台風で屋外イベントが中止なったら、事前に集めた参加費は全額返金すべき?

新井一

新井一

テーマ:起業

「天候だから仕方ない」で片づける前に見る順番

――新井さん、今日は屋外イベントが台風で中止になったときの参加費について伺います。マルシェや屋外レッスンを始めたばかりの方だと、返金するべきか迷いそうですね。

新井:迷いますよね。特に、会場費や材料費をもう払っていると、「こちらも損をしているのに、全額返すの?」と感じやすい。でも最初に分けるべきなのは、お客様都合のキャンセルなのか、双方の責任ではない中止なのかです。台風で開催できない場合は、ここが出発点になります。

――お客様が来られないと言った場合とは違うのですね。

新井:違います。お客様都合なら、準備にかかった実費やキャンセル規定をもとに話し合う余地があります。でも台風で開催そのものができないなら、民法536条1項の「どちらの責任でもないとき」の考え方が関係します。簡単に言えば、約束したサービスを提供できないなら、相手は代金を払う理由を失う、という整理ですね。

「返金しません」と書けば終わりではない

――では、申込フォームに「理由を問わず返金しません」と書いておけばよいのでしょうか。

新井:そこは注意が必要です。規約に一文を書けば何でも有効、という話ではありません。相手が一般消費者の場合、民法の原則より一方的に不利な条項は、消費者契約法10条との関係で問題になることがあります。全額不返金の一文だけに頼る設計は危ないですよ。

――主催者側に実費が出ていても、必ず差し引けるわけではないと。

新井:そうです。会場に払った予約金、準備した材料費、スタッフの手配費などがあっても、それを参加者にどこまで負担してもらえるかは別問題です。募集時の説明、契約条項、実際に提供できた部分、振替の可否を見ます。「こちらも払ったから差し引きます」だけでは、参加者から見て納得しにくいのです。

途中中止なら提供できた部分を分けて考える

――全額返金か、まったく返さないかの二択ではないのですね。

新井:その通りです。午前の講座は実施できたけれど、午後の屋外実習だけ中止になった。こういう場合は、提供できた部分とできなかった部分を分けて考えます。最初から最後まで開催できなかった場合と、途中まで成立した場合では、返金の考え方も変わります。

――振替開催にする場合はどうでしょう。

新井:振替は現実的な選択肢です。ただし、「後日あらためて」とだけ言うと、参加者はいつまで待てばよいか分かりません。振替日を示せるか、その日に来られない人には返金を選べるか。この2点を先に決めておくと、問い合わせがかなり減ります。返金すると決めた分は、できるだけ早く、元の支払い方法に沿って戻すのが基本ですね。

開催前に決めるのは商品設計の一部

――起業準備中の方は、価格や集客に意識が向きやすく、荒天時の扱いは後回しになりがちです。

新井:本当にそうです。僕の本でも、商品やサービスを作るときは「誰に、何を、いつ、いくらで」といった設計図を作ろうとお伝えしています。この「いつ」には、開催日時だけではなく「台風接近時は前日17時に判断する」のような条件も入れてよいのですよ。

――たしかに、当日に考えるから慌てるのですね。

新井:ええ。荒天時に開催するかどうかの基準、中止判断の時刻、返金を基本にするのか振替を基本にするのか。これを申込み前に一行で示しておくだけで、参加者の安心感が違います。無料の体験会でも有料のワークショップでも、判断時刻だけは決めておいたほうがいい。

小さなイベントほど、お金の戻し方で信用が残る

――最後に、屋外イベントを始める方へ何を伝えたいですか。

新井:小さな起業ほど、1回の対応で信用が残ります。台風は誰のせいでもありません。だからこそ、主催者が勝ち負けで考えず、参加者に「どう扱うか」を早く、分かりやすく伝えることが大事です。

――返金そのものだけでなく、連絡の速さも見られているのですね。

新井:そうです。中止時の扱いを決めることは、守りの事務ではなく、次も選ばれるための設計です。出店料を受け取るマルシェでも、参加費を受け取る講座でも、相手が知りたいのは「いつ判断され、いつ戻るのか」です。迷ったら、返金範囲、振替日、実費控除の条項について、消費生活相談窓口や専門家に確認してください。独断で強い規約を置くより、最初から無理のないルールを作るほうが、長く続けられますよ。

――ありがとうございました。イベントを始める前に、荒天時の案内文まで用意しておきたいですね。

新井:はい。準備は派手ではありませんが、そこに信頼が出ます。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

→ [[無料起業相談(要Googleアカウント https://gemini.google.com/gem/12471FCaEK-hG_UpS9seDmfB_tHTX5q4v?usp=sharing)]]
新井一のセミナー日程一覧

\プロのサービスをここから予約・申込みできます/

新井一プロのサービスメニューを見る

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

新井一
専門家

新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

会社を辞めずに始める起業だけを26年支援してきた起業18フォーラム代表。延べ6万人の相談に応じ、著書13冊は台湾・韓国でも翻訳出版。会社員のまま小さく始める実践手順を伝えています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

稼ぎ力を引き出す起業支援キャリアカウンセラー

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京のビジネス
  4. 東京の起業・会社設立
  5. 新井一
  6. コラム一覧
  7. 台風で屋外イベントが中止なったら、事前に集めた参加費は全額返金すべき?

新井一プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼