公務員でも起業準備はできる? 在職中に「できること」と「できないこと」を正しく知る
「絞れない」は半年経っても珍しくない
――新井さん、今日は「起業ネタを複数試しているけど、どれに絞ればいいかわからない」というお悩みについて伺いたいのですが。これ、けっこう多い相談ですよね?
新井:多いですね。複数のネタを並行して試して、半年〜1年経っても絞れない方は本当に多いですよ。「絞れない自分」を責めてしまう方もいるのですが、これは正直、珍しいことではないですよ。
――でも、本人としては「決断力がない」と感じてしまいそうですね。
新井:そう、自分を責めて空回りしている人が多い。でもね、僕の現場感覚では、絞れないのは「判断軸を持っていないだけ」ということがほとんどですよ。能力でも気合でもなく、軸の問題。
3つのネタを並行して試した会社員のリアル
――具体的なケースで教えてもらえますか?
新井:起業18のメンバーで、SIerのプロジェクトマネージャーをされている40代のDさんという方がいらっしゃいます。最初の1年で「業務効率化コンサル」「キャリア相談」「ITニュースのまとめ配信」の3つを並行して試されたのですよ。最初の8ヶ月はどれも月数千円。本人は焦っていました。
――月数千円…… それは焦りますね。
新井:ところが9ヶ月目に転機が訪れます。業務効率化コンサルの最初のお客様から「先月のアドバイス通りに動いたら、月の残業が15時間減りました」という連絡が来たそうですよ。それから「次もお願いしたい」「あれもどうですか」と何度も連絡が続いた。これがネタを絞る決定打になりました。
――お客様が再連絡してくれた、ということですね。
新井:そう、ここが核です。Dさんはこのネタに集中して他の2つを手放され、14ヶ月目には継続契約3名・月収12万円。今は退職を視野に入れた準備段階に入っていますよ。
絞り込みの判断軸は「再連絡」
――ということは、絞り込みの判断軸は「お客様が再連絡してくれたか」なんですね。
新井:まさにそれですよ。売れたかどうかではなく、「次もお願いしたい」と言われたかどうか。これが軸です。1回買ってもらえたネタは「たまたま」かもしれませんが、再連絡が続くネタは確実に需要がある証拠ですから。
――売上の数字より、再連絡の有無で見るのですね。
新井:そう。月数千円でもいい、月数万円でもいい、数字の大小じゃないですよ。再連絡が来たネタは、お客様の生活や仕事に変化を起こしたという何よりの証拠ですからね。
並行は「最大2つ」が限界
――並行して試すこと自体は悪くないんですか?
新井:悪くないですよ。むしろ、最初から1つに絞れる方は珍しい。ただ、並行は最大2つまでにしてください。3つ以上にすると、1つ1つの解像度が一気に下がるのですよ。
――解像度というと?
新井:そのネタにどんなお客様が来ていて、何で喜んでもらえて、どこでつまずいているか。深く観察するための時間と意識が必要ですよ。3つもやっていると、どれも浅くなってしまう。Dさんも結局、絞ったあとから動きが変わりました。
撤退基準を最初に決めておく
――並行する時に意識するべきことは他にありますか?
新井:撤退基準ですよ。これは最初に決めておいてほしい。具体的には1つのネタにつき試行期間は最大3ヶ月。3ヶ月以内に再連絡が1件もなければ、そのネタは一旦休ませる。続けるかどうかは判断保留でいいですから、「ずっと試しているけど答えが出ない」状態を回避してください。
――期限がないと、ダラダラ続けてしまいますもんね。
新井:そう、僕の著書『起業神100則』にも書いていますが、「成果が出ないときの原因は『漠然』にあり」ということを大事にしているのですよ。漠然と続けるのが一番危ない。期限と判断軸をセットで持つと、迷いが激減しますよ。
「赤いものを探せ」の意識で動く
――最後に、これから複数のネタを試そうとしている方にメッセージをお願いします。
新井:絞れない期間も、判断軸を持って試している限り、必ず一つのネタが浮かび上がってきますよ。これは「赤いものを探せ」と同じで、「再連絡があったか?」と意識し続けるだけで、自然と目が反応するようになるのです。試している期間は無駄ではありません。半年や1年絞れなくても、軸を持っていれば必ず答えは出ますから、自分を責めず、淡々と続けてくださいね。
――焦らず、判断軸を持って淡々と。今日はとても参考になりました。ありがとうございました!
新井:こちらこそ、ありがとうございました。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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