新井一

新井一

テーマ:起業

税金は全部経費にならない、も間違い

――新井さん、個人で仕事を受け始めた人が会計ソフトを開くと、「租税公課」という科目で止まることがあります。払った税金は経費にできるのでしょうか?

新井:できるものと、できないものがあります。「税金は経費にならない」とまとめて考えると、事業税や固定資産税、印紙税まで空欄にしてしまう。逆に「通帳から出ていったから全部経費」と考えると、所得税や住民税、国民健康保険料まで混ぜてしまいます。

――同じ税金でも、扱いが分かれるのですね。

新井:はい。国税庁が必要経費になる租税公課として挙げているのは、事業税、固定資産税、自動車税、不動産取得税、登録免許税、印紙税などです。一方で、所得税、復興特別所得税、相続税、住民税、延滞税、加算税、罰金などは必要経費になりません。まず税目ごとに分けることが出発点です。

国保と国民年金は経費ではなく所得控除

――国民健康保険料や国民年金保険料は、租税公課に入れるのでしょうか?

新井:入れません。経費ではなく社会保険料控除です。事業の利益を計算する段階で引くのではなく、利益が出たあとの所得から差し引きます。国民健康保険税という名前の自治体でも、考え方は社会保険料控除です。

――金額は同じでも、書く場所が違うと意味が変わるのですね。

新井:そうです。必要経費は事業所得そのものを下げます。所得控除は、所得税や住民税の課税所得を下げます。個人事業税の計算にも関わるので、同じ1万円でも置き場所は大事です。小規模企業共済の掛金やiDeCoの掛金も、租税公課ではなく控除欄で見るものです。

――会計ソフトの科目名だけで判断しないほうがよいですね。

新井:科目名は便利ですが、判断を代わりにしてくれるわけではありません。納付書を見て、税目、名義、対象資産、事業との関係を確認します。

自宅や車と共用なら事業で使った分だけ

――固定資産税や自動車税は必要経費になると聞くと、全額入れてよいと思ってしまいそうです。

新井:そこも注意です。自宅の一部を仕事場にしている場合や、自家用車を仕事にも使っている場合は、事業に使った分だけです。国税庁は家事関連費について、業務に直接必要だったことが明らかに区分できる金額に限ると説明しています。

――感覚で半分にするのは危ないですか?

新井:危ないですね。床面積、走行距離、利用日数など、説明できる根拠が必要です。税金だけでなく、家賃、水道光熱費、通信費、車両費なども同じ発想になります。按分の根拠を先に決めておくと、租税公課の欄も減価償却の欄も迷いにくくなります。

――親名義の家で仕事をしている場合もありますよね。

新井:その場合はさらに分けます。生計を一にする親族に払う地代家賃は必要経費になりませんが、親名義の建物を業務に使い、その固定資産税を負担しているような場合は、扱いが変わることがあります。名義と支払い、事業利用の実態を一緒に見ます。

消費税は記帳方式で扱いが変わる

――消費税は租税公課に入りますか?

新井:税込経理方式なら、納付する消費税等の額を租税公課として必要経費に算入します。税抜経理方式なら、仮受消費税等と仮払消費税等に分けて、納付税額は未払消費税等として処理するので、所得金額には影響しません。

――同じ金額を納めても、帳簿上の見え方が違うのですね。

新井:そうです。免税事業者は、所得金額の計算では税込経理方式になります。ここはインボイス対応を始めた人が混乱しやすいところです。売上と仕入れを税込みで記帳しているのか、税抜きで記帳しているのか。まずそこを確認してください。

――計上する年は、払った日で決まりますか?

新井:原則は、その年の12月31日までに納付すべきことが具体的に確定したかどうかです。固定資産税のように納期が分かれているものは、納期ごとに扱える場合もあります。毎年やり方を変えると比較しにくいので、一度決めた方法を続けることも大事です。

納付書の束を三つに分ける

――実際に帳簿へ入れる前に、どう整理すればよいでしょう?

新井:納付書や領収書を、三つに分けます。1つ目は必要経費になるもの。2つ目は必要経費にならないもの。3つ目は経費ではなく所得控除に回すものです。最後まで迷う1枚だけを、税務署や税理士に確認すればいい。

――全部を完璧に理解してからでないと進められない、と思わなくてよいのですね。

新井:はい。起業初期の人ほど、「税金」という1行でまとめてしまいます。でも、まとめるほど採算が見えません。個人事業税と印紙税は経費の側、所得税と住民税は外、国保と国民年金は控除欄。ここまで分けるだけで、1件の仕事の手残りがかなり見えます。

――租税公課は、帳簿の細かい科目というより、採算を見るための線引きなのですね。

新井:その通りです。税金を一括りにせず、事業の利益から引くものと、所得から引くものを分ける。この習慣があると、値付けも見積りも落ち着きます。どんぶり勘定を抜ける入口は、難しい節税ではなく、手元の納付書を分けることからですよ。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

新井一のセミナー日程一覧

\プロのサービスをここから予約・申込みできます/

新井一プロのサービスメニューを見る

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

新井一
専門家

新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

会社を辞めずに始める起業だけを26年支援してきた起業18フォーラム代表。延べ6万人の相談に応じ、著書13冊は台湾・韓国でも翻訳出版。会社員のまま小さく始める実践手順を伝えています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

稼ぎ力を引き出す起業支援キャリアカウンセラー

新井一プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼